百年祭〜A Centenary Celebration〜

迅速な星

4月24日・プロローグ

4月24日、部屋の窓から見える例年より少し遅く咲いた桜が散った。

僕は窓を開けてベランダに立つ。


高校生になって一年。

つまらない自分に友達ができるわけもなく、勉強もつまらない。興味のある部活もない。将来の夢や目標もない。僕の未来は霞んでいた。未来が不透明すぎて漠然と不安感が僕に付き纏っていて何にしても幸福感を感じることができなかった。これ以上生きる意味があるのかわからなくなった。どうせ幸せは感じられない。


もう死んでも悔いはないと思った。


ああ、そうだったとしても僕は二つ上の兄と両親を残して死ぬのか。僕が覚えていないころ10歳上の姉も高校生の時死んだらしい。兄としては1人になるし、両親は2人も子供を失うことになる。2人目は身を投げる形で。本当に申し訳なかったがもう思考を放棄したかった。


散りゆく桜を見て最期にこんなことを思い出した。中学の図書室で読んだ一節。昔、こんな言い伝えを聞いたことがある。世紀が移り変わる年、桜が散った頃、生と死の狭間の世界には誰もが幸せになれるという祭りがあるとかないとか。


もちろんただの迷信なんて信じるほど自分も幼くもないが、それでも最後くらいと幸せを無意識に求めていたのだろうか。


『××00年』。

今世紀始まりの年の初夏の出来事。

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