第6話 事情聴取②
中谷はスマホで所轄の刑事に警察署に牙城を連れてくるよう頼んだ。
中谷は10分の休憩の間は伸びをしたり水を飲んだりして、疲れを少しでも取るような行動をする。その合間にもパソコンを使って先ほどの聴取をまとめている三笹に中谷は尊敬するしか無かった。
「三笹、お前ちょっとは休めよ。休んだ方が効率が上がるからな。」
「心配ありがとうございます。でも、大丈夫です。」
中谷は良き相棒を持ったなと思った。彼がいなかったら解決できなかった事件もある。2人で協力して事件を早期解決に導くということは素晴らしいと思う。
ドアがノックされて、男が警官に付き添われて部屋に入ってきた。男はとても緊張しているようだった。
「こんにちは。私は警視庁から派遣されました中谷と申します。そんなに緊張せずに、肩の力を抜いて落ち着いてください。あくまでお話を聞きたいだけです。」
「は、はい、わかりました。」
「こんにちは。私はこの事件で警視庁から来ました中谷と言いますよろしくお願いします。あなたのお名前と会社での役職を教えていただいてもいいですか?」
「わかりました。僕は翼生命保険会社で一般社員をしている岸上と申します。お願いします。」
「では、事件の内容を聞きたいのですが、ちょっと世間話でも。最近暑くないですか?今は10月なのにまだ夏みたいな暑さしてますよね。」
「あ、そうですね。まだ暑くて、いつ衣替えしようかと考えています。」
「確かにそうですよね。でも、夜はだいぶ寒くなりますよね。昨日の夜とかどうでしたか?寒いけど外出したりしました?」
「昨日は外に出ていないので寒いかどうかわかりませんでしたね。あ! これってアリバイ確認ってやつですよね!」
「そうですね。どうかされましたか?」
「あ、あの僕、ミステリー好きで。こういうのよくドラマとかで見ます! こんな感じなんですね。もっと刑事さんは怖いのかと思ってた。」
「そ、そうなんですね。刑事は怖い人ももちろんいますよ。私がたまたまそんなに怖くないだけです。では、改めてアリバイ確認をします。」
「あなたは草津さんが殺害されたと考えられている、19時から22時の間に何をされていましたか?」
「はい! 僕はその日の夜、家にいたのでアリバイはありません。これって容疑者リストに入っちゃいます?」
「そうですね、アリバイがないなら入るかもしれませんが、あなたに明らか動機などが無ければ入らない可能性もあります。そういえば、現在スマホをお持ちですか?」
「はい、あります。何か関係があるのですか?」
「スマホのGPSを解析してその時間にどこにいたのかを確認したいのですが、いいですか?」
「まぁ、いいですけど。」
岸上がスマホをポケットの中から取り出して中谷に渡す。中谷は預かったスマホを三笹に渡した。
「でも、それってスマホを家に置いて犯行に及んでいたらわからないんじゃないですか?」
「そうですね。その場合はわからないので、あくまで参考として捜査に活用させていただきます。次に、あなたは草津さんをどう思っていましたか?」
「草津さんはとても優しくて、後輩思いの方でした。あんな優しい人が殺害されたと聞いてとても驚きました。」
「とても優しい方だったんですね。では最後に、あなたのデスクについて質問させてください。今日の朝、あなたのデスクを見たのですがあなたのデスクと髙我さんのデスクに靴で蹴られたような跡があったのですがその跡は前からありましたか?」」
「いや、特になかったと思います。」
「そうですか。ありがとうございます。」
「取り調べは以上にしようかと思うのですが、何か言っておきたいことや伝えておきたいことなどありますか?」
「いや、別にないです。」
「わかりました。では、これで終わります。」
中谷はドアをノックして外で待機している警官に取り調べ終了の合図をして、岸上に付き添って部屋を出てもらった。時計は16:52を指していた。
次は先ほどの男と同じように極度に緊張している男が部屋に入ってきた。
「こんにちは、私は警視庁から来た中谷と申します。そんなに緊張しなくてもいいですよ。肩の力を抜いて話しましょう。まず、あなたの名前と会社での役職を教えてもらってもいいですか?」
「わかりました。僕は髙我と言います。会社ではまだ一般社員でした。もう少ししたら、岸上と一緒に昇格するんです。」
「そうですか。すごいですね。あなたは岸上さんと仲がいいのですか?」
「まぁ、あいつとは大学の最初に知り合ってからずっと仲がいいので同じ会社に入社したって感じです。」
