金持ち学園inスピンオフ
いとこんどりあ
1.甲斐の中学時代(甲斐×万里江)
※時期的に四天王と出会った頃
くそ。なんで俺がこんな目にあわなきゃならないんだよ。
この台詞をぼやくのはこれで通算何回目だろうか。いや、もう数えるのも億劫だからそんなこたァ別にいいんだけれども、とにかくこれだけは言いたい。
四天王と親衛隊よ、くたばれ。
本日も親衛隊共に追い掛け回されるで、好きでもない四天王に関わるなとか生意気だとかある事ない事難癖つけられて過ごしたくだらん一日だった。
俺ってつくづくつまんねー日々過ごしているよなと悲しくなる思いである。ただ平和に学園生活を謳歌したいだけなのに、神様って不公平なものだ。
あーとにかくなんかいい事ないかなー。
放課後の廊下をぶつくさ考えながら歩いていると、向こうの方で小柄な教師が顔色悪そうに口を押えているのが目に付いた。
「万里ちゃん先生、大丈夫か」
開星には四天王の下僕化したようなロクな教師がいないが、彼女は違う。
中学時代の担任であり、今も俺を理解してくれる現担任の先生。
俺はさっと腰を支えた。
「ごめんなさい……架谷くん。いつもの発作だから大丈夫。座ってればすぐ治るから」
そう言いつつも、とても大丈夫とは思えないくらい呼吸が荒かった。
先生は昔から体が弱かったなあと思い出す。それでも生真面目で生徒のために体を張っていつも頑張ってくれている。この金持ち学園という特殊な学園でさえも生徒と真摯に向かい合おうとしている貴重でまともな教師だ。
顔色は悪いけれど、端正で童顔な顔だち。肌理の細かい白い肌に、薄ピンクの唇。モスグリーンの髪色に黄金色の瞳。
本当に教師だろうかってくらい幼い顔つきだけれど、それだけじゃなくてまるで清廉という言葉が俺の中でぱっとイメージされる。
「じゃあ、とりあえずあそこに行こう」
支えつつ、向こうに自販機などがある小さな休憩所を指さす。
「で、でも……大丈夫で「いいから」
「体調が悪いのに今は躊躇っている暇はないって。よっと」
「あ、ちょ……!」
俺は問答無用で先生を横抱きにして持ち上げた。思った以上に軽くて驚いた。
「っ……」
先生は恥ずかしそうに顔を赤くさせて俯いている。
あーそりゃそうだよな。生徒に抱き上げられたから慌てるよな。でもはやく安静にさせてやりたいと思ったから仕方がないだろ。
休憩所は誰もおらず、そっとソファーに座らせた。
しばらく苦しげに呼吸を繰り返しつつ肩を上下にさせていたが、次第に呼吸も落ち付いてきて、顔色も徐々に赤みを増してくる。
汗だくで喉も乾いていそうだからと自販機でミネラルウォーターを買って差し出す。
「ごめんなさい。本当にありがとう。世話になりました」
先生は少しだけミネラルウォーターを口に含んで微笑む。
「いいんだよこれくらい。あんな苦しそうなのに放っておけないし。誰かが困ってたら助けろってのが俺の両親の教えでもあるし、あんたの教えでもあるだろ」
「そう、ですね」
「そういう困っている人を放っておけない所を見ていると、先生の中学時代を思い出すよ。あの時もあんたはこうだったなって」
「中学時代……そうですね。架谷くんがやんちゃをしすぎて私が頭を下げ続けていた記憶が一番印象的です。入学当初に始まり、警察に厄介になったりとか……もうあらゆる先生を困らせる大名人でしたねあなたは」
「おほほほ。そんな事を言われると照れちまうなぁ」
「褒めてませんからっ」
あの時の俺はいろいろ悩んでバカやって、警察のお世話にもなって、先生にもいろいろ迷惑かけたなあ。ついでに健一にも。
佐伯先生……いや万里ちゃん先生。
彼女と出会ったのは中学一年の春のことだった。
俺は中学に入学して間もない頃、それぞれが友達という名のグループが出来ているのに俺は完全にそれに乗り遅れてしまっていた。
つまりは入学早々にボッチになってしまっていたのだ。
グループを作れとか、昼休みの時間のメシタイムとか、俺は常に独り。
クラスのみんなは早々に仲間同士で昼飯を楽しげに食っている中で、取り残される俺はどうしたものかと思う。小学校の頃は給食の時間は班ごとに分かれて嫌々一緒に食っていたが、中学は好きな者同士のグループで机を合わせて食うのが主流らしい。カルチャーショックとはこの事だ。
ずっとボッチだったから友達を作るなんて俺としては今更ながら難しい。
まあ、ボッチでも別にいいんだがね。慣れてるし。
大体友達ってどうやって作るんだっけ?今まで友達なんていなかったからワカンネ。キモオタに友達なんてネットでしかいねーんだわ。
ってことで、相変わらず入学してからボッチな俺は、教室を出た中庭で弁当を食う事にした。
教室でみんな仲間内で食ってる中で、一人で無念無想しながら食うなんて上級テクニックを俺は持ち合わせちゃいない。寂しくないと言ったらウソであるからな。
朝早く起きて作った弁当は、某モンスターをゲットするアニメのチューチュー言うアイツを真似たキャラ弁だ。これでも料理は小学校時代から得意で掃除洗濯も好きな方である。我ながら女々しい特技だ。恥ずかしい。
母ちゃんが家事全般ドヘタでドジなため、小学校低学年時代から毎日俺がやらなきゃとか思ってたら必然と料理スキルがあがっていた。ちなみに裁縫や刺繍や編み物だって十八番である。
『ふむ、我ながらいい出来だな。もぐもぐ』
朝練後に作った弁当は短時間で仕上げた物の割にはいい方だ。インスタとやらにあげても遜色はないだろう。いいねたくさんもらえそうだ。
寝る前に俺が家族全員の朝食と弁当の仕込みをしている。夕方はばあちゃん担当。自主練の後にやっている事だから少しきついが、これもじいちゃん曰く『修行だと思え』と言われた。おかげで修行でクタクタな時はゲームができないのが不満である。
しばらく弁当を食いながらスマホでエロゲアプリをしていると、向こうで数人の気配を感じ取った。向こうの裏庭の壁際にざっと六人程だろう。
多分動きや下卑た笑い声からするとここら辺を牛耳る不良共か。その不良五人が一人を取り囲み……む。これは俺が小学校時代に経験したあれか。フクロにされているのか。
ちっ……どこに行っても威張る勘違いバカはいるようで面倒くせぇな。仕方ない。俺も経験者だし、放ってはおけない。俺にもちゃんと両親の固有スキル【お人好しの血】が引き継がれている様だ。
『す、すいません!どうか、ゆる、ゆるじ……ぐっ、あ』
『許すはずねぇだろ?焼きそばパン買って来いって言ってたのになんでコッペパン買ってくんだよ!ざけんなよォ!』
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