第6話 拒絶と路上の予感
一言目がこれか。ほらやっぱりハズレだ。
「茜、もう行こうよ。」
「いや!私とつぐと、あなたたちの4人でバンドを組みたい!」
茜は一切私の意見など気にかけずそう言った。彼女は私の方には見向きもしない。
だんまりを決め込んでいる2人に茜は笑顔で再び話しかける。
「ねね、名前はなんて言うの?」
2人は顔を見合わせ、答える。
「…井上 英二(イノウエ エイジ)。こっちは大森 大智(オオモリ ダイチ)。」
なぜかガタイの良い細目の男子は腕を組んだまま一言も喋らない。本当に起きてるのか、うたた寝をしているのかすらわからない。
「それじゃ、英二、大智、よろしくね!」
茜は満面の笑みで握手をするための手を2人に伸ばした。すると英二はそれを見て嘲笑うようにして手をはねのけた。
「誰が組むって言ったんだよ。俺たちはバンドを組むつもりはねえ。」
茜の手をはねのけたことに対して若干の怒りを覚えたが、バンドを組むつもりが無いのに軽音楽部の、しかも音楽準備室にいるのはどういうことだ?
「ちょっと、女の子にはもう少しやさしく接したらどうなの?それに、バンド組まないならここにいる意味も無いでしょ。」
英二は面倒くさそうに頭を掻く。一つ一つの動作でここまで私をイライラさせるのはもはや才能かもしれない。
「うるっせえな。もういいわ、大智行こーぜ。」
「はあ?ちょっと待ってよ。」
私の言葉をわざとらしく無視し、英二はベースを抱え、大智は後を追うように音楽準備室から出ていってしまった。
教室の端っこに取り残される私と茜。それとは対照的に、さっきの女子の周りには相変わらず人だかりができていた。
「茜、次の人を探そう。」
「…。」
茜を短時間でここまで傷つける奴とはもう二度と関わりたくない。言いたいことだけ言って去っていっただけじゃないか。なんだったの、あの2人は。
そうして放課後、私たちは正門を出てゆっくりと最寄り駅まで向かった。
放課後の帰り道をとぼとぼと歩く。
「茜、今日のことは気にしなくていいからね。」
「うん、私もちょっと勢いで行き過ぎちゃったかも…。」
茜は無理に笑顔を作ってみせる。茜にこんな顔をさせたこと、絶対に忘れないからな。
「茜は悪くないよ、あの2人に話しかけたのはちょっと悪手だったかもだけど…まだまだ時間はあるし、ベースとドラム探していこうね。」
「…つぐ、ありがとね。私も元気に頑張る!…ってなんか聞こえない?」
駅前へ近づいていくと、一定の感覚でリズムを刻む音が耳に入る。改札近くまで行くと、それがバスドラムから出ている音であることがわかった。
「あれって…。」
ファンフレットの5弦ベースと持ち運び可能な簡易ドラムが見える。そして同じ高校の制服、青いネクタイ。その楽器たち持ち主は…。
「英二、大智…。」
2人は準備を終え、突如として路上ライブを始めた。
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