【第1部完結済み】エレ レジストル〜最強悪魔と旅する生き残り少女の冒険録〜

月森かれん

プロローグ

 小高い丘に建てられた木屋の前で男女2人と少女が向かい合っていた。

3人とも目はオレンジ色で家族のようだが、両親の髪はオレンジ色に対し

少女の髪は水色だった。わけあって染めたのだろう。


 「本当にお母さんの言うとおりになっちゃうの?」

 

 声を震わせながら少女が言う。母親は悲しそうに目を伏せてゆっくりと首を縦に振った。そして少女に近づくと手に持っていたペンダントを首にかける。

 

 「ええ。残念なことだけどね。

 そのペンダントには私たちが持っている知識――魔法と薬の調合を見れるようになっているわ。困ったら使ってね。

……いい?エリス、私達との『約束』守れそう?」

 

 「頑張る……」

 

 「最後まで一緒に居てやれなくてごめんな、エリス。許してくれなくてもいい。

 ただ、お父さんとお母さんはいつまでもエリスのこと大好きだからな」

  

 「うん……」

  

 両親はそれぞれ少女を力強く抱きしめて、名残惜しそうに離す。

 少女は何度も振り返りながら丘を下っていった。

 

 

  

 その日の夜、木屋を騎士や魔法使い達が包囲した。

どこかの国軍のようで、想像上の生物を模した刺繍のマントを羽織っている。

いつでも戦闘になって良いように武器を構えている。

 騎士隊長らしき者が一歩前に出て叫んだ。

 

 「テオドール!居るのはわかっているんだ!

 降伏すれば命は助けてやる!」

 

 すると扉がギィと音を立てて開いて、少女の父親が姿を現した。戦意はないと両手を上げている。

 

 「どこの国の軍かはわからないが、従おう。

ただ、その前にこの家に最後の別れをさせてくれないか?」

 

 「家に別れだと?」

 

 「思い出があるんだ。もう2度と帰って来れないだろうからな。

頼む」

 

 騎士隊長は唸っていたが、目を逸らさない男を見て大きなため息を吐いた。

 

 「わかった。手短に済ませるんだぞ」

 

 「悪いな……」

 

 父親は一瞬不敵な笑みを浮かべ、騎士隊長に頭を下げると家の中に入った。

 中には少女の母親が木のイスに座っていたが、父親を見ると立ち上がって駆け寄る。

そして悲しそうに口を開いた。

 

 「……やっぱり来てしまったのね」

 

 「ああ。君の予知通りだ。本当にスゴイな」

 

 「感心されても困るわ。

それで、私たちは生け捕りかしら?」

 

 「そのようだ。相手は臨戦態勢だがな。少しだけ話したが、攻撃はされなかった。

 降伏したら命は助けてやるってさ」

 

 母親は諦めたように息を吐くと少しだけ笑った。

 

 「でも、従う気はないのでしょう?」

 

 「もちろん」

 

 「そう。……でもごめんなさい、エリスに魔力を渡してしまってほとんど無いの」

 

 母親の言葉を聞くと父親が豪快に笑いだした。

 

「ハッハッハ!俺達は最後まで気が合うな。俺も同じさ。

 自爆・・する分しか残ってない」

 

 「ふふふ、テオドールの魔力を国の思うように使わせてやるものですか!」

 

 「ああ!」

 

 父親が女に手を差し伸べる。母親は微笑みながらその手を取ったが、頬には涙が伝っていた。

 

「さようなら、エリス」

 

「後は頼んだぞ。…………いくぞ、《究極火葬アルティメットクリメイション》!!」

 

 2人の体から凄まじい炎と光が放たれ、丘をのみこんだ。

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