最強の冒険者になった義妹が俺のことを話した件 〜おかげで平和に暮らしていたはずなのに聖女や王女にまで絡まれ始めました〜

クククランダ

プロローグ


 田舎はやはり素晴らしいな。空気は綺麗で目の前の川の水は澄んでいる。


「転生してよかったぁ」


 前世の過酷な労働環境とはまさに天国と地獄である。俺はブラック企業に殺されたような者だからな。怨念もひとしきり強いぞ。


 なんならたまに会社と上司に呪いを掛けているまである。

 思い出したら腹立って来たな。いかんいかん。この綺麗な空気を吸って邪気を払わなければ。


「すぅー、はぁーっ」


 なんて素晴らしいとこなんだ。スマホなどの便利なものはないが、そんなものは無くていい。

 こうやって俺は穏やかに田舎で死ぬんだー。


「兄さーん」


「ん?」


 あれ、おかしいな。何故か妹の声が聞こえる。そんなはずないのに。

 あいつは現在王都で冒険者をやってるからな。きっと幻聴だろう。


 やれやれ、あまりに妹を愛しすぎてとうとう幻聴まで聞こえるようになってしまったか。

 そう思い寝返りをうつと何かがこちらへ走ってくるのが見えた。


 ウェーブのかかった水色の髪の毛に魔女を連想させるとんがり帽子と黒いローブ。

 手には杖が握られていて、持っている人物は華奢な体をしている。その幼さの残した顔は俺の妹そっくりの人間だった。


 いや、待てよ? あれ、そっくりと言うか。



「兄さぁあああん!!」


「おぶっ!?」


 肺の空気が間抜けな声と共に体外へと放出された。なんでこいつは毎回人の腹にダイブして来るんだ。


「えへへ、兄さん。ただいま」


 顔を上げた妹は屈託のない笑みを向けて来た。人の腹にダイブしちゃいけませんと怒ろうとしたが、これでは怒れないな。


 俺は妹の手に置いた。


「おかえり。リリナ」




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