第3話 刑事としての手助け
仲田は中谷が入ってきて驚いたが、入ってきた中谷に
「警視庁からここまでありがとうございます。中谷さんの功績は聞いております。中谷さんがいれば事件の解決は間違い無いですね。僕は手伝わせていただきます。」
仲田は自分で解決したかったが、最近警察の中でも有名になりつつある中谷がこの事件の担当をするとなれば話は別だ。中谷の手法を近くで学んで今後の刑事人生に活かすことができる最大のチャンスなので、今回の事件は中谷に任せることにした。すると中谷が、
「今回の事件はお前が解決まで持っていけ。俺は少しアドバイスや考えるコツなどを言うが、ほとんど口出しはしない。」
仲田は驚いた、まだ刑事になって一度も事件を解決していない新人に全てを任せるといってきたのだから。でも、中谷は自分のことを思ってくれていってくれていると思い
「わかりました。頑張ってみます。」といって現場を確認し始めた。
「早速口を挟んで悪いが、この現場の状況から分かることを私に話してみてくれ。」仲田は現場をもう一度確認してから話し始めた。
「まず事件現場は畳に血痕が残っていることなどから考えて、和室です。次に犯人は背後から石で撲殺したあと、なぜか浴槽に運んで風呂をためて被害者の顔を湯船に沈めた。3つ目は血痕が浴室とは反対側のキッチンに伸びていたと言うこと。犯人が運んだとしても不自然という点。最後に、そのキッチンの真ん中に塩が置いてあり奥に砂糖が押しやられていたという点です。」仲田が一通り話し終わると中谷は頷きながら
「そのくらい着眼点が良ければ刑事には向いていると言えるだろう。しかし、そんな君でも一つ見逃していることがある。それは、この現場に落ちているガラスの一部が持ち出されれいるということだ。床一面にガラスが散らばっているが、一箇所だけ明らかに少ないところがある。これは犯人が持ち去ったとみて間違いないだろう。」仲田は言われたところを見てみると確かにガラス片が少なくなっている。
仲田は中谷の観察能力がすごいことに気づいた。少し前から現場に来ていた自分でも見逃してしまっていた少しの異変を中谷は入ってきてすぐに気づき、その原因まで予想していた。仲田は、中谷と以前会った時よりも圧倒的に賢く、刑事としてのランクがグッと上がっていることに気付かされた。自分も中谷みたいに、現場に入って細かいところまで観察し犯人を追い詰めようと思った。
仲田は中谷と一通り現場を見て回ってから外に出ると、すでに夕方になっていた。西の空は見たことがある紫の空になっていた。
仲田は少し時間が遅いが今から事情聴取を始めることにした。まず、学校の校長に電話をして被害者のことについて聞いた。その電話で分かったことを手帳に書き込んだ。
・被害者は几帳面な性格、全てを最後までやる
・不良グループのトップ1〜3をよく怒っており、前日も怒っていた
・昨日の帰り、何か様子がおかしな感じがした
・教育委員会長から辞めるように言われていた、揉めていた
仲田は被害者によく怒られていたという3人を呼んだ。今回は、学校が5日間臨時休校になったため学校を拠点にして事件を解決に導くことにする。3人の親は全員許可してくれたため、近くの公園で遊んでいるという目撃情報が入った3人を学校に呼び出して事情聴取をすることにした。
仲田は門を通って学校に入った時にとても懐かしい感じになった。仲田はこの学校の卒業者であり、副校長が殺害された時に事情聴取を受けた1人でもある。仲田は自分が事情聴取をされた1年C組で事情聴取をすることにした。
最初に部屋に入ってきたのは村野だった。被害者が殺害されたことはまだ公開していないため、彼は被害者が何者から殺害されたと聞くととても驚いていた。が、
「あのジジイが死んだのか、まぁうざかったしな」被害者を冒涜するような言葉を呟いた。
村野がなかなかにひどい言葉を使って話したため、ここでは仲田のメモだけを書いておく。以下の2人も同様の理由でメモだけだ。
村野直孝(18)花上校生 右利き
・被害者は少しのことで叱ってくるためうざかった、きらいだった
・昨日も最後まで自分だけが怒られた
・右手の人差し指怪我、手の腹から手のひらにかけて大きめの絆創膏
三地峯介(18)花上校生 右利き
・被害者はすぐに怒ってくる、気持ちが悪い、印象は良く無い
・最近はよく怒られていた、ここ1週間くらいはイライラしていた
・左手の小指の指先に絆創膏
室川勤(18)花上校生 左利き
・被害者をできるだけ避けていた、問題を起こすと必ずいる
・最近はイライラしていて会うたびに難癖をつけて手持ち検索をしてきた
・左手の側面に大きめの絆創膏があった
事情聴取が終わると空は暗くなっていた。仲田は事件現場で中谷が最後に指摘したガラス片のことを思い出し、気づいたことがある。それは犯人はガラスを破る時にその破片で怪我をしたのでは無いかということだ。上のメモには傷の跡がきちんと書いてあるが、後から確認して書いたものである。この3人の中で1人だけが怪我をしていれば疑いをかけることができるが、3人全員怪我をしていたため容疑者を傷の跡で絞ることができなかった。
被害者と揉めていたという教育委員会委員長はアリバイが確認できるものがあり、疑いは晴れた。
仲田は何かを見落としている。そのことに中谷は気づいているが、あえて言わない。しかし、犯人を泳がせすぎるのも良くない。仲田は解決できるのか。
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