全裸紳士、世界を救う。〜服を脱ぐたび強くなる俺は、今日も理性と戦う〜

本を書く社畜

第1話 神託の日――全裸の呪いか、それとも奇跡か

俺は今日、十歳になった。

この国では、十歳になると「神託の儀式」がおこなわれ、その日その人だけのスキルが神から授けられる。

それは人生を大きく変える瞬間であり、未来の可能性を左右する始まりだ。


俺はその話を聞いて楽しみなんて少しもなかった。

「いったい、どんなスキルが俺にくるんだ?」と半分は不安だった。

周りの友達は「火炎の使い手」や「風斬りの剣士」なんてかっこいいスキルを夢見ている。俺もそうだ。

でも、きっと俺のはおかしなものだと思った。そう思うことから逃れられなかった。


式典は朝の儀式場で開かれていた。大理石の階段と煌びやかな祭壇。

神官が声を震わせながら名前を呼ぶ。


「シン・カナメ君、あなたに授けられるスキルは――『ヌーディストブースト』」


一瞬、場が凍りついた。

スキル説明が俺の脳に流れ込んできた。


「全裸に近づくほど全ステータスが大幅に上昇。逆に服を着込むほど能力は下がる。」


「は……?」


耳を疑った。

それは、誰かの悪戯かと思った。


周りはクスクスと笑い、いたずらな目で俺を見た。

「シン、お前マジで裸が強いスキルなんて……変態じゃねえか」

「裸になるほど強くなるとかバカすぎるだろ」


俺は顔を真っ赤にして黙った。

何も言い返せなかった。


冗談だと思えたらどんなに良かったことか。


親友でさえも、引きつった笑いを浮かべていた。


その日、家に帰って鏡の前に立った。


服をまとった俺と、もしかしたら力を発揮するかもしれない姿。

奴らの言う通り「変態」の烙印は俺に重くのしかかった。


「裸になるなんて……恥ずかしくて耐えられない」


でも、戦いの世界は甘くはない。強くなるためにはこのスキルを使わなければならない。


そんな時、父が静かに声をかけてきた。


「シン、このスキルが変わっていても、お前のものだ。

力を使いこなすのはお前自身。恥ずかしがることはない。誇りを持て。」


父の言葉は胸に染みた。


だが、鏡に映った自分の姿はまだ信じられなかった。


「俺はこの先、どうやってこの変態スキルを使いこなせばいいんだ?」


理性と羞恥心の間で、心は揺れていた。


全裸で強くなる変態紳士――そんな伝説の主人公の物語が、

ここから始まることをまだ俺は知らなかった。

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