第5話 自主練の見学後(花見七瀬)
(※花見七瀬視点)
私は花見七瀬。
足羽高校に今年入学した1年生だ。
私は中学が同じ同級生の柚木唯花と共に入学してから多大なる注目を浴びた。
学年関係なく男子から何度も告白された。
お試しに付き合うなど私のポリシーに反するから全て、お断りしている。
そんな私だが、決して男子に良いイメージを持っていない。
それは幼少期から私が常にモテてきたことに起因する。
私は客観的に見て顔が整っている方らしい。
自分では理解していなかったが、男子から可愛いと言われたり、何度も繰り返し視線を受ければ嫌でも気づく。
それに告白を何度も受ければ確信だ。
周囲に私みたいに何度も告白を受ける女子など存在しなかった。
そんな好きでもない男子に告白される辛さなど分からない多くの女子に嫌がらせを頻繁に受けた。妬み嫉み、実に汚いと思う。
それに男子は私をルックスで評価し、常に下心を持って接触してくる。幼少期に早々と他者と比較して男子は狼だと認識していた。
そんな少し異性を冷めた目で見ながら、幼稚園、小学校を過ごした。
中学に上がっても私は変わらずモテ続けた。
入学してから早々に告白され、3ヶ月が経つ頃には100人以上の男子から告白を受けていた。
日々の告白ラッシュに辟易していた頃、私と同じ境遇で悩みを抱えてそうな人物を発見する。
それが唯花だ。
唯花も私と同じように幼少期からモテ続け、中学に上がっても私と同等に告白を男子から受けていた。そんな話を陰ながら入手した。いわゆるモテる美少女だった。
そんな唯花に親近感を抱いた私は積極的に唯花にアプローチした。
悩みを打ち明けると、すぐに共感を呼び、あっという間に私と唯花の距離は縮まった。
偶然にも中学1年から3年まで同じクラスであり、1度も喧嘩をせずに共に仲良く中学3年間を過ごした。
そんな唯花と私は並んで歩きながら1年生の自身の教室に向かう。偶然にも私と唯花は高校でも同じクラスになった。
私と唯花は1年生の教室が設置される4階に向かうために校舎の階段を利用する。
互いに足並みを揃えて1段1段とゆっくり階段を上がる。着々と目的のクラスの教室に近付く。
私達は先程まで大橋先輩のボクシングの自主練習の見学をしていた。
大橋先輩は私達をナンパから助けてくれた救世主だ。
昨日、休みの日ということもあり、唯花と夕方までショッピングモールで遊んでいた。
そんな帰り道、チャラそうな大学生に絡まられてナンパされた。
1度は断ったが、複数人の大学生は諦めずに数の優位性を利用して、しつこく遊びに誘ってきた。
ナンパとは慣れないもので、何度されても対応の正解が分からない。
それにナンパや告白を断ったりすれば、力を使って無理やり言うことを聞かせようとする輩に出会った経験も何度かあった。だから、男性に対する恐怖心から私は何もできずに戸惑い、困惑してしまった。
唯花もあの時は同じ心境だったと思う。
そんな時に救世主として助けてくれたのが大橋先輩だった。
強い口調で大学生を注意してくれた。
しかし、大学生は注意に腹を立て、大橋先輩に暴力を振るおうとした。
だけど、大橋先輩はボクシングのファイティングポーズ?を構えて、殴り掛かってきた大学生を華麗に躱して1発で倒してしまった。
大橋先輩のパンチを受けた大学生は1発でダウンし、地面に倒れたシーンは今でも鮮明に覚えている。
大橋先輩の強さに恐怖を覚えた大学生達は倒れた仲間と共に逃げ去ってしまった。
私は恐怖が消えないながらも、勇気を振り絞って感謝を伝え、お礼を提案した。
だけど、大橋先輩は私の提案を拒否した。大したことをしてないと。
私たちにとっては感謝してもし切れない程の功績を残したのにも関わらず。
そんな昨日の出来事を今日のように思い返しながら階段を上がっていると、いつの間にか4階に辿り着いた。
それにしても、今日の大橋先輩の自主練の姿。カッコよかったな~。
パンチは凄く速いし、スポーツウェアに着替えて筋肉が服の下からでも分かるほど強調されていたし。
それに! それに!!
あの真剣な練習への姿勢と表情がたまらん!! かっこよすぎる!!
あぁ~。明日からの大橋先輩のトレーニング指導たのしみ~〜。
朝5時からのトレーニングだけど、絶対に寝坊しないで行こ! 記念すべき大橋先輩とのトレーニングの日だからね。
朝の弱い私だけど、頑張って起きるから。ママの力を借りて。
あ、忘れないようにママにメッセージを送っておかないと。
私はブレザーのポケットからスマートフォンを取り出し、明日のトレーニングを妄想しながら、ママにメッセージを送るのだった。
明日4時に起こしてと伝えるために。
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