心の中の小さな冒険

雨音|言葉を紡ぐ人

第1話 灰色の朝

朝日が差し込む電車の窓から、私は何度目かわからない毎日を眺めていた。

毎朝6時47分。いつもの駅から乗って、いつもの時間に着く。席は座ったことがない。ラッシュの波に揺られながら、私は考えるのをやめて、ただ立っていた。23歳のOL・真咲は、鏡を見ても昨日の自分と変わらない顔が映るだけだった。

会社では、言うべき言葉を言い、笑うべき時に笑う。帰ってきたら、スマートフォンのニュースを流し見して、ベッドに倒れ込む。土日は友人と会う約束もなく、家にいる。親には「仕事は充実してる」と嘘をついている。

本当は、心のどこかで何かを待っていた。何を待っているのかすら、もうわからなくなっていた。

その朝のことだった。

いつもより混雑した電車に乗った。肩が触れるくらい密集した人間の中で、私は眼を閉じていた。すると、ふと誰かの腕が私にぶつかり、大きな衝撃が走った。

電気が走ったような感覚。痛みではなく、何か違うもの。

眼を開けたとき、私の視界は完全に変わっていた。

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