第13話 世界大会、開幕。
世界大会開催前日。
矢代秀は、ホテルの部屋で最終調整をしていた。
コントローラーを握り、何度も同じ動作を繰り返す。
「よし……感覚は完璧だ」
秀は、満足そうに頷いた。
ノックの音。
「秀くん、私だよ」
莉乃の声だった。
「どうぞ」
ドアを開けると、莉乃が少し不安そうな顔で立っていた。
「どうしたんですか?」
「あの……ちょっと、緊張しちゃって……」
莉乃の声が、小さく震えている。
秀は――優しく笑った。
「大丈夫です。俺がいますから」
「……うん」
莉乃が、少しだけ安心した顔を見せる。
「一緒に、最終確認しましょうか」
「うん!」
2人は、ホテルの部屋で最終確認を始めた。
30分後。
「よし、完璧です」
秀が、満足そうに言った。
「本当に、大丈夫かな……」
莉乃が、まだ少し不安そうだ。
秀は――莉乃の肩に手を置いた。
「莉乃さん、俺たちは何度も一緒に戦ってきました。今回も、同じです」
「……うん」
「一緒に、優勝しましょう」
秀の優しい声に、莉乃の不安が少しずつ消えていく。
「うん!一緒に、優勝しよう!」
莉乃の顔が、明るくなった。
翌日。
世界大会の会場は、巨大なアリーナだった。
観客席には、1万人以上の観客。
ステージには、巨大スクリーンと実況席。
「すごい……」
秀が、会場を見渡しながら呟いた。
「これが、世界大会……」
莉乃も、圧倒されている。
「神崎さん、白雪さん」
振り返ると、大会運営のスタッフが立っていた。
「開会式の後、実況席にお願いします」
「わかりました」
秀が、頷いた。
開会式。
ステージに、32組64人の選手たちが並んでいた。
秀と莉乃も、その中にいる。
「皆様、お待たせいたしました。アストラルオデッセイ ワールドチャンピオンシップ、開幕です!」
司会者の声が、会場に響き渡る。
観客席から、大きな歓声。
「優勝賞金は、5000万円!そして、世界最強の称号!」
会場が、さらに盛り上がる。
「選手の皆様、最高のパフォーマンスを期待しております!」
開会式後。
秀と莉乃は、実況席に座っていた。
隣には、プロの実況者である田村氏がいた。
「神崎さん、白雪さん、よろしくお願いします」
「こちらこそ、よろしくお願いします」
秀が、丁寧に答える。
「では、最初の試合が始まります」
画面に、最初の対戦カードが表示された。
『ヨーロッパ代表 vs アジア代表』
「おお、これは注目の一戦ですね」
田村氏が、解説を始める。
秀も、画面を見つめながら分析した。
「ヨーロッパ代表は、攻撃特化の編成ですね。スピード重視の戦術だと思います」
「なるほど。では、アジア代表は?」
「防御重視です。相手の攻撃を受け流して、カウンターを狙うスタイルでしょう」
秀の的確な分析に、田村氏が感心した表情を見せる。
「さすがですね。では、試合開始です」
試合が始まった。
ヨーロッパ代表の選手たちが、猛攻を仕掛ける。
だが――
アジア代表は、完璧に防御していた。
「おお、完全に読んでいますね」
秀が、興奮した声で言う。
「アジア代表の防御、完璧です。このまま相手の攻撃を受け流して……」
その瞬間――
アジア代表が、カウンター攻撃を仕掛けた。
ヨーロッパ代表が、大きくHPを削られる。
「来ました!完璧なカウンター!」
莉乃も、興奮した声を上げる。
観客席も、大きな歓声に包まれた。
そして――
『VICTORY: アジア代表』
試合終了。
「アジア代表、見事な勝利です!」
田村氏が、興奮した声で言う。
秀と莉乃も、拍手を送った。
次の試合。
『北米代表 vs 南米代表』
「こちらも注目の一戦ですね」
田村氏が、言う。
秀は、画面を見つめながら分析した。
「北米代表は、バランス型ですね。攻撃も防御も高水準です」
