第22話 会いたい
奏は勉強が嫌いだったっぽいけど。
大学の数学などには興味があるらしい。
俺はそんな姿を見ながら笑みを浮かべつつ学校に向かう為に歩いていると「あ」と声がした。
前を見るとそこに昨日の原田さんだったか。
その少女が制服姿で居た。
「奇遇だな」
「はい。学校がこちらなもので」
「ああ。そうなんだな」
「私、宮古高校です」
その様に話す少女。
それから「あ、自己紹介しますね。私、原田夏菜子です」と話してから微笑んだ。
俺は「...やはり...」と呟く。
そんな俺の複雑そうな顔に原田さんは「どうかしましたか?」と心配げに聞いてくる。
その言葉に「...奏という名前に聞き覚えはあるか?」と聞いてみる。
すると原田さんは「え」となってその場に鞄を落とした。
相当に驚いている。
「し、知っているんですか?」
「え?」
「流鏑馬奏さんの行方!」
原田さんは俺の胸に縋る。
それから見上げてくる。
え?え?
そう考えながら慌てて彼女を見る。
原田さんは「私...奏さんに謝りたいんです」と唇を噛む。
俺は「原田さん...?」と聞いてみる。
原田さんは「...流鏑馬奏さんを探していました。ずっと」と言いながら真剣な顔をする。
「...原田さん...」
「お兄さんはお名前は...」
「ああ。俺は空見雄太だ」
「...奏さんとどういうご関係ですか?」
「...俺の家族だ」
その言葉に「奏さんのご家族は再婚されたんですか?」と驚く原田さん。
俺は「そうだな。俺の父親が再婚したよ」と答える。
原田さんは「!」となりながら俺を見る。
それから俺から離れた。
「そう、だったんですね。良かった」
「...原田さんはなんで彼女を探していたんだ?」
「彼女は私の大切なかけがえのない友人でした」
「でした、ってのは?」
「私達は...生き別れました。...それも小説の事で喧嘩して離れ離れ。それから消息が分からなくなって。謝りたくても...謝れない。そんな...もどかしい時間を過ごしていて...」
「彼女が男装を始めた原因の1つか?」
「はい。多分...そうです」
原田さんは「私は愚かでした」と言いながら「私はささいな事で喧嘩した。...だから私は奏さんに謝りたいんです」と涙を浮かべる。
俺は「...そうだったんだな」と返事をする。
すると原田さんは「...でも元気そうなら良かったです」と笑みを浮かべた。
「...原田さん」
「はい」
「...会ってくれないか?奏に」
「え?そ、それは...」
「俺は君なら大歓迎だ」
「でも私は今は...」
「彼女は今、引きこもりになっていてな」
その言葉に原田さんは青ざめる。
それから「そ、それで何一つ消息が分からなかったんだ...」と絶句しながら涙を浮かべる。
そして次には泣き始めた。
「君のせいじゃないよ」
「引きこもったのは...私のせいですよ。きっと」
そう原田さんは呟く。
それから涙を必死に拭う原田さん。
だが涙は止まらなかった。
俺はそんな原田さんを見ていると「ちがうよ」と声がした。
あまりに唐突なその声に驚愕して背後を見る。
何故か奏がいつものオケモンパーカー姿で居た。
「か、奏さん」
「夏菜子ちゃん。ひさしぶり」
「...どうしてこの場所に?」
「偶然。にいさんが筆箱忘れていってた」
「...偶然、か」
「夏菜子ちゃん」
奏は原田さんを見る。
原田さんは「...」となってから俯いた。
それから「ごめん」と絞り出す様に苦しそうに言う。
奏は「...私、ギフテッドなんだ」と切り出した。
原田さんが「え?」となる。
「わたし、ネットで調べたけど多分ギフテッドなんだ。それで周りの。にいさん達が助けてくれた」
「!」
「その、達、には貴方も入ってる。夏菜子ちゃん。わたし、あなたにも救われた」
そう言いながら奏はゆっくり原田さんを抱きしめる。
それから原田さんの背中を擦る。
原田さんは号泣し始めた。
そして「ごめんなさい」と言う。
俺はそんな姿をを見ながら笑みを浮かべた。
「グスグス。感動的...」
「ああ。いや待て勝...なんでお前、号泣してんだよ。キショいな」
「はぁ?ぶっ殺すぞ?」
登校して来た?勝が泣いている。
キモいんだが...まあなんとも言えなくなる。
それだけ感動的だった。
ありがたいもんだな。
「話を聞いていたのか?」
「まあな。話を立ち聞きしてしまった。すまん」
「いや、良いんだが...」
勝は俺達を見ながら拍手している。
俺はその姿に苦笑した。
それから居ると「皆さん」と原田さんが切り出した。
腕時計を見てから「学校に行きましょう。時間が」と切り出した。
俺は「ああ。確かにな」と言う。
「じゃあ行くか」
「ですね」
それから俺は奏を見る。
奏は原田さんと俺達を見送る感じを見せる。
俺は奏に聞いた。
「帰れるか?」
「うん。もう大丈夫。この前とはちがう」
「...分かった」
俺は奏に笑みを浮かべる。
そして俺達は学校に登校し始めた。
原田さんと別れてから登校する。
学校で先に部活の関係で登校していた結弦に事の成り行きを説明すると結弦は感動して泣いていた。
デカい話だ、と。
正直、本当に感動的ではあるな。
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