#005 正直パーティープレイって気を使うから苦手だ
「あぁカズマさん、こっちです!」
「えっと、お待たせしました」
「…………」
やってきたのは第四階層。俺はフェアリスさんの紹介で鍛冶ギルド関係のクエストを受けることとなったのだが…………今回は指導もあって初のパーティーで参加することとなった。そして組むのは、なんとギルド職員のフェアリスさんと……。
「あぁ、こちらは見習い職人のノアちゃんです」
「……ども」
「ども」
見習い職人のノアさんの3人で行動することとなった。ちなみに冒険者ギルドに限らず、職員も冒険者として活動することがあるようだ。もちろん事務専門の人もいるそうだが、現場を覚える意味でもギルドは冒険者との兼任を推奨しているのだとか。
「そ、それじゃあとりあえず移動しながら。カズマさんは来た事あるんですよね?」
「まぁ、お試しで」
集合は第四階層だが逆走する形で第三階層へと向かう。ちなみに世界樹は螺旋構造になっており、各階層のゼロ階攻略後は1階へのショートカットが整備される。そのため往復しやすい各階の1~3階と逆に9~8階あたりは人が多くなる。
「いちおう私も一人で大丈夫だから、もしもの時は頼ってもらっていいけど……」
「はい、じゃあ俺が前に出ますね」
「背中は任せてね」
「…………」
ちなみに第三階層の難易度は『油断すると死ぬ』程度。逆にいえば油断しなければいけるし、今回はお目付け役のフェアリスさんも控えているので盤石だ。
「あ、ちなみにノアちゃんもある程度戦えるから」
「見たいですね」
「「…………」」
「あぁ、うん。えっと……」
やりにくそうなフェアリスさんに対して、俺やノアさんは平常運転。馬が合うというべきか、変に干渉しないのでやりやすい。いや、まったく打ち合わせができていないので本当はよくないのだろうが、そこは言葉で語るよりも実戦で距離感を掴んでいけば…………会話を省ける。
*
「よっと」
「お見事。さすがだね」
「いや、フェアリスさんこそ」
襲い掛かってきたハーピーの攻撃を回避し、槍で急所を一突きして屠る。
29階は池と岩場のマップで、水辺は不利なのでスルー。岩場には山羊の魔物・ゴートと怪鳥の魔物・ハーピーが出現するものの、ゴートはノンアクティブなので無視。移動中に襲い掛かってきたハーピーのみを相手にする。
「しかし槍を選んだのは意外なんだけど…………もしかして何か習っていたの?」
「いえ、ただ適していると思っただけで、何の思い入れもないです」
「そ、そうなんだ」
俺のメイン武器は槍。サブに片手槌と解体用にナイフも装備している。槍はリーチこそ長いものの攻撃力は低く、冒険者の装備としては不人気だ。そのあたり魔物は基本フィジカル極振りなので当然なのだが…………第一階層をはじめとする雑魚モブは槍の攻撃力でも足りるのと、なにより背の低い魔物に対して攻撃しやすい利点がある。サブで槌を持っているのは相性補完で、こちらは打撃属性の重い攻撃を打ち込める。
「弓は使わないの? いちおう教えられるけど」
「それは…………その、いずれ」
適性的には弓や短剣・暗器なのだろうが、弓は矢の管理が手間なのと短剣はリーチの問題で今は不採用。俺のステータスは何でもこなせるフラット型なので、そのあたり勉強もかねて一通り試していく予定だ。
そしてフェアリスさんの装備はメインがレイピアで、補助で魔法も使う。じつに(ハーフだけど)エルフらしい構成で、今回は持ってきていないが弓も使えるらしい。弓は最終武器候補なので教えてもらいたい気持ちもあるが…………まぁ俺の性格からして、勝手に試して自己流でなんやかんやするだろう。
「その時は気軽に声をかけてね」
「はい」
「「…………」」
「かけますよ?」
「そうだね、かけてくれるんだろうなぁ~」
早くも俺の性格を理解しつつあるフェアリスさん。言葉遣いもなんだかお姉ちゃんっぽいノリになっている。
「そ、そろそろ28階ですね」
最短ルートを進んでいるのもあって、ほとんど会敵することなく次の階の入り口に着いてしまった。28階は薄暗い湿地で、魚や両生類系の魔物が出現する。当然ながら水中戦は絶対的に不利なものの、逆に陸に引き込んでしまえば有利になる。どの階層も8の階は水辺らしいのだが、そのため8の階をメインの狩場とする冒険者は多いようだ。しかしゲーマー目線で言わせてもらえば、そういった狩りは計算してみるとあんがい非効率。くわえて戦闘経験もほかで活かしづらいので、やらないほうがマシまである。
……ともあれアプローチや人生は人それぞれ。本人がその方法で納得しているのなら他人の俺がしゃしゃり出るものではないし、なによりされたくない。
「あぁ、それじゃあ今度はノアちゃんが前衛でいこうか」
「……はい」
前衛交代。正直ノアさんの実力は気になっていたので…………見せてもらおう、見習い職人の実力とやらを。
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