シャインブレイブ!

finalphase

第1章 モンスター出現!

第1話 彼女が消えた日

 私、星川ひかり。虹ヶ丘中学に通う2年生。

……え? 急にどうしたのって?

いや、なんかみんな、私のこと気になってるかなーと思って。ほら、最近ちょっとバタバタしてるじゃん。

え、気になってない? ひどくない? そんなこと言いながら、本当はちょっとだけ気になってるくせに。


――てなわけで、みんなのために自己紹介してあげる。


誕生日は6月8日。血液型はO型。身長は153cm。体重は……はい、企業秘密。

得意なことは……うーん……うーーん……。

……ない!! 本当にびっくりするくらい、ない!!


勉強もできないし、運動もできないし、音楽も悲惨なレベル。

おまけに、小さい頃から場面緘黙症で、人と話すのもすっごく苦手。

まあ言っちゃうと、典型的な「何やってもダメな子」なんだよね、私。

でもね、それでもなんとか生活できてきたのは――私を支えてくれる人がいたから。


その人の名前は、雪村志乃。

同じクラスで、勉強も運動も音楽も全部完璧で、クラスの中心にいる学級委員長。

みんなの憧れで、誰より優しくて、頼りになって、いつだって私を助けてくれた。


「ひかり、また宿題忘れたの?」

「……ごめん。」

「もう……ほら、写しなよ。早く。」


いつもこんな調子だった。

志乃ができないことなんてひとつもなくて、私は逆に彼女にできることひとつもなくて。

だけど、それでも彼女は見捨てなかった。

私が何もできない自分を嫌いになった日でも、志乃はいつもの声で「大丈夫」って言ってくれた。


――だからこそ。

あの日のことは、一生忘れない。


放課後、私と志乃はいつもみたいに一緒に帰っていた。

私は弱音を吐いて、志乃が「仕方ないなあ」って軽く笑う。

そんな、“いつも通り”の下校だったのに。


突然、地面の中から黒い影が飛び出した。

ゴキブリを何十倍にも膨らませたような、グロテスクで、見るだけで呼吸が止まりそうな怪物が。


「なにこれ!? うそ、無理無理無理!!」


私は反射的に飛びのいた。

そんな私の前に、志乃がスッと立ちはだかる。


「ひかり、下がって!!」


普段は絶対出さないような、鋭く強い声。

私は言われた通りに後ろに下がった。

志乃はポケットから、小さなコンパクトを取り出すと――叫んだ。


「光よ、私に力を!

 マジカルシャインブレイブ!!」


眩しい光が弾ける。

あっという間に、志乃の身体は淡いピンクの光に包まれ――

キラキラの衣装をまとった、美しい戦士の姿に変わった。


「え……なに……本当に……志乃なの……?」


夢を見てるような光景だった。

いや、正直に言うと夢なんてレベルじゃない。

漫画かアニメの世界そのまんまだった。


怪物が襲いかかってくる。

志乃はひらりとかわし、空中から光の弓を取り出し――


「マジカルシャインブレイク!!」


放たれた矢が怪物を貫いた。

怪物はグラリと揺れ、最後に震えた声でこう言った。


「……シャイン……ブレイブ……」


私には確かに、そう聞こえた。

次の瞬間、怪物は光の粒になって消えた。


志乃は変身が解けて、いつもの姿に戻ると私に駆け寄った。


「ひかり、大丈夫?」


「志乃……今の……一体……?」


彼女は長い息を吐いて、瞳を伏せた。


「実は私……みんなをモンスターから守る“シャインブレイブ”なの。

 でも……もう、疲れちゃった。」


その声は、小さくて、震えていた。

いつも強くて完璧な志乃の声とは思えなかった。


「だから、これをあなたに――」


差し出されたのは、変身に使っていたコンパクト。


「ちょ、ちょっと待ってよ!

 こんなの渡されても……私、意味わかんないし……!」


でも志乃は、もう答えなかった。

足早に去っていくその背中は、酷く小さく見えた。


胸の奥に、嫌な予感が生まれた。

それは、温度のない風みたいに静かで、やけに深くて。


――そして翌日。


私は聞かされた。


志乃が、自ら命を絶ったという知らせを。


世界が止まった。

呼吸も、思考も、涙も。

全部、一度に壊れた。


私が、もっと強かったら。

私が、もっとちゃんと向き合っていたら。

私が、彼女の支えに――なれていたら。


志乃は、あんな最期を迎えずに済んだのだろうか。


自問自答するだけで、胸が痛くて、痛くて。

涙は止まらなくて。

志乃の名前を呼ぶだけで、声が震えた。


完璧に見えた彼女こそ、誰より助けを求めていたんじゃないか。

それに気づけなかった私が――本当に許せない。





【次話予告】


私が弱かったせいで志乃は死んだ。

その事実が、胸の奥に今も刺さっている。


――だったら変わるしかない。


「い……私にやらせてください。お願いします!」


「ふぅん。学級委員長なんて、あんたに務まるのかしら?」


バカにされても、笑われても関係ない。

私は絶対に志乃みたいに強い人間になる。


そして、シャインブレイブという存在。

あれが何なのか、志乃が抱えていたものは何だったのか。

全部全部、私が暴く。

そして――救ってみせる。


志乃の代わりに、なんて言わない。

でも志乃の“痛み”だけは、私が全部引き受ける。


第2話 憧れのあの子に近づくために


――必ず、読んでね!

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