第21話 足らないポイント①
居間ではテレビが狂乱を映し出していた。
いたずらに乱れる中継、画面が横倒しなのはカメラマンが逃げ出したからだろうか。
「ダンジョンの外にはモンスターは出てきません!皆様落ち着いて行動を……!」
報道キャスターが突き飛ばされ、画面が揺れる。
大きな荷物を背負って車に積み込む人や、動かない高速道路など、場面は転々として混乱を映り出していった。
――日本中この様か?
中継地点によっては、ダンジョン?なにそれ?という平和なコメントも出たが、暴動が激しい地域は狂ったように店が破壊されている。
「あなた……!」
「お父さん……!!」
嫁の
会えなかったらと思うと背筋がぞっとする。
――テレビなんて見てる場合だったか?なぜ迎えに行かなかったんだ俺は。
神経がビリビリとして、思考がパンクしかけているのを自覚した。
しっかりしなくては。自分が守らなきゃ誰が護るんだ。
まずは、そう――。
「お前たち、ポイントいくつ持ってる?」
家族全員のD端末を見る。
娘以外の全員が、運営からの10ポイントだった。
「お父さんごめんなさい……チャットにポイントかかるの知らなくて、書き込みしちゃって」
「仕方ない……」
藻部市も仕事中で無かったら、うっかり書き込んでいたかもしれない。
母はひたすら不安そうに、腕をかきむしっていた。
「でも、D端末のゲームをやるとポイントが貰えるって書いてあったから、ゲームやれば助かるんだよ!」
「そ、そうかよし、全員やってみよう」
家の外は、救急車とパトカーのサイレンが行き交って凄い騒音だったが、藻部市をはじめ全員が冷や汗を書きながらゲームに集中する。
クイズはメインのスマートフォンで検索しながら進めたが、ブラウザは固まり、蟻の行進のような遅さで藻部市をじらした。
「おばあちゃん、どうしたの?」
娘の陽香の声に顔をあげると、母は困り果てた顔をしている。
母はそもそも、D端末が配られた時にメインのスマホを解約してしまっていた。
幾つもあると使い切れないから――そう言って、家族全員の通話登録をしたD端末で通話しか使っていない。
「リズムゲームっていうやつかねぇ、陽ちゃんが遊んでたみたいなのがあって、おばあちゃん使い方分からないわ」
「貸して! あたしがやってみるね」
陽香がD端末を受け取ったが、なんで?と大声を出す。
「触っても反応しない! どうしてぇ?」
「お母さんに貸してみて」
妻がやっても、反応は同じだった。
D端末は、登録者にしか操作できない。
陽香が長い長いチャットの嵐の中から、同じ情報を見つけ出して、家族は途方に暮れる。
「ほんとにそこまでしてポイントが必要なのかい?」
「ダンジョンができた瞬間、上司が死んだんだぞ――ポイントがなきゃ死ぬっていうんだから集めなきゃいけないんだ!」
また大声で怒鳴ってしまった――。
藻部市ですら、ゲームの知識としてギリギリだ。母の頭の中ではそもそもダンジョンという言葉がピンとこないのだろう。
――――――――――――――――
毎日24時、生存接収として5ポイント徴収します。
ポイントが足らない場合、生存に失敗します。
――――――――――――――――――
何度読み直しても、震えが来る二文を母親に突きつける。
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