The day of the day
夜野帳
The day
某所マンションにて
「ねえねえ、お弁当!忘れてるよー。紬ー。和也もいい加減起きて支度してよね!
ハルも! 早くごはん食べちゃってよ!
私も仕事行かなきゃだし、急いでー!」
夫、和也、高3の紬(つむぎ)、中1の陽翔(はると)を慌ただしく世話をする主婦みなみ。
いつもの光景。
「俺今日朝ごはんいいやー。朝一会議で資料用意しないとなんだよね。じゃ、行ってきます。」
と冷蔵庫から麦茶を出し、ぐいっと飲み干して足早に出て行った。
3両目電車内にて
「すみません。」と和也は人混みを掻き分け、優先座席前の吊り革を掴んで携帯を取り出し、今日の会議の段取りを確認するのに集中し始めた。
「あっっつーー!最近の気温やばすぎ!無理無理無理ーー!。」マミは首筋から滴り落ちる汗を拭いながらスタバのフラペチーノを飲み干した。
「マジそれね。こんな日にテーマパークとかうちら大丈夫?」と友人のりかもアイスコーヒーを飲みながら相槌を打った。
突然、車内に爆音でうおおおおおおん、うおおおおおおおおん、うおおおおおおん と
携帯からの耳をつんざくようなアラーム。不快でしかない。
しゅぱっ、しゅぱっと何発かの空気が乾いた金属音がする。
きゃああああああああああああ
車内で悲鳴があがりはじめる
「ぎゃゃああああん、おばああちゃああん、おばああ、おばああちゃああん、おばああ。」と動かぬ老女の傍らで泣き叫ぶ幼い女の子
優先座席の目の前に立っていた和也は、すぐに事態を把握するのに時間がかかった。
まだ起きていない悪夢の中にいるのではないかと思いながら、人形のように光を失った虚な老女の目を見つめていた。
慌てた車掌が事態を把握しようと全車両を大汗と引き攣った顔で駆け巡った。
突然耳をつんざく大音量のビバルディ春が流れる
「おつかっつかれさまあでしゅた、本日のテスト選別は終わりデス、罪のない80歳以上の人がいなくばりなしゅた。これで世界の人口の1、7%の人がいなくなりました。
明日からは本番ですよ。」
各所老人ホーム、各家庭から80歳以上の老人が消えた。真夏でであっても、冷え切ったクーラーによって、空気はキリッと感じ、背筋が凍るのを生き残った人は無言で感じとっていた。
和也が電車に向かった後、みなみはパートへ、子供達も学校に行くぞと、まさにその時、爆音のアラームのが鳴り響き、みなみと子供たちは外に出るのを一旦やめた。
ピンポンッピンポンピンポン
家のインターホンがなる
ドン ドン ドンとドアを誰かが、荒々しく叩く
モニターにはお隣に住んでいると思われる顔をかろうじて知っている中年女性が立っている。ドアは開けず、モニター越しに話す。
「はい、どうされましたか?今ちょっと手が離せなくって、、。」とみなみ
「あの〜少しだけお話し聞いていただけませんか?外の様子ベランダからご覧になった?世の中の終焉だと思いません?こんな時でしょ、私達を救ってくれるお照様を、あなたにも是非ご紹介したいのよ。どうかしら少しお時間いただけない?」
そんな余裕はない。
「あ、ごめんなさい、興味がないのと、時間もないので失礼しますね。」
とモニター通話を切った。
耳を澄ましていると、また違う部屋をピンポンしながら移動する様子が感じとれた。
次の部屋では話を聞いてもらえたのか、騒がしさは感じられなくなった。
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