アニマルメイドカフェにようこそ!

@kanikani7

プロローグ

白昼の雑居ビル街で事件は起こった。

現場は古びた朝沼ビルの3階にある執事喫茶「アニマル執事カフェ」だ。

「アニマル執事カフェ」は、動物好きのお嬢様やご主人様を、お迎えするというコンセプトの執事喫茶である。

カフェのコンセプト通り、働く執事は動物の耳や尻尾をつけていた。

さらにカフェ内では、自由に触れ合うことのできる犬や猫、小動物が飼育されている。

そんな人間と動物の共存する、穏やかなカフェは、一瞬にして恐怖の殺人現場へと変わった。

「愛されているのは私よ!」

加害者の20代女性Aは、そんなことを叫びながら鞄から刃渡り20センチの出刃包丁を取り出した。

そしてAは同時刻カフェを訪れていた女性Bを刺したのだった。

「愛してるって言ってよ……言ってくれないなら……」

血まみれになったAは次に、カフェ店員のCへと襲い掛かり、身体を切りつけた。

続けざまにAはCへ包丁を向けたが、そのときオーナーの「斎藤 隆臣」が2人の間に入った。

「斎藤 隆臣」はCを庇って胸をひと突きされたのだった。

警察や救急車が到着する前に、その場でAは自分の首を切り自殺を図った。

あっという間の出来事だったという。

AとB、斎藤 隆臣は病院に運ばれたが、死亡。

Cは重傷を負っていたが、命に別状はなかつた。

一連の出来事の後、ビル周辺は報道陣に溢れかえっていた。

ひとりの記者が、ビル2階「爬虫類カフェ」の店長を務める男性にインタビューを行った。

体格のいい店長は、大きなトカゲの刺青が顔半分を覆っており、耳には数十個のピアスが開いている。

いかにも強面の彼だったが

「斎藤さんはとても親切な方でした。まさか殺されてしまうなんて……」

と今にも泣きそうな表情で語り、起こったことの凄惨さを際立てた。

そうして「アニマル執事カフェ」の事件は、日本を震撼させた。

ワイドショーでは、執事カフェなんかに通う女はどうだとか、キレやすい現代人の闇だとか、ビルのセキュリティの甘さが問題だとか、そもそも客と店員の距離が、女は男に多額を貢いでいたのではないか……云々、好き勝手議論を交わしていた。

メディアは面白おかしく「アニマル執事カフェ」を取り上げて盛り立てたのだった。

しかし、メディアが騒ぎ立てる裏で、ただひとり静かに涙を流していた人物がいた。

斎藤 隆臣の唯一の肉親である、弟の隆之である。

兄を失った彼のもとに、やがて一通の手紙が届くことになる……それが、すべての始まりだった。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る