放課後の部室、先輩と二人で。
三月
第1話
入学式が終わり、ホームルームが終わったあとの教室で、俺、東堂律はぐーっと背伸びをした。
「はぁ…やっと終わった…」
真新しいカバンに説明で使われた資料をしまっていく。
早速課題が出され、憂鬱な気持ちで帰宅しようと席を立ったところ、早速仲良くなったらしい陽キャと呼ばれるような人達が、
「この後どうする〜?」
「腹減ったしメシ食わね?」
「いいね!じゃあその後部活の見学に行くのはどう〜?」
「いいじゃん!」
「オッケー!決まりね!」
と話しているのが聞こえてきた。
(部活か…)
高校生活といえば部活で青春!みたいなイメージがあるかもしれないが、俺はどちらかというと静かに過ごしたかった。
しかし、残念なことに校則で何らかの部活には入らなければならないらしい。
(どうしたものか…)
とりあえず、説明の時に貰った資料の中から部活動紹介について書かれた紙を引っ張り出すと、
(まず、運動部は除外。体を動かすのはそんなに好きではないし、体格がいいから運動ができると決め付けられるのはもうコリゴリだ…
となると文化部になる訳だが…静かにしていても問題なくて、読書ができて、部員数が少ない。そんな部活あるか?)
と考えていると、隅の方に小さく、
『読書部 北校舎4階 資料準備室で活動中 部員求』
と書かれているのを見つけた。
(読書部?そんな部活があるのか…読書部というからには読書をしてれば文句は言われなさそうだし、そこまで会話をすることもないだろう。
よし、ちょっと覗いてみるか。)
俺の理想に合っていそうな部活を見つけ、少しだけ嬉しい気持ちになりながら、資料準備質へ向かうため、荷物をまとめ始めた。
(Side???)
「はぁ〜…今年からは私一人かぁ…
3年生の先輩達が卒業しちゃって、2年生の部員がいない、しかも1年生の部員は私だけだったから、分かってはいたけど…
なんかこの部屋も広く感じるなぁ…」
そうひとりごとをつぶやくのは綺麗な亜麻色の色素が薄い髪の毛に、同じく亜麻色の目をした小柄な少女だった。
折りたたみ椅子に腰掛け、机に突っ伏しているため、その長い髪が顔を隠している。
「勧誘はしてみたけど、みんな大っきいし、周りの声が大きいしで、全然気づいてもらえないし…
まぁいつものことなんだけど…」
どことなく哀愁漂う雰囲気を漂わせる少女と、ある少年が出会いを果たすまであと少し。
(Side律)
「資料準備室は…ここか」
律達が授業を受ける教室がある南校舎の反対側にある北校舎にやって来たが、廊下は閑散としていて、人の気配は全くと言っていいほどない。
(ほんとにこんな所で活動しているのか…?)
少し疑いながらも資料準備室の前までやってきた律は、扉に読書部と書かれているのを見つけ、意を決してコンコンコンとノックした。
「すみません…ここが読書部の活動場所で合ってますか…?」
恐る恐る扉を開けた律が見たのは、机に突っ伏している一人の少女の姿だった。
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