第11話:剣術島での出会い
大ダコ退治の末、無事に進み大きな島が見えて来た。
「おお、見えて来たぞ剣術島だ~~♪」
「あの島が、あらゆる剣士と鍛冶師の楽園か♪」
「剣と剣士の事なら何でも揃う島だ~~!」
いかつい外見で腰や背中に刃物を背負ったモブの剣士達が叫ぶ。
「ご主人、あのモブっぽい剣士さん達元気っすね?」
「まったくだ、大ダコの時は動きもしなかったのに」
「まあまあ、良いじゃないですか殿♪」
同じ船の甲板の反対側で、笹で包んだたこ焼きを食いつつモブを見る俺達。
「楽しみっすね、
「そう言えばマホロバ語なんですのね、島の名前?」
「何でも、マホロバから海を渡った剣士達が開拓したとか」
仲間達の呟きに、俺はギルドでもらった観光ガイド本を見ながら呟く。
「何か、私達って国を出ても故郷と縁が切れないっすね♪」
「切らなくて良い物、切ってはいけない物もありますわ♪」
「はいはい、サミダレさんは暫くお酒を切りましょうね♪」
「殿、そんな殺生な~~!」
俺は
うん、この人は龍だとしても酒を抜いた方が良い。
波を掻き分け船は進み、港へと辿り着いた。
船を降りて見れば、洋風の建物と和風の建物が並ぶ奇妙な港町だった。
老若男女、港にいる誰も彼もが帯刀や帯剣していた。
「何と言うか、変わった島ですわね?」
「ご主人、魚屋さんっぽい人が居合で魚を降ろしてるっすよ!」
「あっちは肉屋か? ブロック肉をサイコロサイズに切りそろえた!」
一般の商店を営む人達も、自分の剣と剣技をそこらで披露していた。
「世の中には、とんでもない島があったもんだな」
ひとまずは、この島の冒険者ギルドを目指して街を歩く。
道が石畳で舗装されてるな、お金がある島なのか?
「ご主人、私達の宿ってどこなんすかね?」
「チカゲさん、殿がいるならどこからでもお屋敷へ帰れますわよ♪」
「この島の冒険者ギルドで教えてくれるよ」
「ちょっとだけ面倒な決まりですわね」
俺はサミダレさん達に告げる。
ルーキーズポートと似た感じの、冒険者ギルドの建物が見えてきた。
「ようこそ、冒険者ギルド剣術島支部へ♪」
俺達がドアを開けると、黄色い着物の腰に脇差を刺した受付嬢が出迎えてくれた。
短い緑の髪に、グルグルの瓶底眼鏡も特徴的な人だった。
名札を付けており、コミドリさんと言うらしかった。
「すみません、俺達はルーキーズポートから来た者なんですが?」
俺が代表として冒険者カードを見せる。
「はい、お伺いしておりますチャンバラセイバーズの皆様ですね♪」
「おお♪ 私達のチーム名が知れ渡ってるっす~♪」
「いや、知られてないと困るよな? チカゲ?」
「ところで、宿の案内をしていただけるそうなのですが?」
サミダレさんが手を上げて語りかける。
「はい、島の中央のウツノカミ山の麓にございます♪」
コミドリさんが俺達に、島の地図を見せてくれた。
「ああ、船から見えた山か? わかりました」
「馬車で行く感じっすかね、ここからだと?」
「乗合馬車はございませんの?」
「はい、観光客の方も多いので乗合馬車も充実してますよ♪」
コミドリさんが告げる。
俺達はギルドを出て、馬車乗り場がある広場へと向かった。
広場を囲むように剣士達を乗せた乗合馬車が五台ほど停車していた。
「ご主人、三台目の馬車が空いてるっす♪」
「おう、乗ろう♪」
「ほんとに剣士の島ですのね?」
俺達はチカゲが見つけた乗合馬車の荷台へと乗り込み、御者に運賃を払う。
「……貴殿ら、もしやマホロバの方ではございませんか?」
同じ馬車の乗客の一人、黒羽織に白い着物の剣士に声を掛けられた。
長い黒髪を後ろで纏めた白い肌の綺麗なお姉さん。
ではあるが、金の瞳に額からは一対の赤い角と鬼の証が目立つ。
羽織の家紋は処刑人の名家の証、髑髏と刀。
ガチでヤバいのがいたよ!
「まさか、剣名高いフジキリ方とお目にかかるとは」
「こちらも、術師のアダシノ家の方とお会いするとは♪」
黒羽織の剣士、帝室直属の首切り役人フジキリ一族の人と言うか鬼だ。
向こうも俺の着物の家紋で気付いたか。
そうだよな、父の家は呪術師で剣の名家じゃないんだよな。
遠回しに、お前は剣士じゃねえよとか言われてる感じが痛い。
「つまり、フジキリさんも大会に出るんすね?」
チカゲが真面目な顔付きになる。
「あら、もしやシッペイ家の犬神さん♪」
「今はアダシノ家の剣術指南役で、アダシノ姓っす!」
シッペイ家、チカゲの実家はフジキリなら知っているか。
剣で名の知れた家って、男子としてはちょっと羨ましい。
「殿、チカゲさん? これは気を引き締めますわよ」
サミダレさんもフジキリの名に緊張する。
「強張っていては剣が鈍りますよ、試合で当たる事を楽しみにしております♪」
鬼が笑う、ヤベえのと出くわしちまったな。
フジキリと言えば、どんな相手だろうと必ず首を切り落とすって聞く。
五年前、祖父に連れられてフジキリの当主の首切りを見物したが凄かった。
「ああ、申し遅れました♪ モミジ・フジキリと申します、よしなに♪」
「ヨウタロー・アダシノです、こちらこそ」
俺が代表して名乗る、他の客はフジキリさんのまとう気に気圧されてるな。
一人なら個人戦かな? もしくは他のフジキリと組んでるのか?
何にせよ、同郷のヤバいライバルが出て来たぜ。
モミジさんはニコニコしてるが、俺達や他の客は無言。
馬車が止まり、宿のある村に着いた。
和と洋の建物が入り混じった大きめの村だ。
村の真ん中の広場に、皆で降りる。
「洋の東西を問わず、色んな剣士がいますね」
西洋の長剣や大劍、細身の剣なそ良く見かける剣士。
マホロバと西洋の中間な分厚い刀の刀を持つ真の国の剣士。
そして俺達みたいな、刀を帯刀したマホロバの侍。
刃物を持った腕自慢奴らが集まった感じだ。
「それではアダシノの若様、ごきげんよう♪」
モミジさんは俺に手を振って、他の黒羽織の剣士達の所へ行く。
何だろう、フレンドリーな人だったな。
「ご主人、ギルドで貰ったルールを見て欲しいっす!」
チカゲがギルドで渡されたルールブックを広げて叫ぶ。
「試合の際に、武器は運営が用意した物と交換されるようですわね?」
サミダレさんが続けて読み上げる。
「ふむ、死人を出さないようにするみたいだな?」
「ご主人、相手の武器破壊で一本取れるそうっすよ!」
「では、武器破壊縛りで行きませんか?」
サミダレさんが方針を提案する。
「乗ったっす、体よりも気持ちを折るっすね♪」
「いや、チカゲはちょっと酷いな?」
「フジキリの人達を悔しがらせるっす♪」
まあ、武器を壊して勝てば怪我させるよりはヘイトを集めないかな?
仲間が提案した、武器破壊縛りと言う試合方針に俺も乗る事にした。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます