第16話「新たな仲間と町の発展」

 ガイオンと恋人同士になったことで、エルナの心はかつてないほどの安らぎと幸福感で満たされていた。それは彼女の聖なる力にも良い影響を与えたらしく、畑の作物はさらに豊かに実り、薬草園ではこれまで育てられなかった珍しい薬草まで育つようになった。

 町の発展も、ますます加速していた。

 辺境の豊かさと安全の噂は、国中に広まっていた。枯れゆく王都や他の領地に見切りをつけ、新たな生活を求めてこの地に移住してくる人々が後を絶たなかったのだ。

 鍛冶屋、パン屋、仕立て屋、宿屋……。様々な技術を持った人々が移り住んできたことで町は多様性を増し、さらに活気づいていく。

 そんな中、エルナにとって心強い新たな仲間ができた。

 一人はキールという名の若い薬師の青年だった。彼は王都の薬師ギルドに所属していたが、効果のない薬ばかりを作らせるギルドの方針に嫌気がさし、本物の薬学を学ぶためにエルナの噂を頼ってこの町へやってきたのだ。

 最初はエルナが聖女であるということに少し気後れしていたキールだったが、彼女の薬草に関する深い知識と、何より植物に対する真摯な愛情に触れるうち、すぐに心からの尊敬を抱くようになった。

「エルナ先生の薬草園は、まるで宝の山です! こんなに生き生きとした薬草、見たことがありません!」

 目を輝かせながら語るキールはレーナ老婆の後継者として、そしてエルナの右腕として薬の開発にその才能をいかんなく発揮した。彼の加入により、辺境の薬はさらに品質を向上させ、ドワーフたちからも絶賛されるようになった。

 もう一人はリリアという名の建築家の女性だった。彼女は王都の貴族たちの、見た目ばかりで住み心地の悪い屋敷を設計することに虚しさを感じていた。そんな時、人々が笑顔で暮らせる町が北の果てにあると聞き、単身この地を訪れたのだ。

 リリアは辺境の厳しい自然環境の中でも快適に暮らせる家の設計図を、次々と生み出した。ドワーフの技術を取り入れた頑丈な基礎、エルフの知恵を応用した魔法的な断熱構造。彼女が設計した家は冬は暖かく夏は涼しい、まさに理想的な住居だった。

「この町は、私の理想をすべて形にできる場所だわ。エルナさん、ガイオンさん、私にこの町作りを手伝わせてちょうだい!」

 快活なリリアの申し出を、二人は喜んで受け入れた。

 キールとリリア。才能あふれる二人の専門家が加わったことで、辺境の町の発展はもはや誰にも止められない勢いで進んでいった。

 ガイオンは増え続ける住民たちのために騎士団を増強し、町の防衛と治安維持体制を盤石なものにした。もはやこの町は一介の騎士団長が治める辺境の村ではなく、一つの都市国家と呼んでも差し支えないほどの規模と機能を持つようになっていた。

 エルナはそんな町の変化を、喜びと共に少しの戸惑いも感じながら見つめていた。

 自分がこの地に来た時、ここは人もまばらな寂しい村だった。それが今や、多くの人々が笑顔で暮らす活気あふれる町になっている。

「すごいな、エルナ。君がたった一人で始めたことが、こんなにも大きな実を結んでいる」

 町の中心に建てられた新しい広場を見下ろしながら、ガイオンが感慨深げに言った。

「いいえ、わたくし一人じゃありません。ガイオンがいてくれて、村の皆がいてくれて……そしてキールさんやリリアさんのような新しい仲間が来てくれたからです」

「それでも、中心にはいつも君がいた」

 ガイオンはエルナの肩を優しく抱き寄せた。

「俺は君と、君が作り上げたこの町を、命に代えても守り抜く」

 彼の力強い言葉に、エルナはこくりとうなずいた。

 この町は、みんなの町だ。王都に見捨てられ、あるいは自ら見切りをつけた者たちが、自分たちの手で作り上げた希望の町。

 この温かくて優しい場所を誰にも壊させはしない。エルナはガイオンの胸に寄り添いながら、改めてそう心に誓うのだった。

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