「では、南米代表は?」
「トリッキーな戦術を使ってくると思います。相手の意表を突く動きが得意なチームです」
秀の予想通り――
南米代表は、予想外のルートから攻撃を仕掛けた。
北米代表が、戸惑っている。
「おお、予想通りです!南米代表、トリッキーな動き!」
莉乃が、興奮して言う。
だが――
北米代表は、冷静に対応した。
「北米代表、落ち着いてますね。トリッキーな動きにも動じていない」
秀が、感心した声で言う。
「経験値の差が出ていますね」
そして――
北米代表が、反撃を開始した。
圧倒的な火力で、南米代表を追い詰める。
『VICTORY: 北米代表』
「北米代表、危なげない勝利です!」
田村氏が、興奮した声で言う。
---
数試合後。
秀と莉乃は、休憩室で休んでいた。
「実況、楽しいね」
莉乃が、嬉しそうに言う。
「ああ。色んなチームの戦術が見られて、すごく勉強になります」
秀も、満足そうに頷いた。
「でも……明日は、私たちの番だね」
莉乃が、少し緊張した顔になる。
秀は――優しく笑った。
「大丈夫。俺たちなら、できます」
「うん……!」
その夜。
秀は、ホテルの部屋で戦術を練っていた。
ノートに、様々な戦術パターンを書き込む。
「相手は……ヨーロッパランキング3位のチーム。攻撃特化型だな」
秀は、対策を考えた。
「莉乃さんの防御魔法を軸に、カウンター狙いか……いや、それだと読まれるかもしれない」
秀は、何度もシミュレーションを繰り返した。
そして――
「これだ」
秀は、完璧な戦術を思いついた。
翌日。
秀と莉乃の試合が始まった。
『神崎灯・白雪リノ vs ヨーロッパ代表』
「さあ、注目の一戦です!神崎灯選手、白雪リノ選手の初戦!」
実況者の声が、会場に響く。
観客席も、大きな歓声に包まれた。
試合開始。
相手チームが、猛攻を仕掛けてくる。
「来た!莉乃さん、防御!」
「はい!」
莉乃のキャラクターが、防御魔法を展開。
相手の攻撃を、完璧に防ぐ。
「よし、今だ!」
秀のキャラクターが、カウンター攻撃。
だが――
相手も、それを読んでいた。
「まずい!」
相手の反撃が、秀のキャラクターに直撃しようとした瞬間――
莉乃のキャラクターが、秀を庇った。
「莉乃さん!」
「大丈夫!回復するから、秀くんは攻撃して!」
莉乃の声が、決意に満ちていた。
秀は――その言葉に、力をもらった。
「わかりました!」
秀のキャラクターが、再び攻撃を開始。
莉乃は、回復魔法で自分のHPを回復しながら、秀をサポートし続ける。
完璧な連携。
観客席が、どよめいた。
「すごい……この2人、息がぴったりだ……」
「これが、神崎灯と白雪リノか……」
そして――
秀と莉乃、同時に必殺技を発動。
『絆の力』
2つの光が、相手チームを包み込んだ。
『VICTORY: 神崎灯・白雪リノ』
会場が――爆発的な歓声に包まれた。
「やったああああああ!」
莉乃が、歓声を上げる。
秀も、満足そうに笑った。
「完璧でしたね、莉乃さん」
「秀くんのおかげだよ!」
2人は――画面の向こうで、握手を交わした。
試合後。
秀と莉乃は、控え室で休んでいた。
「疲れたけど……楽しかった」
莉乃が、嬉しそうに言う。
「ああ。次も、頑張りましょう」
「うん!」
そこへ――
ノックの音。
「どうぞ」
ドアを開けると、黒木颯太が立っていた。
「おお、神崎!見てたぜ、すげえ試合だった!」
「黒木さん、ありがとうございます」
「いやマジで。お前ら、絶対優勝できるわ」
黒木の言葉に、秀は笑った。
「頑張ります」
「おう!応援してるぜ!」
黒木が、去っていった。
その夜。
秀と莉乃は、ホテルのレストランで夕食を取っていた。
「今日、お疲れ様」
