第29話 ダンジョンクッキング
カイネはドロップ品をキャンプ地まで、ダンボールに乗せて移動した。
キラーバットのドロップ品、キラーバットの翼とキラーバットの骨もいい加減かなり溜まっている。
グレートブルの時は素材がよく売れたのだが、キラーバットの素材はいまいちオークションでも売れない。
オークション画面も、最初に比べるとかなりざったなもので溢れかえっている。
作業着や、洗濯棒、虫除けスプレーなどから、風邪薬や解熱剤まであった。
「ひとまず、オークション出そうか」
雪斗がD端末を出して、翼と骨をより分ける。
カイネが翼、雪斗が骨を5ポイントで担当して出すが、かんばしい反応はない。
「最初の購入者の人、亡くなってないよな……?」
「ポツポツ売れるんだし、それはないよ!」
雪斗が明るい声を出す。
カイネたちの中では素材を買い取ってくれた人物が、武器や防具を売ってくれた人物ではないかと予想している。
顔も知らないが、無事であると思いたかった。
「それよりカイネ、防御にポイント振ったら?」
「いや、敏捷と走力をあげようかと……」
雪斗は、防具の傷を気にしている。
キラーバットからの攻撃では、傷つけられなかった頑丈さだ。
「それより、野菜とか調味料買わないか? 牛丼とか作れるぞ」
「牛丼か……」
毎食ステーキ定食になっているが、そろそろ他のものも食べたいのは事実である。食で釣ると、雪斗は夢見る顔になって考え込んだ。
ポイントはカイネだけで216ある。多少野菜を買っても許されるだろう。
玉ねぎ、砂糖、生姜、みりん、醤油、和風だしをストアで買い込む。生姜は後を考えてチューブになっているものにした。
紅しょうがは今回お預けである。
カイネはグレートブルの肉を薄く削ぎ続け、雪斗は言われた分量の調味料を茶碗の中で掻き回す。
続いて、フライパンを加熱すると牛肉の油を削り取り油として玉ねぎを炒め出した。
雪斗に玉ねぎをゆだねたものの、コンロではないせいか、すぐに玉ねぎは焦げ出したのでカイネは取り上げた。
「カセットコンロも買うか……」
「ごめんよ、才能なくて」
転生前は第一王子だ。調理する機会もなかったので、才能のいかんは確認することもなかった。
ただ、薪の消費を考えて、もっと早めに買うべきだったのかもしれない。
カイネは寮住まいだったのもあるが、自炊にはこだわる方だ。他の寮生にも、食材持参条件でよく料理を振る舞っていた。
作ることは苦ではない。
混ぜ合わした調味料を玉ねぎの中に投下し、味を染み込ませる。シャキシャキの玉ねぎより、カイネの牛丼の理想玉ねぎはクタクタに煮込まれたほうが理想だ。
十分ほど煮込んだ所で、削いだ牛丼にさっと火を通す。
所詮素人なので、肉の厚みが均等ではない。
それでも玉ねぎに混じって、透明な肉の脂が染み込んでいくのは食い出がある。
雪斗はいそいそとゲームをしたかと思うと、D端末のストアで丼と中型の鍋、カセットコンロを買っていた。
「おまえな……」
「必要経費、必要経費!」
だが、この材料の残りに野菜を足せば肉じゃがなどもできる調味料のラインナップでもある。
カイネはそれ以上言わずに、丼にご飯をよそう雪斗に少し笑った。
カイネの超再生能力当てにする方向を、雪斗には誤魔化そうとして提案したが、食は豊かになるしやる気も出る。
「いっただきまーす!」
「召し上がれ」
普段、ご飯をかっこまない雪斗にしては、箸が早い。
カイネも口に運ぶと、高級牛のようなグレートブルの甘みと玉ねぎ、ほんのり香る生姜の味が懐かしかった。
「うまっ……店でるよ?」
「褒めすぎだろ……」
ダンジョンが生まれた世界でそれは無理だろ。咄嗟に言いそうになった言葉は胸にしまう。
「二日酔いはもういいのか」
「これで直った! 味噌汁があればなおよし」
直るわけがないが、若さと意欲が上回ったか。
牛丼を食べながら、二人は六階のグレートブルをたおして五階を覗く予定を立てた。
雪斗の影魔法にも限界はある。フロア三つ以上は苦しい想定だ。
カイネが前衛として乗り込み、
キラーバットのゾーンは酷く暗かった。グレートブルはマシだと思いたいが、ダンジョンは今のところ暗い場所であまり期待はできない。
牛丼を満足するまで食べ終わり、器を洗うとカイネたちはマジックスクロールに手を伸ばした。
「暗視はわかるんだけど、飛行ってどう思うよ?」
「飛べるんだろ」
「ちょっとー、この人のお堅いところ女子に嫌われるよー」
別段好かれたい訳でもない。
今更そんなこと、と思うが雪斗は昔からそう言う。
蝙蝠ときて、牛、お次はなんだろうか。
スクロールは手の中で溶けた。
カイネの中に、また二つスキルが加算される。
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慎英カイネ レベル/8 ポイント220
スキル/ 水分強奪(中)浄化(中)水球(中)疲労軽減(中)
体力:LvD
筋力:LvC
敏捷:LvD
防御:LvD
器用:LvE
走力:LvD
幸運:LvE
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