「いいですね。」
「では、事件についてお話を伺っていきます。最初に、今回の被害者の草津さんが亡くなったと考えられている、17時から22時の間に何をされていましたか?」
「昨日ですよね?たしか、家でゴロゴロしてました。たまに岸上とLINEするくらいで特に何もしていませんでした。これって、なんかまずいですか? 岸上がミステリー好きなので色々話を聞くんですよ。どうなんですか?」
「ま、まぁ、アリバイがないということになりますが、あくまで容疑者の1人になるだけで行動が制限されるようなことはありません。」
「そうですか。それならよかった。」
「次に、あなたから見た草津さんの印象を教えていただけますか?」
「わかりました。端的に言うと、とても優しい人でした。俺と岸上は入った時からとても優しくしてもらいました。」
「そうだったんですね。では最後に私は今日の朝あなたのデスクを見てきたのですが、あなたと岸上さんのデスクだけ靴で蹴られたような跡があったのですが何か心当たりはありますか?」
「え、いや、特にないです。昨日まではそんな跡がなかったと思います。」
「そうですか。わかりました。」
「ではこのくらいで終わろうかと思うのですが何か言っておきたいことや、伝えておきたいことなどありますか?」
「いやぁ、特にないですね。」
「わかりました。ではこれで終わりますね。」
中谷は外の警官に合図を出した。
中谷は2人の聴取が終わって、三笹の元へ行く。
「今の2人、殺してなさそうだな。」
「確かにそうですね。今回の被害者は新人の教育係だったそうなのでやはり慕われているのですね。」
「そうだな。今、一番怪しいのは副社長の誰だっけ?」
「二見さんです。」
「そうだ、二見だったな。その二見が言っていた牙城って言う男が怪しいよな。」
その時、扉がノックされた。時計は17:24を示していた。
「やばいな。今日中に間に合うか?」
少し痩せ型の男が警官に連れられて部屋に入ってきた。
「こんばんは、警視庁から来た中谷と言います。あなたのお名前と会社での役職を教えてもらってもいいですか?」
「こんばんは。私は翼生命保険会社で一般社員をしています野本と言います。」
「よろしくお願いします。まず、最初に被害者の草津さんが殺害されたと思われている17時から22時の間に何をされていましたか?」
「確か、斎木くんとカラオケに行っていました。」
「詳しく店名や服装も教えていただけますか?」
「はい、場所は澤岩駅のまねきねこです。その時の服装は、灰色のシャツで下は黒色のパンツだったと思います。」
「わかりました。ありがとうございます。その時一緒にいたのは斎木さんだけということで宜しいですか?」
「はい、そうですね。」
「よろしければその時の斎木さんの服装も宜しいですか。」
「確か、黒のパーカーとジーパンだったと思うんですけど。」
「ありがとうございます。失礼ですが、現在おいくつですか?」
「あ、36です。」
「この会社一筋なんですか?」
「いえ、この会社に入る前は色々な職を転々としていました。私は残念ながら、最終学歴が高卒なので大手の面接に行くと、大卒の学生に負けてしまうんですよね。プラモデルを作る仕事をしたり、普通にスーパーで働いたりしていました。」
「そうだったんですね。最後にあなたは草津さんをどう思っていましたか?」
「私は感謝していますよ。職が無くて固定職を探していた時に採用してくださったのが彼でしたから。」
「ありがとうございました。このくらいで事情聴取を終わろうかと思うのですが、何か私に伝えておきたいことや、言っておきたいことはありますか?」
「私はアリバイがあると言うことでいいのですか?」
「それはまだ、確認しないとわかりませんが防犯カメラを確認して姿が確認されたらアリバイがあるということになります。」
「わかりました。ありがとうございます。」
「では、これで終わります。」
「ありがとうございました。」
中谷はドアをノックして外の警官に合図した。
男が外へ出ると、中谷は三笹のところへ向かった。
「どう思った。アリバイがあることをめっちゃ確認したがっていたけど、嘘ではなさそうだったな。」
「まぁ、口調的に嘘ではなさそうでしたよね。あとは現場で確認して本当かどうか確かめるだけです。」
時計は17:45を示していた。
「この感じだといけるな。」
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