第4話
市長が高らかに叫ぶ。
「よし! 勇者様を迎える祭りじゃ! 飾りはどうする? 各家庭からの強制徴収だ。……各家庭のタンスを開けて探すのだ!」
「「「おおーーっ!」」」
「「「よっ、独裁者!」」」
市民たちは大笑いしながらも、冗談半分、本気半分で動き出す。
子どもたちが先頭に立ち、勇者アレンの手を引いた。
勇者アレンは装備一式を市長に預けたままのため、ステテコパンツの初期装備だ
「勇者様! こっちのタンスも一緒に開けましょう!」
「えっ、いいの? ほんとに開けちゃうの?」
「だいじょうぶ! 市長さんが言ったから!」
「ぼくんちのタンスからも宝物出てくるかも!」
押し切られる形で、アレンは子どもたちと一緒にタンスの取っ手を掴む。
ガラガラッ! 中からは古い帯、派手なカーテン、色あせた浴衣まで飛び出した。
「これ、祭りの飾りに使えるんじゃないか!」
「勇者様、こっちのも見てください!」
「わ、わかった……。あ、また布出てきたよ……」
家に迎え入れた市民たちは大爆笑。
「これが世に伝わる勇者様のタンス荒しか!」
「ははは、まさか本当に目にする日が来るとは!」
さらに年配の市民が懐かしそうに口を開いた。
「昔来た勇者さまは、タンスを開けるだけではなく、ツボを割って行ったそうじゃ」
「おお……! まことにこれは貴重じゃ!」
拍手と歓声に包まれ、アレンは思わず額に手を当てる。
「……いや、なんでそれが勇者の得意技なんだよ」
その時、ふと一枚の浴衣を手に取ったアレンは、ステテコ姿の自分を思い出し、思わず羽織ってみようとした。
「これ……ちょっと試しに着ても――」
「だめだめ勇者様! それは泥棒です!」
「えっ、そうなの? ……」
「職権乱用です。」
子どもたちが目を輝かせて口をそろえる。
「ステテコの勇者様、かっこいい!ステテコ様です。」
「うん! 動きやすそう!」
「そのままが一番似合ってるよ!」
アレンは一瞬言葉を失い、顔を赤らめながらも笑って肩をすくめる。
次の瞬間には子どもたちに袖を引かれ、別の家のタンスに案内されていた。
「ステテコ様、こっちです!」
「誰?ステテコ様?俺?俺だよね。わかった……よし、せーのっ」
ガラガラッ!
中からは色とりどりの帯や古い羽織が飛び出し、子どもたちは大はしゃぎ。
「勇者さま楽しそう!」
「タンス開けるの上手!」
市民の歓声に包まれるなか、気がつけばアレンも一緒になって笑いながら布を抱え、家々を巡っていた。
――勇者の本能なのか?
ふと、他人の家のタンスを開けることに自分が喜びを感じている事に気づき、アレンは小さく首をかしげた。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます