#018 毒と麻痺はタイトルしだいで評価が割れる

「来ます!」

「こなくそォ!!」


 毒大蛇の魔物・ポイズンスパイダーの牙を収納しつつ受け止める。


「うぉおおお!!」

「そこ!!」


 そしてトドメはニーアとノアさん。フェアリスさんは司令塔と、複数体と接敵した際の狙いの分散(タゲコン)役をニーアと共に担当する。


 やってきたのは第四階層33階の荒れた林エリア。途中サンドウルフも狩ったが、メインターゲットはポイズンスパイダーの鱗と毒液・毒腺だ。個人的には低階層周回でいいのだが、あまり入り浸ってしまうと不審死事件の容疑者になってしまうのもあって…………フェアリスさんたちの都合がつく日は第四階層、そうでないなら第三階層の各種クエストをこなしている。


「ぐはっ……」

「大丈夫ですか? いま、回復を……」

「いや、単純な消耗なので、すこし休めば」


 第四階層は、高耐久の大型や毒などの絡めてを使う相手が一気に増える。いうなれば『RPGゲームらしくなってきた』だ。俺は軽装、つまりタンクではないのだが、吐き出す毒液まで回収しようと思うと前に出て攻撃を受ける必要がある。牙は収納で無効化できるものの、やはり盾や重量防具を着込んで当たり負けを防ぎたいところ。しかし開閉は、盾を挟んで発動みたいな遠隔起動ができないので、実質使えない。


「……これ

「あぁ、はい」

「けっこう溜まってきましたね。あとはもう毒腺だけで足りるかも」


 収納した毒液を瓶に移し替える。ゲームだと液体アイテムは、なぜか瓶などがおまけで貰える謎設定だが、この世界の液体は当然のように零れて回収不可になる。なるからこそソコにビジネスチャンスがあり、こういった液体回収は他では真似できない高効率が狙える。


「パラライズ(スネーク)はいいのか?」

「「あぁ……」」

「はぁ~、やりますよ」

「すいません、お願いします」

「でも、そのまえにニーア、ちょっとこっち来い」

「へぇ?」

「おりゃぁ!!」

「ぎゃはははは、らめ、しっこ漏れる」


 名前からして説明不要だろうが、パラライズスパイダーはポイズンの麻痺版だ。毒は魔力的なスリップダメージが入るのに対して、麻痺はダメージこそないものの感覚を狂わせることで各種精度が一気に狂う。そのあたりゲーム脳だと行動・移動系デバフにあたるが、この世界では命中精度や成功率デバフとなる。ポイズンに比べて出現頻度が低いので、今回のクエストではボーナスターゲットとなっていた。


「"リリカ"さんの事もありますから、多めに確保したいですね」

「そう、ですね」


 そのリリなんとかは生産組所属の勇者で、ひと言でいえば『錬金術師の勇者』だ。詳しくは興味がないので覚えていないが、薬物の研究をしているらしい。


 あと余談だが、生産組は戦闘能力の関係で低階層で活動しており、他にも何人かフェアリスさんが担当している。


「マヒなんて、使えるのか??」

「正確には、それを使った各種ポーションね。あまり知られていないけど、様々なポーションにちょっとずつ使われているのよ?」


 毒などのデバフは、ゲームだと使われると厄介なものの、即効性がないのとボスに効かないという致命的な弱点があるので気がつけばスタメンから抜けてしまう戦闘スタイルの筆頭だ。この認識はこの世界でも通用するようで、基本的には対人用。冒険者が使うことはまずない。


「麻痺は、痛みや恐怖を和らげる効果もあるからな」


 そのため軍事方面での需要もある。


「……その、お願いします」

「そうですね。頑張るとしますか」


 そうこうしているとパラライズスネークを発見した。しんどい話ではあるが、こうなったら1滴でも多く回収して戦闘回数を減らすしかない。


 あとコレは余談だが、リリなんとかはノアさんとも知り合いらしい。フェアリスさん繋がりで接点があるのは分かるが、やはり女性同士安心できる部分があるようだ。




 こうして俺は、ダメージを負いながらも毒系アイテムを集めてまわった。のだが……。

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