婚約破棄されましたが、隣国で愛されすぎて困っています

第7話 リヒトとの絆

展示会が成功裏に終わった翌朝、フェリシアはまだ心地よい達成感に浸っていた。隣国の貴族たちからの好評を受け、彼女が主導した商品の選定や演出は大きな成果を上げた。それでも彼女は、その成功に安住することなく、次の目標に向けて動き始めていた。

「まだ始まったばかり。ここで立ち止まってはいけないわ。」

フェリシアはそう自分に言い聞かせながら、展示会後のフィードバックを整理していた。

そんな中、リヒトが部屋を訪ねてきた。彼はいつものように穏やかな笑みを浮かべ、彼女の努力を労う。

「フェリシア、昨日の展示会は本当に素晴らしかった。君の力がなければ、あそこまでの成功はなかっただろう。」

彼の言葉に、フェリシアは控えめに微笑みながら答えた。

「ありがとうございます。でも、私一人の力ではありません。皆さんが協力してくださったからこその結果です。」

リヒトはその謙虚さに満足そうに頷いた。彼女の持つ強さと優しさを感じ取ると同時に、心のどこかで彼女をもっと支えたいという思いが強くなっていくのを感じていた。

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過去を乗り越えるための対話

昼下がり、リヒトはフェリシアを庭園へと誘った。色とりどりの花々が咲き誇る庭園を歩きながら、彼は彼女に話しかける。

「フェリシア、君がここで新しい道を歩み始めたこと、本当に嬉しく思うよ。でも、君の目にはまだどこか迷いがあるように見える。」

リヒトの言葉に、フェリシアは一瞬足を止めた。彼の言葉は核心を突いていた。

「迷い…確かにそうかもしれません。」

彼女は少しだけ視線を落とし、静かな声で続けた。

「過去の出来事が、まだ私を縛っているんです。アルヴィンやクラリスにされたこと…家族に見放されたこと。それらが私の心に重くのしかかっています。」

リヒトは黙って彼女の言葉を聞き、しばらく考え込むように空を見上げた。そして、優しい声で語りかけた。

「君がその痛みを感じるのは当然のことだよ。君はすべてを失い、傷つけられた。それでも、君はこうして新しい一歩を踏み出している。過去に縛られることは悪いことじゃない。むしろ、その痛みを力に変えることで、君はもっと強くなれる。」

リヒトの言葉は、フェリシアの心に静かに響いた。彼の目には一切の偽りがなく、彼女を心から信じ、支えようとする意志が感じられた。

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絆が深まる瞬間

夕方、庭園のベンチに座りながら、二人はこれまでの人生について語り合った。リヒトもまた、公爵家の跡継ぎとしてさまざまな重圧を背負いながら生きてきた。彼の経験談を聞くうちに、フェリシアは彼がただの優しい公爵ではなく、責任を背負い続ける強い人物であることを改めて知った。

「君が公爵としてこれほど努力しているなんて知らなかったわ。」

フェリシアは少し驚いたように言った。

「君に比べれば大したことはないよ。」

リヒトは謙遜しながら笑ったが、彼女は首を横に振った。

「そんなことないわ。あなたが支えてくれているから、私もこうして前を向けるのよ。」

彼女の言葉には感謝が込められており、リヒトの胸に温かいものを感じさせた。

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フェリシアの決意

その夜、フェリシアは自室でリヒトとの会話を思い返していた。彼が言った「痛みを力に変える」という言葉が、彼女の胸に深く刻まれていた。

「私はもう過去に囚われない。この痛みを乗り越え、新しい自分を築いてみせる。」

フェリシアはそう心に誓った。

彼女の中で、リヒトへの信頼と絆が確実に育っていた。それは単なる感謝の念を超え、彼女にとって大きな支えとなる存在になりつつあった。

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新たな挑戦へ

翌日、リヒトはフェリシアに新しい提案をした。それは、貿易事業の次の段階として、隣国の商人たちとの直接交渉に彼女を任命するというものだった。

「僕は君を信じている。君なら、きっと彼らを説得し、この事業をさらに成功に導いてくれる。」

リヒトの言葉に、フェリシアは自信を持って頷いた。

「やってみます。私ができる全てを尽くして。」

こうして、フェリシアとリヒトの間には、ますます深い信頼と絆が築かれていった。それは、ただの支援者と被支援者という関係を超えた、互いに尊重し合う特別な関係へと進化していく。

フェリシアの新たな挑戦は、彼女自身の成長だけでなく、リヒトとの絆をさらに強めるものとなる。そして、この絆が、彼女の未来にとって重要な役割を果たすことになるのだった。