第6話 伊達勝の人生
どうしてこうなった。
そう考えながら俺は比較的綺麗?な可愛らしいぬいぐるみとか置かれている奏の部屋の床に正座していた。
目の前にジト目になっている奏が学習椅子に座って居る。
足を組んで俺を見ている。
俺はその姿に恐怖を感じた。
「なあ。奏。なんで俺はこんな目に遭っているんだ?」
「にいさん。分からない訳じゃないでしょ?」
「い、いや。分からないんだが」
「流石にそれは、な、ないでしょ」
まるで分からん。
何故俺はこんな目に。
そう考えながら俺は冷や汗を流す。
まさか奏の部屋に入れるとは思わなかったがこんな感じでストレスを感じながら入室するとは。
なにが起こっている。
「にいさん。僕は怒っています」
「は?な、何故」
「分からない訳じゃないでしょ。僕を無視してさっきは放置したでしょ」
「いや。それはたまにあるじゃないか。学校に行っている時とかさ」
「じょ、条件がちがうもん」
なんだよもう。
そう考えながら俺は奏を見る。
奏は寂しそうな顔をする。
俺は盛大に溜息を吐きつつ「なあ。奏。ケーキ食べるか」と聞いてみる。
「ふあ?ケーキ?」
「そうだ。ケーキだ。今日は休みだから生活費でお金を多く貰っていてな」
「そう、なんだ」
「ああ。だからケーキを買うよ」
「...」
考え込む奏。
俺は奏を見る。
すると奏は「じゃあ」と切り出した。
「い、苺のショートケーキ...」と言いながら俺を見る。
「分かった。じゃあ買ってくる」
「い、いや。僕も行く」
「は?」
「僕も行く」
「は!?マジかお前は!?」
なにを言っている。
奏まで動く必要性は無い。
それに奏が外に出るなんて想定していない。
そう考えながら俺は奏を見る。
「僕だってやれる」
「なんでそんないきなり」
「お、置いてかれるから」
「いや待て。今までもあったじゃないか!」
「ぼ、ぼくがにいさんと一緒なのは嫌なの」
うりゅっと目を潤ませる奏。
俺は「だ、だって」と困惑したが言い返す理由が無い。
そう考えてから俺は盛大に溜息を吐いた。
それから「分かった」と返事をする。
「でも無理はしない。良いな?」
「ん」
それから奏は嬉しそうに準備をする。
俺はその姿に俺も準備をする為に奏の部屋を出た。
そして俺もショルダーバッグを背負った。
☆
「奏。準備は良いか?」
「...」
奏は玄関にパーカー、キャラものTシャツ、短パン、ショルダーバッグを持って現れた。
その顔は何かとんでもないものでも見た様に青ざめている。
外に出る人間の顔ではない。
なんでそんな姿なのに...出るんだ?
「奏」
「う、うん」
「...意識と行動をするのは立派だと思うが...流石に無理じゃないか?久方ぶりなんだろ」
「それでも僕は出たい」
「...奏...」
「大丈夫。にいさんが居るから」
そう奏は言う。
俺はそんな奏の姿に頷いた。
それからドアを開ける。
そして奏は俺に縋りつきながら居た。
俺は玄関に鍵をかける。
☆
「奏。大丈夫か?」
「う、うん。大丈夫。ありが、とう」
俺は横をフードを被って恐る恐る歩く奏を見る。
奏は人の顔を窺っていた。
目線を恐れていた。
俺はそんな奏を見ながら「大丈夫じゃ無かったら言えよ」と歩きながら言う。
「う、ん。でもにいさんが一緒だから」
「まあそうなんだけどさ」
そして俺をチラチラ見る奏。
俺は、しかし奏が一緒か。なんか不思議だな、と考える。
それから俺は歩いていると「よお」と声がした。
奏がビクッとなる。
「勝?!なんで居るんだ!?」
「?...いや。普通に買い物だが?」
「...」
ヤバい。
まさか勝に遭遇するとは。
一番厄介な野郎だわ。
そう考えながら俺は勝を見る。
勝は「?」を浮かべながら俺を見た。
「?...横に居るのは?」
「あ、ああ。俺の弟だが...」
「???...弟?」
これはマズイ。
流石の馬鹿にも分かるか?
そう考えたのだが。
勝は「そうか!マジか。弟さんかよ!」と笑顔になる。
流石は馬鹿。
「ひっ」
「宜しくな。俺は伊達勝だ」
ドン引きする奏。
それから青ざめる。
俺はその姿に「あー。すまん。勝。実は彼はかなりの人見知りでな」と言った。
すると勝は「え!そうなのか。すまない」と潔く下がる。
なんだコイツ。
更に追求してくるかと思ったんだが。
「勝?お前らしくないな」
「...ああ。実は俺も引きこもりの妹が居てな」
「は?初耳だぞお前。マジかよ」
「ああ。いやまあ言う必要性を感じなかった。それに個人個人パターンも違うしな。扱いは慣れてる」
そう話す勝。
それから柔和な顔を浮かべてから「俺達にとってはそうでもない事もこの子達にとっては×2ぐらいあるからな。だから責めたら駄目だ」と笑みを浮かべた。
俺は衝撃を受けながら勝を見ていた。
そうしていると更に衝撃的な事が起こった。
奏が口を開いたのだ。
「あの。...引きこもり、って」
「奏君。俺は味方だよ。...痛みが充分に分かるから。苦労するとかじゃない。...君等はそれでも真面目に生きているんだから」
「...」
奏はそれ以降喋らなくなった。
その姿を確認しながら勝は俺を見てくる。
「雄太。お前も大切な野郎だから。...なんかあったら遠慮なく相談してくれ」と言う。
勝の姿に俺は「お前らしくない」としか話せなかった。
「だろうな。俺らしくないわ」
「...でも感謝だ。お前がそう言ってくれて。奏も何かを得れたかもだから」
「だと嬉しいよ」
勝の姿を見る。
買い物袋を持っていた。
コイツはきっと。
「妹さんに買ったのか」
「流石はお前だな。...ああ。奏君。これやるよ」
そして勝はお菓子を手渡す。
それはしいたけの里であった。
目を輝かせた奏は勝に「ありが、とうございます」と言う。
それから勝はその顔を見てから「じゃあな。邪魔したな」と言ってから去る。
俺はそんな勝の背中に「すまんな。学校でジュースでも奢るから」と声をかけた。
勝は俺を見てから「おう。じゃあまた学校でな」と笑みを浮かべて去って行った。
勝がそんな人生に遭遇しているなんて思わなかった。
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