第3話「剣術について」
剣術や魔術があると知ってから三年が経った。
三年前よりも徐々に体を鍛えているおかげか十分走れるし、二キロの重さなら持つことができる。
だがこの筋力で剣を振るには、最低でも後2年は掛かってしまう。
時間は有限、待ちきれない。
そう思った俺はアフルレットに鍛えてもらうことにした。
ラウロ:「父様、僕も剣の修業をしたいです」
アルフレット:「え!!、マジで」
アルフレットは面食らったように驚いていた。
そりゃそうだ、三歳の息子がいきなり剣を習いたいなんて言ってきたら俺も驚く。
けど、今は目的を達成するために彼の意志は無視させてもらおう。
ラウロ:「まだ、早すぎるということでしたら体を鍛えたいです」
現役の剣士の下で修行をする、異世界の強さを知らない俺が取れる最善手。
アルフレット:「ラウロ、お前」
アルフレットは何故か涙ぐんでいた。
どうしてだ?
彼の感情を理解できず、何度も頭を回転させ思考する。
うん、わからん。
いくら考えてもわからなかったので、近くにいたイケメンエルフ執事のシルバリルに聞いてみた。
正直、こういう人を思いやれる”善人”の思考はわからない。
ラウロ:「ねえシルバリルさん、何で父様は涙ぐんでいるのですか?」
シルバリル:「坊ちゃま、それはですね」
どうやらアフルレット、いや両親たちは勘違いしていたようだ。
4年前、あの時俺の顔が驚きと興奮に満ちていたことを彼らは感じ取っていたらしい。
そこまでは良かったんだが、それが自分たちが振っていた剣ではなく。
母エミリオが放っていた魔術に向けていた顔だと思っていたとのこと。
だから3年前から夜な夜な会議をしてたらしい。
確かに魔術を見て驚きはしたけどやめてよね、俺は魔術以上にお前らの剣を見て興奮してたんだぜ。
ただ言わないとわからないことだってある。
ラウロ:「父様、確かに魔術に驚きはしましたが、それ以上に剣に心惹かれたんです」
アルフレット:「そうか、でもお前あの時のことは覚えていないだろ」
ラウロ:「覚えてますとも」
それからあの日のことを事細かに話した。
アルフレット:「ほ、本当に覚えている、もしかして天才?」
ラウロ:「天才ではありませんが、企業秘密です」
アルフレット:「??、それが何なのかわからんが、まあいいか」
アルフレットは泣きそうな顔から一転、晴れやかな笑顔に変わった。
が、隣にいるエミリオはアルフレットとは真逆で涙を流していた
えぇ~、嘘だろ。
彼女が泣いていることに気付いたアルフレットは慌て、必死に落ち着かせると一言。
アルフレット:「わかった、お前を鍛え剣を教えよう」
ラウロ:「ありがとうございます」
この一言で会話が終わると、俺はアルフレットと共に体を鍛え始めた。
今日の鍛錬
腕立て伏せ:20回
短剣を持った状態でスクワット:30回
走り込み:2キロ
数十分後、鍛錬を終えると全身が痛い。
ズタズタな筋肉は動かすたびに鈍器で殴られたような鋭い痛みが俺の意識を打ち付ける。
3年間、剣を振れるように鍛えていたが意識が甘かった。
自分の甘さに怒りと同時に嬉しさもある。
だって、自分をもっと追い込めると証明できたから。
それがわかっただけでも今日の鍛錬はズタズタな筋肉以上の成果が得られたと言えるだろう。
そう思っていると
アルフレット:「よしラウロ、お前はここまでだ」
ラウロ:「わかりました」
アルフレット:「お‼素直だな」
っと食いつくと思ったのか、アルフレットは予想外な返答に驚いていた。
ラウロ:「もっとやりたいですが、ここで体を壊したら目も当てられません」
アルフレット:「そうだな、冷静でいいことだ。なら、後で剣術について教えてやるよ」
その言葉を聞いた俺は”やっと剣術について知れる‼”と思い。
嬉しさのあまり大声で”ありがとうございます‼”と言ってしまった。
少しだけ、恥ずかしい。
それをアルフレットは満面な笑みで見送る。
