第13話 Photon Burst
随分と熱気を感じる人だ。矢崎くんは続けてギター、ベース、ドラムとメンバー紹介をする。
「そして我らがボーカル、藤崎 澪!」
「どうも2人とも、始めましてアンドおはよっ。」
ちらっと矢崎くんの隙間から顔を出した彼女はウルフカットで適当なリボンの結び方をしているのが見える。
「藤崎 澪さんって言うんだ!この前の、歌すっごい上手だった人だよね!?」
茜が藤崎さんに食いつく。彼女は少し照れたように視線を泳がせた。
「あはは…まあそうだね、こうして言われるとちょっと恥ずかしいけど。」
「澪って呼んで良い!?」
「えっ?いいよ。」
茜はコミュ力お化けだ。あっという間に打ち解けてしまった。
そうして面々を見渡す。
「Photon Burstのみんな、よろしくね!」
歩きながら順番に握手をして回る茜。つよい。
「私はギタボの小林 茜!そっちはギターの大橋 つぐね!」
茜によって勝手に紹介される。まだバンドメンバーを一人も集められていないことがバレないといいけど。
5人を見ているとため息が出そうになり必死に抑える。
バンドを組めていない私たちの気持ちになってほしいと思ってしまう私は卑屈で自分勝手だろうか。
すでにバンドも組めて、一緒に登校しているなんて、羨ましい以外のなんでもない。ちくしょう。今日こそ…。
そして迎えた放課後。私たちは授業が終わるなり教室から飛び出し、音楽準備室に向かった。
「心機一転!茜、行くよ。」
顔をパチンと叩き、音楽準備室に足を踏み入れる。
そこには数日前とは少し違った空気が流れていた。
入学してすぐの時のような活気は無く、人も少ない。英二たちも…いない。それに、いる生徒はすでにバンドを組んでいるであろう人たち。この中で残っているのはそれくらいだ。あいつらがいなくてせいせいした。ほんとに。
「大橋さんたち~調子はどう?」
ケミカルスピーカーズの関園先輩だ。調子は…。
「これから上げていくつもりです。」
「つまり、まだバンドを組めてないってことね。」
「…。」
見透かされている。関園先輩は腕を組み、少々困ったような表情をする。
「実はさ~、今年は豊作でね?まだバンド組んでない1年生少ないのよ。みんなすごい勢いでバンド結成しちゃって。」
「そうだったんですね…。」
「みんなすごい!どんなバンドがいるんですか!?」
好奇心旺盛なのは良いが、自分たちが危機的状況に置かれていることをもう少し自覚したほうが良いと思います。茜さん。
「そうねえ、Photon Burst、ポジションα、とか…。1年生だけで6バンドはあるかしら。」
関園先輩は指を折りながら一つ一つと数えていく。というか6バンドも…!?
最低バンドを組むのに4人必要だとして、新しく入ってきた1年生が何人かは把握していないけど、20人以上は既にバンドを組んでいるというのか?そんな中取り残されている私たちって…。
「あー、2人とも、まだバンド組めてないんだ。」
会話に今朝の藤崎さんが参加してくる。
「あ、バレちゃいましたか…。朝はお世話になりました。」
「同級生でしょ、タメでいこうよっ。」
「すいません…。」
あの歌声の持ち主となると、どうも下手に入ってしまうというか、力ある者の前では大人しくしておこうという本能がつい働いてしまう。
「メンバーで困ってるんだったら、上級生に頼ってみるのもいいんじゃない?ちょうど、3年生の部長であり、ケミカルスピーカーズさんの関園先輩もこの場にいらっしゃることだしねっ。」
そう言われて少し驚く関園先輩。急に話を振られて困った表情を見せる。
「そ、そうね。私は一応部長だけど、一番顔が広くて助けになりそうなのは…ちょっと待ってね。」
関園先輩はスカートからスマホを取り出して、カタカタと操作をし、スマホの画面を私たちに見せる。
「これ!知ってる?」
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