第4章:苔壁の回廊とオークの群れ(後編)
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滑った俺の靴が、オークの足元をすくった。
棍棒が空を切る。オークがよろめく。俺はその隙に、瓶の破片を拾って構えた。
「ケイさん、それ武器じゃなくて……割れた瓶ですよね?」
リュカの声が震えてる。瓶魔導具が割れたら、彼の戦闘力はほぼゼロだ。
でも、俺は知ってる。割れた瓶は、節約魂の刃になる。
「瓶は割れても、魂は割れない!」
「それ、詩的だけど危ないです!」
マリナが斧を振る。干し肉が飛び散る。
オークが一瞬止まる。匂いに釣られて、棍棒を下ろすのを忘れた。
「マリナ、それ……戦術じゃなくて餌付けだろ!」
「でも効いてるよ!」
ゴブリンが「ふももも!」と叫びながら、干し肉をもう一枚投げる。
オークの顔に直撃。鼻に貼りついた干し肉を、オークが指でつまんで見つめてる。
……なんだその間抜けな間。
「今だ!」
俺は瓶の破片を持って突撃。靴底が滑る。
でも摩耗角度は読んである。右足を軸に、左足で踏み込む。
瓶の破片がオークの棍棒に当たり、魔力が拡散する。
「うおおおおおおおおおお。節約魂は、滑っても止まらない!」
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一体目のオークが倒れた。
残り二体が怒って突っ込んでくる。棍棒を振り回しながら、苔壁を蹴って加速してくる。
「ケイさん、魔力流が乱れてます! 瓶が……もうないです!」
「俺の靴底がある!」
「それ、魔導具じゃないですよね!?」
「でも、摩耗は記録されてる!」
俺は裏紙を取り出し、滑りながら地形の傾斜を記録する。
風が吹く。紙が飛びそうになる。ゴブリンが「ふもっ」と鳴いて、紙を押さえた。
「ナイス、ゴブリン!」
マリナが斧を構え、干し肉を斧の柄に巻く。
「ケイ、これで威力上がるかも!」
「それ、武器じゃなくて保存食の塊だろ!」
でも、斧が唸る。干し肉が風を切る。
オークの棍棒とぶつかり、干し肉が弾ける。匂いが広がる。
オークが一瞬止まる。マリナが斧を振り下ろす。
「節約魂、保存食で勝つ!」
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最後の一体が、苔壁を蹴って跳びかかってきた。
俺は靴底で地形を読み、摩耗角度を逆手に取って滑る。
オークの棍棒が俺の頭上を通過。俺は地面を転がりながら、瓶の破片を投げた。
「うおおおおおおおおおお。節約魂は、転がっても止まらない!」
瓶の破片がオークの額に当たる。魔力が拡散。
オークがよろめき、ゴブリンが「ふももも!」と叫びながら干し肉を投げる。
直撃。オークが倒れる。
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戦闘終了。
俺たちは苔壁の回廊層を制圧した。
ギルドに戻ると、技術班が報告書を受け取った。
「ケイさん、瓶の破片、靴底摩耗、干し肉の飛散記録……全部、非公式技術として残します」
「節約魂は、記録されなくても、響いてる」
ゴブリンが「ふもも」と鳴いた。
干し肉を俺の靴の横に置きながら。
「それ、供物じゃなくて……ご褒美か?」
俺は笑った。
靴底が滑っても、魂は踏みしめてる。
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(第4章 完)
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