Happy Halloween Stories
月雲
第1話 黒猫と魔法使い(テーマ:黒猫)
にゃおん、と甘えたような声が玄関に響く。
「クロか。――その声はミルクでも欲しいのか。待っていろ」
「よし、利口に待っていたな、クロ」
軒下にちょこんと座って待っていた黒猫の前にミルクの入った皿を置いてやると、小さな舌でぴちゃぴちゃと音を立てて飲み始めた。その様子はどこか、美味しそうだ。
いつの間にかこの黒猫、クロがいる生活も普通になってしまった――ジェフはクロの側にしゃがみ込みながら、苦笑する。
クロとの出会いは偶然だ。旧知の仲である同族、ランフォードと共にいるときに通りかかった野良の子猫がクロであった。ちなみに名前を勝手につけたのはランフォードである。安直すぎるその名はどうかと思ったジェフは、名前をしっかり考えて変更しようとしたのだが、猫の方で自分の名はクロだと思っているようなので、そのままになって、今に至る。
たまたま出会った猫であったが不思議と懐かれ、今では何故か毎日ご飯をやっている。――思えば妙な縁であった。
おやつを与えてからもクロは帰らなかったので、しばし遊んでやることにする。
ジェフがその大きな手で抱き上げてやると、クロは目を細めてゴロゴロと鳴き始めた。
「お前、知っているか? 黒猫はかつて、魔女の使い魔と呼ばれていたのだぞ」
きょとんとした目でクロがジェフの方を見つめてくる。その大きな緑の瞳は、今日も不思議な輝きを放っていた。
この世界には、黒猫にまつわる迷信が多数ある。魔女の使い魔であるとか、生贄に捧げたら力が倍増するとか。その身体の色からだろうか、黒魔術に関する迷信が多いようだ。
「俺様は魔女ではないが……どうだ、俺様の使い魔になるか、クロ?」
ジェフは魔族の中では一流の魔法使いだ。魔法に関しては、三大実力者のひとりとして数えられているのだ。
にゃおん、とクロは元気よく応えてくる。――クロはジェフの言葉の意味が、わかっているのだろうか?
「お前、分かっているのか? 俺様の使い魔となるということは、永遠の時を共に在るということだぞ」
にゃおん、とまたクロは鳴く。そしてジェフの大きな手に頬を擦り寄せた。
「全く……お前は何を考えているのだろうな……」
黒猫を眷属にしていると俗に言われるのは魔女だが、黒猫を連れた魔法使いというのも、存外悪くないかも知れない――
もうすぐハロウィンだ。ジェフがこの国で仮初の姿として経営する店のある商店街も、ハロウィン商戦真っ只中だ。
ハロウィンの日は、クロを肩に乗せて魔法使いの仮装で店に出てやろうか。
――そんな冗談みたいなことを、何故か考えた。
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