花はどこに

窓を開けていたら、薄紅色の花弁が舞い込んできた。

 思わず外を見る。

 いつもと変わらない、灰色の雑居ビルがひしめく、寂しい都会の風景。

 どこにも花なんか咲いていない。


 しかし、次の日も、花弁は窓辺にぽとりと落ちた。

 そのまた次の日も。

 まるで一人暮らしの私の寂しさを慰めに訪れるかのように。

 

 どこで花が咲いているのだろう?


 私はマンションの屋上に足を運び、そして、そこから見えた景色に息を飲んだ。

 幾千もの紅の花が咲き乱れ、風に波打っていだのだ。

 だが、それが花畑に見えたのも一瞬の事。

 夕日に照らされた赤い鱗雲の連なりが空一面に広がっているだけだった。

 

 ひらり、とまた一枚、風に乗って薄紅の花弁が私の掌に舞い落ちる。

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