第7話 反省
「はぁはぁ…」
俺はダッシュで逆走する。普段、決して見せない全速力で1度通過した道を戻る。
しばらく戻っても花見と柚木の姿は見当たらない。
俺は彼女達の身に何か起こってないか不安だった。無事ではあって欲しかった。
1つの曲がり角を右折した所で、ようやく花見と柚木の姿を発見できる。
花見と柚木はフラフラと体力的に限界ながらも俺の背中を追うために何とかランニングを続けている状態だった。完全にバテている様子だ。
これは一応、大丈夫なのか?
俺は花見と柚木の無事な姿を発見し、不安が取り除かれ安心する。
だが、花見と柚木も既に足を動かすだけで辛そうだ。推測だが、俺のスピードに無理やり合わせようとした結果、体力的に限界に達したのだろう。
俺は息を少し整えてから、花見と柚木の下に駆け寄る。
「お~い。2人共、大丈夫か~? 」
俺は2人の状態を確かめるために走りながら呼び掛ける。
「はぁはぁ…。あ…大橋…先輩」
「…お疲れ…さまです」
花見と柚木は共に辛そうに顔を歪めながら、大きく息を乱しながらも応答してくれる。
見た感じ既に体力は底を尽きているように見える。
その証拠に俺が花見と柚木の下に辿り着いた直後に、安心したように立ち止まり、俯きながら酸素を強く求めるように大きく息を乱していた。花見は両膝に手を付いていた。
これは限界だな。今日は無理そうだ。俺は2人の様子からトレーニングメニューの変更を決意する。
「ちょっと、そこの公園で休むか? 」
幸運にも直近に遊具の設置される公園があった。俺は、その公園を指す。
花見と柚木は俺の言葉に反応し、力なく何とか頷く。その様子から2人が力を振り絞っていることが伝わる。
俺は先頭を切って、ゆっくり進み、2人を誘導するように公園に足を踏み入れる。2人に配慮して普段より歩くスピードを鈍化させて進む。
花見と柚木も俺に引かれるように公園に吸い込まれる。
「ここにでも座って」
俺は幸運にも空席だった公園の白いベンチまで2人を案内し、座るように促す。
「…ありがとうございます」
「…助かります」
花見と柚木は俺に感謝を伝えてからベンチに腰を下ろす。
花見は力が抜けたようにぐったりと空を見つめる。
柚木は一息つくように何度か呼吸を整えるために息を吐く。
俺は偶然にも念のため持参していた財布のお金で公園内に設置された自動販売機でスポーツドリンクを2本購入する。
ガタンッゴトンッと吐き出されたスポーツドリンクを両手に花見と柚木の休憩するベンチまで戻る。
「ほら。喉かわいてるだろ」
俺は花見と柚木に購入したスポーツドリンクを両手で差し出す。
「あ…ありがとうございます」
「…ありがとうございます」
ぐったりしながらも花見と柚木は感謝の言葉と共に俺からスポーツドリンクを煽る。
受け取った後は、疲れを癒し、喉の渇きを潤すようにスポーツドリンクを煽って飲む2人。俺の読み通り、かなり喉は乾いていたようだ。
「…大橋先輩。…すいませんでした」
十分に水分補給を終えた花見が申し訳なさそうな表情で俺に謝罪する。
「うん? どうして謝る? 」
俺は率直な疑問を尋ねる。
「…大橋先輩は、うち達が先輩のペースに付いて行けてなかったから気を遣って逆走して戻ってきてくれたんですよね? 」
柚木は俺の疑問に回答する。
なるほど。そういうことか。2人になりに力不足と罪悪感を感じてるわけか。
「確かに俺は、お前達の居場所を把握するために逆走して戻った。だが、俺のペースが速すぎたと思う。普段と同じスピードでやってしまった。配慮が無く、そこは反省している。未熟ですまない」
俺は花見と柚木に謝罪する。2人と同じで俺も罪悪感と教育における力不足を感じた。そのための行いだ。
「そ、そんな。大橋先輩は悪くないです! 」
「付いて来れなかった方が悪いんです」
花見と柚木は戸惑いつつ、フォローに気を遣ってフォローを入れる。
「そんなことはない。相手のことを考えて動くべきだった。次回からは少しメニューを工夫しようと思う。だから、今日は、ここでトレーニングを終了しようと思う。それでいいか? 」
俺は2人に確認を取る。
「「…はい」」
花見と柚木は悔しそうな沈んだように俯きながら返事をする。2人に思うことがあるのだろう。
その後、俺達は20分ほど休んだ後、学校に備えて解散した。
時刻は朝の5時45分。
どうしよう。まだ、全然ランニングできてないけど。
1人で走るか。2キロは走らないとトレーニングにならないしな。
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