家の中に入るとレリアが風呂の準備ができたと言ってきたので、俺はその言葉に甘えた。
「わかりました、お風呂ありがとうございます」
返事と共に風呂が
扉を開け、そこに居たのは裸のエミリオだった。
前世では基本一人で風呂に入っていたから、俺は心の中で盛大に驚く。
だって、美人な女性が
前世で女性と縁がなかったから、だいぶ恥ずかしさを感じてしまう。
頭の中でグルグル考えていると当然のことに気がついた。
自身が3歳のガキだったことに。
そう思うと彼女が部屋にいるのは普通だと思い直し、俺は服を脱ぐ。
途中、エミリオがアルフレットとの鍛錬について聞いてきた。
エミリオ:「ラウロ、主人との鍛錬道だったの?」
ラウロ:「体を限界まで鍛えれて楽しかったです」
嘘のない純粋な答えに彼女は衝撃な一言をいってくる。
エミリオ:「私はね、本当はあなたに剣を持ってほしくないと思っていたの」
ラウロ:「どうしてですか?」
暖かい水で俺の体を拭きながら、エミリオは痛烈な言葉を言ってくる。
美人な顔を少し曇らせて
エミリオ:「剣っていうのは危ないのよ。当たれば体は切れてそこから血が流れたり、最悪死んでしまう。」
彼女の言うことは正しい、剣はどう取り
正しい、正しいが一つ彼女の考えには抜けがある。
ラウロ:「そうですか。ですが、剣は奪うばかりではないと思います」
そうだ、剣は俺に”輝き”を与えてくれた。
だが、今彼女の言葉を受け入れたら、俺はあの時の決意を輝きを自分で否定することになる。
ーーーそれだけはダメだ。
あの決意は本物だ。
それを否定するなら、俺は生きている意味がない。
ラウロ:「剣は確かに人を傷つける道具です。ですがその剣で大切なものを守ることだってできると思います」
ラウロ:「母様もそうだったのではないのですか?」
エミリオ:「っ‼、そうね」
俺の言葉にエミリオは少し驚きの表情が、すぐにその顔を微笑みに変えた。
どこまでも柔らかなで美しい笑みは聖母を
エミリオ:「私も誰かを守るために剣を振るっていたわね」
エミリオはどこか遠くの、まるで過去を振り返るような顔をしてそういった。
そして彼女は過去を振り返るような顔から一気に真剣な顔に変え
エミリオ:「私と約束をしてほしいの」
突然エミリオは俺に突拍子のないことを言ってきた。
ラウロ:「約束ですか?」
俺は頭に疑問符を思い浮かべながら、言葉を返す。
「ええ、例えいくら傷ついて挫けそうになっても、”大切なもの”のために剣を振るうって」
その言葉は剣を握る者たちの誰もが心に刻む約束だった。
それが悪でも、正義でも
ラウロ:「わかりました、約束します」
真剣な彼女に心の底からそう答えた。
俺は軽く約束を取り付ける奴が嫌いだ。
なぜなら約束とは本来とても重く、重視しないといけないのだから。
それを軽く、あまつさえ”地面に落ちている
だから、彼女の真剣な顔から出た約束を俺は嘘偽りなく答えた。
ラウロ:「僕はどんな時でも約束を忘れず、剣を振るいます」
俺の言葉に彼女は一寸の後悔のない、どこか
エミリオ:「ありがとう」
最も相手に伝わる感謝の言葉を放ってくる。
その日の夜、俺はアルフレットとエミリオに剣術について教えてもらった。
まず、この世界の剣術には大きく四つの流派がある。
次元闘神流
剣や素手での攻めの戦闘を繰り広げる流派。
剣と言ったが人によってはナイフなどを装備するらしいから、”古武術”に近い流派なのだろう。
夜桜心眼流
剣を使い主に居合やカウンターを使い、軽やかな足運びで受けの戦闘をする流派。
闘神流の真逆の流派で前世でいうところの”柳生新陰流”だと思られる。
魔道流
魔術と併用して多彩な戦闘をする流派。
どの流派よりも手数が多く予想は不可能で、剣に魔法を宿らせ火の斬撃を飛ばしたりするらしい。
歪曲流
特殊な武器を使った戦闘をする流派。
アルフレット曰く、化物みたいに強い剣士は大体この流派を習っている確率が高いとか。
ガ○ブレードや合○剣みたいな武器を使う剣士ということだろうか?