莉乃が、グラスを掲げる。
「お疲れ様です」
秀も、グラスを合わせた。
「秀くん、明日も頑張ろうね」
「ああ。明日は、もっと強いチームと当たります。気を引き締めていきましょう」
「うん!」
2人は、明日の試合について話し合った。
戦術、相手の分析、自分たちの強み。
全てを、丁寧に確認していく。
「よし、準備は完璧ですね」
「うん!明日も、勝とうね!」
「ああ。一緒に、優勝しましょう」
2人は――決意を新たにした。
翌日。
秀と莉乃の2回戦が始まった。
相手は、北米ランキング1位のチーム。
「強い……」
莉乃が、緊張した声で言う。
「大丈夫。俺たちにも、勝算はあります」
秀が、冷静に答える。
試合開始。
相手チームの攻撃は、圧倒的だった。
秀と莉乃は、防戦一方。
「まずい……このままじゃ……」
莉乃の声が、焦っている。
だが――
秀は、冷静だった。
「莉乃さん、相手の攻撃パターン、見えてきました」
「え?」
「次の攻撃、左から来ます。右に避けてください」
「わ、わかった!」
莉乃のキャラクターが、右に避ける。
相手の攻撃が、空を切った。
「今です!」
秀のキャラクターが、カウンター攻撃。
相手のHPが、大きく削られた。
「よし!このまま!」
秀と莉乃、猛攻を開始。
完璧な連携で、相手を追い詰めていく。
そして――
『VICTORY: 神崎灯・白雪リノ』
会場が、再び歓声に包まれた。
「やった……やったよ、秀くん!」
莉乃が、涙声で言う。
「ああ。莉乃さんも、完璧でした」
秀が、優しく答える。
観客席からは、惜しみない拍手が送られた。
その夜。
Twitterのトレンドが、爆発していた。
『#神崎灯』『#白雪リノ』『#アストラルオデッセイ』が、トップ3を独占。
『神崎灯と白雪リノ、2回戦も完勝!』
『この2人、本当に強い』
『優勝候補筆頭だろ』
『絆の力、やばすぎる』
秀は、タイムラインを見ながら――笑った。
「皆、応援してくれてるな……」
ピロン、とDM通知。
黒木からだった。
『おめでとう!次も頑張れよ!』
秀は、返信を打った。
『ありがとうございます。頑張ります』
翌日。
準決勝。
秀と莉乃の相手は、アジアランキング1位のチームだった。
「いよいよ、準決勝か……」
秀が、少し緊張した顔で言う。
「秀くん、大丈夫だよ。私たちなら、できる」
莉乃が、励ますように言う。
「……ああ。一緒に、勝ちましょう」
「うん!」
試合開始。
相手チームは、これまでとは比べ物にならない強さだった。
攻撃、防御、立ち回り、全てが完璧。
「強い……!」
秀も、圧倒されそうになる。
だが――
莉乃が、声をかけた。
「秀くん!私を信じて!」
その声に、秀は――我に返った。
「……ああ!」
秀と莉乃、全力で戦い始めた。
攻撃、回避、カウンター。
全てを、完璧に実行していく。
そして――
最後の一撃。
秀と莉乃、同時に必殺技を発動。
『絆の力』
巨大な光が、相手チームを飲み込んだ。
『VICTORY: 神崎灯・白雪リノ』
会場が――最大級の歓声に包まれた。
「やった……やったああああああ!」
莉乃が、泣きながら叫ぶ。
秀も、涙が溢れそうになっていた。
「莉乃さん……やりましたね」
「うん……うん……!」
2人は――画面の向こうで、抱き合った。
そして――
決勝戦。
秀と莉乃の最後の相手は――
ヨーロッパランキング1位、世界最強と謳われるチームだった。
「いよいよ、決勝か……」
秀が、深く息を吸った。
「秀くん、一緒に優勝しようね」
「ああ。絶対に、優勝する」
2人は――最後の戦いに向けて、準備を始めた。
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