第3話 相手にされない

「そうです! 私達がナンパされて、どうすれば分からなくて困っていた時に助けてくださり、ありがとうございました。覚えてて下さったんですね! 」


 美少女の1人が嬉しそうに笑みを浮かべる。もう1人の美少女も控え目に嬉しそうに微笑む。


「いや、だって。昨日の出来事だし」


 何を言ってるんだこいつはと、内心に思いながら、ボソッと呟く。


「お、おい、大橋! お前、その2人の知り合いかなにかか!? 」


 後ろの席の山梨が慌てた口調で俺に尋ねる。何だか動揺して落ち着かない様子だ。ただ美少女2人が教室に来ただけだぞ。


「知り合いって程ではないが、顔見知りの程度だ。昨日、ナンパされていたから助けた。ただそれだけ」


 俺は山梨の心情を理解できずに、不思議に思いながら平然と答える。


「じゃ、じゃあ、お前は、この2人が誰か知らないのか? 」


 山梨は続けざまに俺に尋ねる。何なんだこいつ。質問が多い奴だ。


「ああ。そうだけど」


 俺は少し苛立ちつつ肯定する。


「そ、そうか」


 俺の返答が届いた山梨は驚いたような信じられない顔を見せる。


 近くに佇む美少女2人も少し驚いて両目を大きく見開く。


「それで、この2人は有名なのか? 」


 俺は美少女2人に視線を向けてから先程から落ち着きの無い山梨に尋ねる。


「ば、この2人は学年でビッグ2と呼ばれる新入生の美少女だ。入学式で話題になったの知らないのかよ? 」


「うん? そうだったけ? 」


 俺、陰キャだから情報が回ってこない。だから知らない。悪かったな山梨。非常識で。


「ったく。まずな。お前に進んで話し掛けたピンクのボブヘアの子は花見七瀬さん。今年入学した新入生で、学年関係なく男女共に人気が高い」


 勝手に山梨が美少女の紹介を始める。


「ど、どうも。花見です」


 山梨からの紹介を受けて俺に対して軽く頭を下げる花見。いやいや山梨に流されなくていいから。素直な奴だ。


 花見はピンクのボブヘアだけなく、薄い赤色の瞳に、乳白色の肌に綺麗な鼻や唇をしていて、完壁と呼べるほどの顔立ちをしていた。おまけに巨乳。すらっともしていてスタイルも良いように思える。


「そして、花見さんの横の白髪のロングヘアの子は、柚木唯花さん。花見さんと同じく今年入学した新入生で、学年関係なく男女共に人気が高い」


「ご紹介にあがりました。柚木です」


 なぜか山梨の紹介は頼んでもないのに続く。


 だからいいって。山梨の紹介に乗らなくて。


 柚木は白髪のロングヘアでだけでなく、花見と同じくらいの肌の白さで、水色の瞳、こちらも目、鼻、唇共に同様に完璧と呼べるほど顔立ちが整っていた。おまけに巨乳。


 花見と柚木と共に絶世の美少女と呼べるだろう。


「ねぇ、君達1年の花見さんと柚木さんだよね! もし良かったら、これから俺とお話しでもしない? それと今日、俺は暇だから遊ぶ約束でも」


 突然、割って入るようにクラス1のイケメンの山内が花見と柚木に声を掛ける。魂胆がダダ洩れで、遊ぶ約束まで結ぼうとしている。


 玲奈という俺から奪った彼女が居ながら何て奴だ。こいつの無神経さや非常識さには虫唾が走る。それともなんだ? イケメンで顔が良いからって何でも許されると思ってるのか? 


「…お――」


 俺が怒りを込めた低い声色で注意しようと試みた中。


「すいません。今、この方、大橋先輩と、お話ししてるんです。邪魔しないで貰えますか? 」


 花見が俺の注意に被せるように丁寧な口調ながらも明確な拒否を伝える。


 柚木も花見と同意な意志を伝えるように軽く頭を下げる。


 花見のおかげで俺の注意は山内に届かなかった。ただ、より傷とプライドを抉る口撃を受けたかもしれないがな。


「そ、そうなんだ。ご、ごめんね~。楽しい中、邪魔しちゃって」


 山内は顔を引きつらせながら、わざとらしく下手な芝居を打ちながら、格好悪い流石を隠すように、そそくさと友人の下に合流する。


 先ほどことが何事も無かったように友人達に話題を振って会話に溶け込む。


 プライドが拒絶されたことを受け入れられず、その気持ちを誤魔化し、和らげるようにペラペラと平然を装いながら友人と雑談する。


 だが、俺は分かるぞ山内。心の中は穏やかではないことを。悔しさと羞恥で乱れていることを。ははっ、ざまぁみろ!!


「いきなりですが、大橋先輩にお願いがあるのですが」


 花見は言いずらそうなバツが悪そうな顔を浮かべる。


「うん? 昨日も伝えたが、お礼なんか要らないからな」


 俺は花見の次の言葉を予測し、抑止力を掛ける。先手は打てるなら打っておくべきだ。


「お、お礼ももちろんしたいのですが。今回は違うんです」


 花見は否定するように首を左右に振る。


 柚木は花見に同意するように何度も首を縦に振る。


「じゃあ、なに? 」


 俺は次の言葉を促す。


「あの、何ていうか。えっと、私達に強くなるためのトレーニング指導をして欲しいのですが。お願いできないでしょうか? 」


「うちもお願いします」


 花見と柚木は真剣な眼差しを向ける。人に物を頼む態度だと感じた。


 だが、悪いな。


「無理。勝手に各自でやってくれ」


 俺はバッサリと断った。


 そんなに暇では無いと自分では思っている。


 俺の切れ味のある断りの直後、朝のホームルームが始まるチャイムの音が教室の全体に鳴り響いた。

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