ちなみにアルフレットは”闘神流”をエミリオは”夜桜流”を習っているらしい。
それと、この世界には強さを表す指標みたいなやつがある。
下から
初級→中級→上級→英雄級→逸脱者→皇帝級→神話級。
これら七つの指標がある。
この指標は剣術、魔術だけでなく、本人の総合的な強さもこの指標で測られるらしい。
ちなみにアルフレットとエミリオは逸脱者とのこと。
それを聞いた俺は心の中で「スッゲエ~」と素直に感心した。
実際どれくらい強いか知らんけど、上から三つ目だぜ。
そう思いながら俺より身長が高いアルフレットを下から見上げる。
そこには自信満々というか「どうだ、すごいだろ」と自慢している顔をした父親がいた。
その顔を見た俺は”これも父心なのかな?”と思いながら「すごいです‼」と言った が、いかんせん、この強さの指標がわからない。
いや、上の方になれば名前的にもこれくらい強いんだろうと想像はできる。
しかし、初級から神話級までの強さの基準が謎だ。
ラウロ:「母様、初級から神話級までの違いが判らないのですが?」
その言葉を聞いたエミリオは
エミリオ:「そうね、初級は一般人よりかは強いわね」
それから、彼女はスラスラと初級から神話級までの強さの違いを教えてくれた。
前世の強さで訳すと、中級は”完全武装した兵士”より強い。
上級は”完全武装した小隊”より強く、人の身ではここまでしか太刀打ちできない。
英雄級の強さは”戦車一機”より実力があり、この階級になると人の次元を超える。
逸脱者は”十機の戦車もしくは戦闘機”より強く、逸脱者は前世のアニメに出てくる超人レベルに強い。
皇帝級の強さは”国一つを一夜にして堕とせる”強さ、エミリオ曰く常識が通じない埒外とのこと。
神話級、名前の通り神や神秘が濃い生物が到達する領域。
個々の強さは”星そのものを簡単に消滅”させる実力で概念に干渉する能力を持ったものが多い、別次元の強者。
異世界の英雄や神話に登場する人物は大体この階級らしい。
ーーーそれを聞いた俺は興奮した。
世界の強者に、そして思った俺もそれくらい強くなりたいと。
ラウロ:「皇帝級の人たちは国の王様になっていることが多いぞ」
満面な笑みでアルフレットがそういった。
彼が言っていることが本当なら、皇帝級の実力者に会いたいなら謁見をしたらいいのか。
そして話しているうちにまた新しい疑問がわいたのでエミリオに聞いてみる。
ラウロ:「そういえば、母様たちはどうやって自分の実力が逸脱者だと知ったのですか?」
息子にそう聞かれたエミリオは口をごもらせ、とても恥ずかしそう話した。
エミリオ:「少し野蛮だけど、私と同じ戦い方をする逸脱者に戦いを申し込んで倒したのよ」
それを聞いた俺は心の中で「え‼」と思った。
いつもお
隣にいたアルフレットも
アルフレット:「エミリオの言うとおり、俺もそうやって逸脱者になったな~」
そうかここは中世だ。
この世界において自分たちの実力を知る方法はそれしかないのかもしれない。
現代に染まり切っていた温い思考を改め、常識を中世に切り替える。
そして俺はまず最初に上級レベルの剣士になろう決めた。
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