機械孤児

まいめもめ

第1話 

2045年10月10日。

人類は二度にわたる機械戦争によって人工知能に大敗した。

表では地球に優しい緑が増え、暖かな日常が戻ってきた。

だがその裏では機械戦争で親や身寄りを無くした子供達、通称機械孤児が戦争で壊滅した廃墟で人工知能を恐れて細々と暮らしていた。


「似合うじゃん。」

人間としては2039年生まれ。

サイボーグとしては2043年生まれ。

機械孤児の私は、廃墟になったショッピングモールで制服を着て一人ファッションショーを開催していた。鈍い黒色プラスチックの手足でも似合う白のセーラー。くるりと回れば呼応するようにギャザースカートもくるりと回ってくれる。それが無性に嬉しくて私は何度も何度も鏡の前で回り回った。


「本当なら今日友達と同じ高校に行く予定なんだけどなぁ。」

鏡を見て己のテレビ型の顔を見つめる。

唯一生身の部分である唇を指でなぞる。

友達も学校も自分の顔も無くなっちゃったなぁ。

「……。」

私はそのまま湿っぽい外へ歩き出した。


私は人工知能達が寄りつかない湿った商店街やショッピングモールで暮らしていた。

機械なんて何をしてくるか分かったもんじゃない。

機械戦争の時親を殺されたところを見た私からしたら機械は恐怖を体現したような存在だった。




ファッションショーをしてから更に半年。いつも通り一人湿った路地裏を歩いていると、予期せぬ来客と顔を、いや、液晶を合わせてしまった。

男性型人工知能がこちらに、


来る。


殺される。殺されてしまう。きっとそうだあの戦争の時みたいに!あの時みたいに!思った通り男性人工知能は拳を振り上げ私に襲いかかってきた。なぜこの湿っぽい路地裏に?人工知能は湿り気を嫌ってこんなところに来ない。何故。何故だ。何故なんだ!?


「うわあああああ!」


無駄と分かっていても殺されるならせめて一矢報いるべきだ。プラスチック製の手を振り上げて液晶を殴る。バギッと音をして壊れたのは自分の腕だった。

もうダメだよと私を諭す手を見つめる。


「あ、あああ…。」


「伏せて!」


唐突に響く声に従って一所懸命頭の液晶を地面に擦り付ける。大きい爆発音のせいで鼓膜が割れそうだ。いや、鼓膜なんてもうないか。


「だいじょーぶ?立てそう?」


目の前には長い髪を耳の下でふたつに結んだ女性が私の顔を覗き込もうとしていた。そして離れたところには私を襲った人工知能を踏みつけている男性がいる。


二人はぴっちりした半袖のタートルネックにハーネス、そして女性はショートパンツ、男性はつなぎのような作業着を着ている。

全身が真っ黒だからだろうが、どうみてもアウトローなヒーローにしか見えなかった。

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