第15話 告白

☆空見雄太サイド☆


さっきの奏の言葉はどういう意味なのか。

考えながら俺は自室で首を傾げていた。

幾ら考えてもあれが...いやまさかな?

そう思いながら俺は頬を叩いた。

それから学習椅子から立ち上がる。

こういう煩悩がある時こそ勉強を...と思っていた時。

コンコンと音がした。


「え?」


その様に俺は驚く。

それからドアを開けるとそこに何故か奏が立っていた。

俺は愕然としながらパーカーを着て立っている奏を見る。

というか裕子さんも親父も居ないんだ。

必然的に奏がノックをした事になるんだが...え?

そんな馬鹿な。


「奏?ど、どうした」

「お家、デート」

「え?聞こえないぞ」

「デートしよ。にいさん」


そう言いながら俺をクリッとした目で見上げる奏。

頬を朱に染めている。

俺は「?!」となりながら奏を見る。

今なんつった?

デート?!


「ど、どこでデートするんだよ?!」

「お、お家デート。...ラノベにあったから」

「家でってそれは...」

「まだ分からない?私、にいさんが、好き」


見開く。

どこかで確実にはそうなるだろうと。

そう思っては居た。

だけどまさか現実になろうとは。

奏は兄妹の枠を超えて俺が好きになったらしい。

そんな事が。

考えていると奏は俺にハグをした。


「生まれてはじめて好きな、人ができた」

「か、かなで...」

「私、にいさんが、好き。大好き」


奏は俺の背中に手を回す。

それから背中に縋る様にする。

まさかそんな馬鹿な事が。

結弦といい何が起こっている?


「私、にいさんに見合う女の子に、なる」

「奏?」

「だから私...学校に行く」


その言葉に見開き「ま、待て」と言う俺。

幾らなんでも事がトントン拍子すぎる。

そう考え俺は「奏。早すぎる」と奏での肩を握る。

奏は「でもこれしか、勝てない。結弦さんに勝てない、から」と言いながら俺を見る。

俺は「っ」となりながら「聞いて...いたのか」と聞く。

するとこくんと奏は頷いた。


「あんな場所だったら、流石に」

「...」

「結弦さんに、負けない。私は誰よりもにいさんを知っている。誰、よりもにいさんの近く、に居る」

「奏...」

「私は、絶対に、負けない」


奏はメラメラと決意を燃やす。

俺はそんな奏を見ながら柔和になる。

それから「奏。焦らずにいこう。お前は焦りすぎだ」と言ってから「そんな事をしなくても俺はお前を大切にしているから」と話した。

奏の頭を撫でる。


「にいさん。でも私は誰よりも才能が、無い、から」

「何言ってんだ。...お前の才能なら俺が一番知ってる。それは小説もそうだけどそれだけじゃない。お前は...頑張り屋っていう才能がある」

「!」

「俺は誰よりもお前が頑張っている姿を知っているから」

「ずるい。そんな事、言うなんて」

「俺はお前の兄だからな」

「...私は、その境界線を、越えたい」


それから俺を見上げる。

そして「じゃあ、お家デート、しよ?」と柔和になる奏。

俺は苦笑しながら「はいよ」と言った。

そうして俺達は俺の部屋に入った。



奏は俺の部屋が新鮮らしく。

見渡しながら「あれは?あれは?」とよく聞く。

俺はその言葉に「ああ。あれは写真。つまり俺の幼い頃のアルバムだな」と答える。

奏は「そっか」とニコッとしながら俺のベッドに腰掛ける。

それから奏は足を動かした。


「にいさんの部屋は入った事が無いから全部新鮮に感じる」

「だろうな。っていうか俺も幼馴染以外の女子が入って来たのはかなり新鮮だ」

「入ったこと、無いの?私と結弦さん以外の人が...」

「無いから新鮮だ」

「そ、そっか。えへ、えへへ」


モチモチした肌を押し上げ嬉しそうな顔をする奏。

やれやれ。

いちいち可愛いんだよな。

そう考えながら苦笑いを浮かべていると奏は「はしゃいだら暑くなっちゃった」と言いパーカーを脱いだ。

脱ぐ際にへそが見えた。

俺はそっぽを向く。

こんな可愛さは要らないかな。

煩悩だわ。


「ね。にいさん」

「あ、ああ。どうした」

「お願いが、その。あるんだけど」

「あ、ああ?」

「...高校の制服を着てくれない?」


俺は目をパチクリする。

はい?と思いながら「どうして?」と聞く。

すると奏は「私も着替える。制服で写真を、撮りたい」と話した。

俺は「成程」と呟いた。


「奏なりにデートしたいんだな」

「そ、そう。制服デートも、したい」

「分かったよ。面倒だけど着替えるよ」


どうせまた学校だ。

服を整えるにはまあ良いだろう。

そう考えてから奏を見る。

奏も「やった。き、着替えてくる。制服を探して、くる」と胸を躍らせる様に出て行った。


俺は置かれていった奏のパーカーを見る。

肘の部分が擦り切れていた。

色落ち、破れ、汚れ、ほつれ。

本当に大切に着ているのがよく分かる。


「...今度破れている所とか直してやるか」


そう言いながら俺は柔和になり顔を上げた。

それから待っているとドアがゆっくり開いた。

「ああ。かな...」とそこまで言ってから俺は心臓がバクッと跳ねた。

それは何故かというと。

奏の制服姿だった。

当然、女子の制服だが新鮮な感じがした。


「ど、どう、かな」

「...」

「に、にいさん?」

「いや。すまん。...可愛い」


その言葉に赤面する奏。

それから「そ、そう」と言ってから俯く。

俺はその顔を見ながら頬を掻く。

そして奏に近付く。


「高校の制服はあったんだな」

「そうだね。ほぼ役、に立って無いけど」

「そうか」

「...にいさん?」

「いや。ありがとうな。俺の為とはいえ学校の制服を着てくれてさ。...かなり頑張ったんじゃないか?」

「う、うん。確かに、ね」


奏はモジモジする。

俺はその姿を見つつ「じゃあデートするか」と話した。

すると奏は「うん」と明るくなった。

そして俺は部屋に奏を入れた。

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