第3話 誰が太宰だ

―そうして、はじめに戻るのである。


あぁぁどうしよう頭が働かない。

ガシガシと頭を掻き毟る。ここに弟がいたのなら、やめなさい、とまるで自分が兄かのように止めたことだろう。

「うーん…………」

ふらふらと部屋に戻り、机に鎮座していたスマートフォンを手に取った。

誰からもメッセージはない。

ため息を零し、とある全世界の人間と繋がれるコミュニケーションアプリを立ち上げる。

『頭の可笑しい男たちが連れ立って我が家にやってきた。誰が前世太宰治だ!

とても気分が悪い。今すぐ刺したい。』

ぺい、と投稿ボタンを押して、そんな文章をネットの海に落とした。

すぐに誰かが反応する。

『www』『言ってること太宰じゃんw』

「……はぁ」

虚しくなって、ぱたんとスマホを閉じた。

「…誰が太宰治だよ……」

その呟きは、誰にも聞かれることなく、足元に広がる床にゆっくりと吸収されていった。


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