第2話 サイレントメイド

人間が嫌いだ。


私は幸福と言える人生を歩んできた。比較的裕福な家庭。良好な家族仲。友人にも恵まれ、何の不自由も無かった。


だから今、こうして銃を握って赤の他人を殺しに行くのは、こうなってしまったのは、


私が選んだからだ。


人間が嫌いだ。


醜く、自身の為なら手段を選ばない、人間が嫌いだ。


だから、引き金を引けた。


初めての殺しも、何も感じなかった。


私自身も、醜い人間だということが分かって、嬉しかった。


ターゲットの事情なんてどうでもいい。


悪人と呼ばれる人間も、善人と呼ばれる人間も、一皮剥けば同じモノが入っている。


私だって例外じゃない。報酬が貰えればそれで良いのだ。


他人を殺してでも自分の生を繋ぐ。これこそが暮らしだ。


善人ヅラしてる奴らも、その生活の為に人を蹴落として居るんだ。


ああ、今宵も月が綺麗だ。


以前は犬猫のような動物が好きだった。でもある日、野良猫が共食いするのを見た。


彼らも困れば他者を害する。結局人間と同じだ。


そして、今から殺す奴らも共食い革命を始めた奴らだそうだ。


革命か。


聞こえは良いが、彼らはなぜ他人を変えられると思うのか。


それこそ傲慢じゃないか。


人は変わらない。歴史の教科書を読み直せ。


「まーた黙って月を見てるのか。そろそろ時間だ。やるぞ。」


ああーうるさい奴だ。


そんなだからトーキーおしゃべりなんてコードネームになるんだよ。せっかくの満月が台無しだ。


あと、お前とみたいな奴と同期だからセットで私も変なコードネームになってしまった。


まぁけど、このコードネームはちょっと気に入っている。


「ああ、分かったよ。行こう。」


本部ホリデイ こちらサイレント 作戦を開始します。Over」

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る