第31話、教授からのお誘い
「やぁやぁいらっしゃい! 待ってたよ!」
大袈裟なほどに手を広げて迎え入れてくれたのは、招待状をくれた主人のガリレオ教授。キリッとした眉で目力が強めのおじさんでした。
「お招き頂きありがとうございます」
「硬い挨拶なんて抜き抜き、ゆっくりしてちょうだい!」
何だか肩書きとはイメージが全く違う印象。
「何だかイメージと違うね?」
今日は一人では心細かったのでアンネにも同席して貰っている。教授に問い合わせたら何人でもどうぞと言われたので、アンネとニヤが一緒だ。
ガリレオ教授のご自宅の庭にテーブルと椅子がセットされ、アフターヌーンティーの準備がされていく。ウチの腹ペコ娘さんは先ほどからテーブルの上のお菓子に目が釘付けになっています。
「先ずはアフターヌーンティーを楽しんでくれたまえ」
美味しいお茶と、お菓子とスコーンを楽しむ。僕知ってるよ! イヅミに教えて貰ったんだ、スコーンに付けるクリームとジャムには付ける順番があるんだよね!
えーっと「美味しければどっちでも良いよ」だって。
一通り会話とお茶を楽しんだ所で、教授のメガネがキラリと光った。
「さて、アベル君。これから二人でもっと楽しい話しをしようではないか! 二人のお嬢さん方は此処でお茶を楽しむと良い」
そう言われ、二人から少し離れた室内へと移動した僕たち。ゆったりとしたソファに腰掛け、教授はメイドさんに新しいお茶を頼んでからこう言った。
「さて、アベル君。君は地動説の話しをどこで聞いたのかな?」
ひー怖い。
(イヅミ、打ち合わせ通りよろしく)
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「なる程、アベル君は私の論文を読んだのではなく。自然の中でそこに気が付いたと言う訳なんだね」
ガリレオ教授は、論文を読んでいないと言った僕の言葉にガッカリしながらも、気が付いたと言う点を褒めてくれた。
「気が付いたと言うか、そう考えた方がしっくりくると言うか。ガリレオ教授の地動説と言う言葉も、凄く的を得てる表現だと思いました!」
「そうだろう! 今までの説では。この王国の大地が中心で、天は朝と昼と夜を与え
「私は、自分で開発した遠見筒で毎夜、空を眺めているのだが。毎日、毎日ずっと眺めておると違和感を感じるのだ。何故あの星は微妙にズレて行くのだ? と。アベル君が、家の窓枠へ消える星の位置がだんだん変わっていると気付けたように」
「そして、それを説明しようとすると、今までの天動説では説明がつかなくなってゆくのだよ! それを解明しようと私は長い年月を掛けて〜〜〜〜」
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「と、言う観測から今回の地動説へと繋がるわけだよ! さらにはだね!」
長い……。
けれど……これを乗り越えないと、僕の真の目的は果たせないんだ。きっともう少しでこの話も終わるはず。もう少し、もう少し……。
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「いやー! 本当に今日ほど充実した日はないな、これ程までに私の研究の成果を理解してくれる者が現れ、こんなに深く語り合えるとは。本当に今日は良い一日だった!」
教授の話しは長かった、とんでもなく長かった。危うく夕食に招待される所だった。寮への連絡も無しに流石にそれはまずいと言う事で、渋々ガリレオ教授も話しを終わりにしてくれたけれど、もしかしたら泊まりがけで朝まで話し相手にされる所だった。
「ところで、アベル君は私に聞きたい事など無いのかね? 遠慮せずに何でも聞いてくれたまえ」
やっと来た。
「では、一つだけお聞きしたい事があるのですが」
教授は、お茶を一口飲んでから「どうぞ、話してみたまえ」と話しを促した。
「魔族は何処から来ているのですか?」
教授の目が座り、柔らかな雰囲気だった空気がピシッ!と音を立てて固まった気がした。
「魔族が、何処から来ているのか……だって? 君は面白い聞き方をするね」
教授はソファに深く座り直すと。
「世間に知れ渡っている話では、この王国のずっと南。極地と言われる土地に魔族はずっと大昔から住んでいると言われている。が、君が聞きたいのはそんな話では無いのだろう? 勿論、私は知っている。知っているが、今の君には話せない」
「何故ですか?」
「何故? 何故ならば、君にはまだこの話を聞ける資格が無いからだよ。上級部の二年生、その中でも特別優れた成績を収めた生徒にのみ話せる話。もし君がこの話しを聞きたいと思うのならば、優秀な成績を上げて、その資格を得る事だね」
教授はメガネをクイっと上げて。
「その時には、私は喜んで君のその質問に答えてあげるよ」
結局、答えは貰えなかったけれど目標は出来た! 僕はこれから二年間、学年一位を取り続ける。そして、質問の答えを教えて貰うんだ!
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教授との話しが終わり二人の所に戻ると、ニヤはすっかり寝てしまっていた。お茶とお菓子をお腹いっぱい食べて、大満足したようだ。
アンネには、一人にしてしまった詫びを言って帰途へと着いた、帰りは遅くなったお詫びにと教授が馬車を出してくれたので、ニヤを背負って帰る事は避けられて助かった。
「アンネ、また別の機会にでもお礼をさせて貰うよ。今日は助かった、本当にありがとう」
「あんなに長く掛かるとは思わなかったけど、私も楽しかったから別にいいわ。けれど、アベルがどうしてもと言うなら受けない事もないけれど?」
それは誘えと言っているのかな? 女の子相手のやり取りは難しいなあ。
「どうしてもアンネにお礼がしたいんだ、ぜひ機会を頂きたいのだけれど」
アンネは頬をうっすらと染め微笑んだ、僕はその微笑みにドキリとする。
「そこまで言うのなら仕方がないわね。また連絡ちょうだい、待ってるわね」
そう言ってアンネは女子寮の方へと帰って行った。
さてと。
僕は、背負っているニヤを起こそうと揺すりながら声を掛けると。
「アベル……女の子……だめ」
なんて寝言を言う始末。
「もう、アンネはそんなんじゃないってば!」
結局ニヤを部屋まで背負って歩いたんだけど、ニヤを背負って歩ける位には僕にも体力が付いたのかな。
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あとがき
ガリレオ教授から、魔族について教えて貰える方法までは聞く事が出来ました。アベルの学園での目標が出来たと言う事ですね。
次回は、クラスの中での立ち位置を、何とか作り上げようとするアベルの苦労する姿です。
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