蛍の光
夜七時、喫茶店で珈琲を飲んでいたら不意にあの曲が耳に飛び込んできた。「今日はもうお終い」を告げるあの曲が。
慌てて珈琲を飲み干し、立ち上がりかける。
「おや、まだゆっくりしていってくださいな」
帰ろうとする私をマスターが制した。
「BGMでかけているだけですから」
でも、この曲を聴くとどうしても「今日はもうお終い」の気持ちになってしまう。
しかも、それは私だけではないようで、テーブルに飾られている薄紅の花は花びらをふわりと閉じて俯き、レジ横の水槽に泳いでいた金魚もぷくっと泡を吐きつつ水の底に沈み、眠りの世界に落ちていった様子だった。
闇を透かす窓硝子には、蛍なのか、雪なのか、白い光がちらちらと揺れている。
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