5話 人道的だし、大丈夫!
「フィアナ、少しだけ遊びに行かないか」
「おー! 良いでござるよ〜!」
「本当に小一時間遊ぶだけだ。魔道具だって制限しておくから許してくれよ。さすがにストレスくらいは発散させてくれないと当たっちゃいそうだ」
「せ、拙者は……それもアリだと思うでござるよ!」
うんうん、前は酷い八つ当たりをしたからね。
夕食の量を極限まで減らした。ご飯三杯まで、何時も八杯は食べる四人からしたら最悪な出来事だったと思うよ。まぁ、それも四人で俺とユッコの時間を邪魔したのが悪いんだけど。ああ、何か嫌な事を思い出したな。
「じゃあ、三日は口をきかないね!」
「それは嫌ですぞ! あ! でも! 放置プレイみたいで悪くは無いような……いやいや、マスター殿に構って貰えないのは……しかし……!」
「しねぇよ、馬鹿ドM」
「馬鹿なんてそんな……ああ……!」
このアホの子、いや、ドM属性も含めて変態か。
本当に顔の可愛らしさとモフモフな猫耳が無ければ軽蔑の視線を浴びせていた。それにフィアナはフィアナなりに良さがあるのを理解しているから侮蔑するのは程々にしておくか。
「頼りにしているよ。今回の遊びは重要だ」
「……了解したでござる」
皆、そうだけど根は本当に真面目なんだよな。
だから、俺が重要だと言えば下手に口出しをしてくる事は無い。まぁ、真面目に動いて欲しい時くらいしか重要とか言わないし、当たり前の事と言えば当たり前か。逆にそれでも言う事を聞いてくれないのなら流石に無理にでもパーティーから抜けていたし。
「今回の任務はタガ山近くに住み着いている盗賊団の駆除だ。恐らく潰せば今回の黒幕君の足取りも掴めるだろうからな」
「足取りではなく証拠の間違いですぞ〜」
「確証が無い段階で予測を口にするのは憚られるからね。これで間違っていた時には予測を教えた人に謝罪しなければいけなくなる。もっと言えば一つの過ちで多くの人達を傷付けてしまう可能性だってあるんだ」
だから、少しずつ相手を追い詰めていく。
と、魔道具の準備も出来たからそろそろ向かうには良い頃合いかな。丁度よく人目のつかないところに着いたんだ。右耳に付けたピアスに軽く触れて魔法を展開する。それと同時に左耳のピアスにも触れて魔力を流した。
「俺とフィアナに気配遮断を付与した。魔法発動と同時にアジトのど真ん中に到着するからな。程々に暴れてやれ」
「お任せあれ」
軽く指を弾いて転移を発動させる。
予定通り、目の前の景色が薄暗い洞窟の中へと変化した。それと同時に広がるのは血飛沫の数々、程々と言ったはずなのにあまり手を抜いてはくれないみたいだ。強化をかけてあげるか悩んだが、かけなくて正解だったみたいだね。
「我が美技、ご照覧あれい」
さてと、これで奥側への対処は任せられる。
俺がするべきなのは探知で正確なマップと敵の位置を知る事、それと入口側の盗賊への対処くらいかな。敵の数が多いという前提があるのなら魔法さえ扱えれば問題無さそうだ。右耳の魔道具へ魔力を流し込んで魔法の展開を早めてっと。
「アルコル」
ぶっちゃけてしまえば、過分だろう。
ただ、俺の探知し切れない敵がいないとも限らないし、発動さえ済ませておけば首を取られる心配をしなくてもよくなる。って事で、展開させた直径一メートル程度の二つの光の玉を左右に配置させておいた。
そのまま左の玉に魔力を注いで魔法を行使する。
左の玉が司るのは引力、つまりは選択した対象全てを引き寄せる力だ。今回は玉に向かって引き寄せられるように操作している。ここら辺は俺が探知で敵の全位置を把握出来ているのも大きいが、他にも使い勝手が良いから本当に良い魔道具だと思うよ。
引き寄せられた段階で右側も発動する。
右の玉が司るのは斥力、対象に指定した物体通しを跳ね返させる性質を与えられるものだ。それが成立した段階で引き寄せられる対象を斥力と同じものにしてやる。こうすれば左右から反発する二つの力に押し潰されて全ての敵が破裂して戦闘は終了だ。
「ふむぅ、やはり、マスター殿は加減を知らないようですな。跡形も残らない程にしてしまうとは情けすらないでござる」
「罪の無い人達を襲う盗賊如きに払う敬意も、与える情けすらあるわけが無いだろ。それに微かな恐怖も感じる暇なく殺してやったんだ。これ程までに優しい方法無いだろうに」
それに、これを耐え切ったのは誰だったかな。
アルコルの最大出力を簡単そうに耐えて抜け出したような女に、何を言われようと気にするわけが無いだろうに。ましてや、ただ首を落とせば終わりだと言うのに、最初に手足を切ってから殺すような女だ。
「遊びと言ったのはマスター殿でござろう。故に拙者は情けと共に最後の誉れを見せられる場面を与えたに過ぎませんよ。それすら与えないマスター殿は鬼か畜生ですぞ」
「どっちの方が鬼か畜生なんだかな。まぁ、どちらにしても殺すのが前提の敵達だ。気にせずに遊びを続けよう。それとも……怖いか」
「怖いでござるよ。自分を忘れないか」
軽口を叩けるのなら気にするだけ無駄か。
一先ず、戦う覚悟も出来ていそうだし近場の盗賊だけ引き寄せてやった。それに合わせて全員の首だけを切り落として見せたのは他でも無いフィアナ自身だ。さすがに【首刈姫】なんて物騒な二つ名を与えられる程だよ。【無能】って与えられた俺とは雲泥の差だな。
「フィアナ、どこまで合わせられる」
「マスター殿の望み全て、範疇ですぞ〜」
「なら……任せるぞ」
最奥を除いたマップ内にいる人の操作。
何とも魔力の無駄遣いの可能性すらあるが察知されて下手に動かれる方が面倒この上ない。現に引き寄せる段階で盗賊とは別の存在がいる事も確認出来たからな。だから、フィアナに近付けさせるのは本当の敵のみ。
「……もう、終わりでござるか?」
「うん、後は最奥の頭領くらいだね」
「そうでござったか。大した敵では無いですな」
そりゃそうだ。フィアナは最高ランクだろうに。
目の前の盗賊団の強さは個々で表すのならDからBの下位辺り。フィアナがいるから五十人弱を一瞬で殺し切れたが、普通の冒険者では生死を分ける戦いが必須になる。ってか、魔力消費無しで盗賊達を豆腐のように切っている事実が俺としては怖ぇよ。
「絶対に俺の敵にはならないでくれよ」
「……忠義の確認ならば不必要でござるよ。拙者は全てをマスター殿に捧げると誓っているのでな。忠義と共に抱きし掛け替えのない心、全てを持ってして滅私奉公する所存ですぞ」
「それならいいんだ。そんなフィアナに任せたい仕事もあるからさ。……って、言うまでもないか」
「アリスへの伝達、それと捕縛された奴隷達の避難でござるな。確かにマスター殿の怒りを買った頭領がどうなるかは目に見えている状況、周囲への配慮は必要不可欠ですぞ〜」
別にそこまでする気は無いんだけどな。
なんというか、フィアナは少しだけ気にし過ぎているような気がする。俺は確かに戦うとなればド派手な戦法を取るしかないが、別に環境破壊の度合いで言えば皆の方が圧倒的だろうに。とはいえ、任せて貰えた以上は好き勝手にやるだけだ。
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