3

 ギンガロンは、小さな島だ。

 だけど、この惑星の、どこの国よりも、科学が進んでいる、機械国だった。

 自家用車として、島民が乗っているのは、他の国では、まだまだ珍しい、空飛ぶ車だったり。

 街の中も、何十階建てもある高層ビルが、所狭しと、建っていたりと。


 ゴウン…ゴウン…。


「さすがに、これだけ大掛かりな、何かの機械が、街の至る所にあると……機械音も…すごいな……」

 そんな街の中でランプが、空を見上げて言った。

「……。建物で、空が狭い……」

 すると、その建物の間から、


 ブーーーン……。


「島に着く前に、小舟の上から見えていたけど……あれは…飛行機……? でも…それにしては……なんか小さいし……形も違うような……。前と後ろの左右両方に…タイヤ? のようなものが、あって……何か……プロペラのようなものが……。もしかして……あれは、車、かなー……?」

 高層ビルの間から、空飛ぶ車がみえた。

「すごいなー……車が空を飛んでるのかー……。ここに来るまで、約一年間…いろいろな国を旅してきたけど……ここまで科学が進んでるところは…なかったな……」

 ランプは、そう言いながら、街の中へと、歩みを進めた。



「回転饅頭か……。オレの村だけではなく…ここにも、あったんだな……」

 街の中を見物していたランプは…露店の前で足を止めた。

 “回転饅頭”とは…こぶし大の、茶色い生地の平らな饅頭の中に…黒や白のあんこが入った、食べものである。

「へー…クリーム入りや、あんこに蜂蜜入りなんていうのもあるのか……。オレは、黒あんに、しようかな……。すみません。黒あんをひとつ、ください」

「はいよ」

 露店のおばさんが言った。


 ジューーー。


「すごい。火を使わずに、つくっている……」

 ランプは、お店のカウンター越しに、回転饅頭をつくっている光景を観ながら言った。

「まーね。ギンガロンでは、料理をするのにも、電気だね」

 露店のおばさんが言った。

「うそー!? 電気で料理をするんですか!?」

「わたしはウソは言わないよ。ギンガロンでは、料理だけじゃないよ。お風呂から、あそこの、空飛ぶ車から、何から何まで電気、オール電化さ」

「うそー!!? オール電化!? だけど、やっぱり、あの空飛ぶ物体は、空飛ぶ車、だったのか……」

「ははは。お客さん、ここには観光で?」

「いえ、オレは世界中を旅している、召喚士見習いなので、召喚獣をさがして、ここに……」

「召喚士って、お客さん、魔法使い、なのかい?」

「まだ、魔法は使えませんけど……一応…冒険の旅にでて、約一年……召喚獣をさがしだせずに、まだ、一体とも契約できていませんけど…幼い頃から、モカと一緒に……幼なじみのモカと一緒に、魔法使いになる為の修行をしてきていて……魔法を使う為の魔力はあるので…一応は…魔力を感じたりは、できますけど……」

「そうなんだね」

「はい。それで…ギンガロンには、『太古の焔』…と言う、伝説をきいて来ました……。あのー……ここに、召喚獣は、いますか?」

「うーん…どうだろうねー……。わたしも、長年ここに住んでいるけど……召喚獣の話は聞かないけど……観ての通り、この島は……魔法とは程遠い、機械が発展している国だから……」

「そうですか……。そういえば、あの山、おおきいですね……」

「あー、あの山は、火山でね」

「火山……」

「うん。もう何百年も長いこと、噴火は、してないけどね……。だけど火山は、いきてる、活火山でね……」

「活火山……」

「ガスとかで危ないからって、たまに火山を調査をしにいく調査隊以外は…誰も近寄らないんだ……。そういえば、火山と言えば…何千年もの大昔からの、確かにここには…伝説があったね……」

「『太古の焔』…の、ですか?」

「うん。その『焔』…の名前は、なんて言ったか覚えてないけど、なんでも、ギンガロンを守ってくれている、火の精霊がいるって話でさ」

「火の精霊……」

「丁度、火山の麓に、古代遺跡があってね。そこに、まつられている、って、話だよ」

「『太古の焔』…火の精霊…古代遺跡……」

「だけど、お客さん。火の精霊がいるって……本当かどうかは…わからないけどね。火山の調査隊の話では…遺跡全体が、かなり、いたんではいるけど……火山の麓に古代遺跡は、本当にあるらしいよ……。だけど…この、科学万能の時代に……火の精霊なんて……わたしの考え方としては……いたとしても、もう、頼る事はない。誰も興味がないから、遺跡には入らないんだよ」

「そうですか……」

 ランプは言った。

「あの…この辺で、どこかキャンプができる所は、ありますか?」

「キャンプ? お客さん、野宿、するのかい?」

「はい……」

「そうかい……。それだったら、街はずれにある、あの高台に行くといいよ」

 露店のおばさんが、その高台を指さして、教えてくれた。

「あ、あそこですか?」

「うん。あそこだったら、自由に使っていい所だから、テントをはったりしても、誰からも文句は、でないから」

「あ、ありがとうございます」

「はい。饅頭買ってくれて、ありがとうね。また、きてね」

 ランプは、回転饅頭の代金を、露店のおばさんに渡して、商品を受けとると、露店をあとにした。

「太古の焔……。もしかしたら……召喚獣かも……。さっそく、明日にでも、調べに行こう。今日はもう、あそこの高台まで行って、テントなどをはっていたりしたら、遅くなるから、路銀も少ないし、あそこの高台まで行って、野宿をしよう」

 ランプは、そう言うと、街はずれにある高台を目指して、歩いて向かった。

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