第4話 擬態
日常を何食わぬ顔で過ごしているみなさんと同じように、私も苦しいことがあっても嬉しいことがあっても何食わぬ顔顔で過ごしています。
仕事が早く終わった。
定時までダラダラ過ごせた。
上司に怒られた。
小さなミスを重ねてしまった。
残業が確定してしまった。
物を頻繁に落としては気分が下がる。
こんなことがあっても、帰る時には何食わぬ顔で、何もなかったただただいつもの日常の時間を過ごしただけみたいな顔をして、颯爽と電車に乗り込み、人でぱんぱん溢れた空間を耐え凌いで帰路に着く。
何かあったのにも関わらず、生きていたら良いも悪いも積み重ね繰り返しなのに、感情を表に出しすぎると変人という周りからは浮いて、冷めた目で見られる存在へと様変わりしてしまうらしく、変に感情を出すよりかは静かに感情を殺して、笑顔などは消え去ってただの能面のごとくただの能面で表情も表情筋も作用しなくなるほど寂しい顔へと変えてみなさんと同じように下を向いてスマホに何の用もないのに触ってみる。
曲を変えたり、なにもないサイトをただ眺めてみたり、たくさんの情報があり溢れているこの現状に良いニュースは響かずに、誰かの不倫や二股、死んだり、事故が起きたり、忙しなく余裕がない世界で日々ネガティブを見かける。
誰も電車の上に飛んでいる蝶々には気づけずにひたすら同じ道をぐるぐる回る電車に路線の音は聞こえているのだろうか。
たちまちに並ぶビルは無機質で太陽の光だけを遮って、どこか暗いこの街は歩き疲れている人たちばかりに見えてしまって足早に歩いて顔は疲れ果てて、このまま空に悩み事も綺麗事もなにもかもが吸い取られてしまいそうになる。
独り言はシャワーに流されて下水へと流れて着いては頻繁に入れ替わる多くの人たちに身動きは取れず、それでいて普通が消えていく。
この世界にいる私はきっと今はジャングルにいる、生物や動物たちと同じように擬態していることだろう。
命の危機に接しているあのカメレオンや動物のように擬態してこの社会という謎に包まれた本質がないコンクリートジャングルにいつまでも擬態を繰り返し、今日も明日もこれからもこうしていくことだろう。
普通というものは普通じゃなく、ただの多数派なだけだと気づけば幾分か楽な思考を手に入れたことだろう。
そんなことを考えながら今日もまた擬態をする。
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