第26話 バンドのすれ違い

1年生限定ライブから数日。幼馴染 feat.NEVISTAは、放課後の空き教室2-1で練習をしていた。


風習というか伝統というか、練習する空き教室は大抵が東棟に3年生、西棟に2年生と1年生が入っていた。理由はごく単純で、旧棟から楽器を持ち出す際に、一番近いのが東棟だから。先輩に近い場所を譲って、後輩は遠くまで頑張って楽器を持っていく。


当たり前と言えば当たり前だろう。


そんな中、私たちが使うことになった2-1は、西棟の3階、南棟階段のすぐの所にある。端的に言うと、旧棟から一番遠い。


使う教室は1年生と2年生でくじを引いて決めた。ちなみに、このくじを引いて決めるというのは関園先輩の案だと言う。それまでは、1年生が4階、2年生が3階という暗黙の了解があったそう。そんな関園先輩にささやかな感謝をしながら、4階にならなかっただけましだったと思っておくことにしている。



「ごめん!一旦休憩で!」


茜の合図で合わせに休憩時間が入る。彼女はギターを抱えたまま、椅子に座り込んだ。


ギターを机に立てかけ、うつ伏せになって休みだしたかと思ったら、突然立ち上がる。動きがうるさいな。



「てかさ、バンド名決めようよ!」



たしかに。今までの名前は、解散する可能性があったから決まった名前、というか英二が勝手に決めたバンド名。私も私たちらしい名前を付けたい。幼馴染呼ばわりはダサい。


「ね、英二!なんかいい案ある?…ってなんで楽器片付けてるの?」


茜の言葉につられて英二の方を見ると、大智も楽器を片付けていた。茜は終わりとは言っていない。


「2人とも、まだ終わらないよ。茜は休憩って言ったんだけど。」


英二はケースのファスナーを閉め、振り向いた。



「今日、この後ライブがあんだよ。時間的にそろそろ行かねえと間に合わねえ。」



ライブがある?何を言い出すかと思ったらどういうことだ?


「私、ライブなんて聞いてないけど。なんの曲やるの?」


英二は思わず吹き出し、こちらを嘲笑うように見た。


「お前らとじゃねえよ、NEVISTAとして2人でやんだよ。んじゃ後は練習頑張れよー。」

「ちょっと!そういう大事なことは先に言ってよ!」


私の言葉をガン無視し、二人は教室を出ていった。自由奔放というか、自分勝手すぎるだろう。英二がクソッタレだと言うことを、ライブで良いパフォーマンスをしたせいで完全に忘れていた。バンドガチでやっていくって言ったじゃん。


教室には茜と二人きりになってしまった。茜は教室の出口を見ながら口を開けてフリーズしている。私も内心そんな感じになっている。


なんだか英二と大智が教室の外に消えた瞬間、何かが胸の奥でぷつりと切れた気がした。



私たちの“バンド”って、こんなに軽いものなの?



勢いよく開けられた扉の音が、やけに大きく響いた。


…沈黙。


「今日は帰ろっか。」

「…うん。」


そうして練習は静かに解散となった。その日の夕日は、なんだかとても寂しさを強調させているように感じた。



土曜日。ゆっくりと目を覚ました。


起きて早々、ベッドの中で昨日の出来事が未だに頭にこびりついて離れない。


英二たちにとっては、バンド活動はあくまでもサブなのだろうか。


遊びなのだろうか。


それとも、私との関係を繋ぎ止めるだけのもの?入学当初に思い浮かべていた私と茜のバンドというイメージから程遠い今の現状は、私の頭を永遠にかき乱す。


「はあ…。」


私は重い気持ちそのままに、とりあえずギターを担いでとっとと茜の家に向かった。



「あらつぐちゃん。」

「おはようございます。音鳴らすのでうるさかったらすいません。」


茜の母親に挨拶をし、階段を上がる。上がっていくと、テレキャスターの音が聞こえてくる。


「茜おはよー。」



扉を開けて見えた光景に驚いた。茜はなぜか休日に制服を着てギターを弾いている。

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