第3話 忘れられた研究室の呼び声

そこに、一枚の薄汚れた紙切れが、花びらが空を舞うようにひらりひらりと、リナの机に舞い降りてきた。




「何かしら?」


リナが、紙切れを拾い上げると、




「うん…【MACOK】!?」




薄汚れた紙切れには、【MACOK】という謎の言葉と、高等部の旧校舎への簡単な地図が描かれていた。




「これって、旧校舎の魔法陣研究室の準備室のことかな?」


リナは、地図の指し示す場所に心当たりがあったらしく、灯りはつけっぱなし、本も開いたままで放り出して、薄暗い図書館を後にした。




⭐☆☆☆☆☆☆⭐




「はあ、はあ、はあ、ここか…」


リナが息を切らせて走ってやって来たのは、高等部の本校舎を抜けた奥にある場所で、今は使われていない旧校舎が、何かをおびき寄せるかのように、おぼろげに佇んでいた。




「ちょっと怖いけど…はあ、はあ、行くしかないか…」


リナがそう呟いて、旧校舎を閉じ込めるように置いてあった、金属の柵を少しずらして、隙間から中へと入っていった。




「ライト!」


リナが詠唱すると、目の前に青白く光る玉が現れた。




旧校舎へびくびくしながら入っていくと、中はクモの巣とホコリまみれで、人が出入りしている様子はなかった。




「この教室の奥だよね…」


怖くて独り言をいいながら、魔法陣研究室までやって来た。




「準備室は、ここね…」


準備室のドアを開けると、本棚と小さな机と椅子がおかれていた。




本棚には、難しそうな本がホコリまみれで散らばっていた。その中に、妙に綺麗な本が1冊だけ置かれていた。




「なんか、怪しいな…」


リナは、その本を強く押し込んでみた。




ゴ…ゴ…ゴ…ゴゴ……ゴゴゴゴゴゴ…




重い本棚が、嫌なきしむ音をたてながら、右へと移動すると、ヘビの魔物が大きな口を開けているような、深淵へと続く漆黒の階段が下へと続いていた。




「隠し階段って…怪しすぎるでしょ…」


さすがのリナも、ゴクリと息を飲んで少しだけ躊躇したが、意を決して一段ずつ降りていった。

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