12.ハク・オルディア
『特殊技術班、
ハクとの会話から2日経った早朝。
午前8時。
強い朝の日差しと共に、本部からの連絡が届いた。
早朝に届けられた
『
表向き、爆弾魔は捕まったことで決着したようだ。
ヨウはだらりと身に付けたオーバーサイズの室内着をベッドに脱ぎ捨てた。隣のベッドには、几帳面に折りたたまれたリサの室内着が置かれている。
窓から入る風は冷たく気持ち良く、壁を一枚隔てたリビングからリサの鼻歌が聞こえた。
昔よく聞いた懐かしい
『ジジジzzzれから』
強い風が吹き、音波が揺らいだ。
『速やかに命令を完遂しライア・エスタリカ首衛官と共に本部へ帰還されたし。
(貴公「ら」……)
それはつまり、この支部からもライア以外の数名が更に要請されるということだろうか。
ヨウは國連本部が置かれた白い砦を脳裏に浮かべる。
(もう、帰るのか……)
無線機が上司の声を促した。
『繰り返す。ライア・エスタリカ首衛官を連れて速やかに本部へ帰還されたし』
遠くからヨウを呼ぶ明るい声が聞こえた。
(帰りたくないな……)
不意に漏れた意外な本音にヨウ自身も驚いた。
1か月という滞在で、明るい女性の存在がヨウの中で少し大きくなっていたのかもしれない。
役目を終えたデバイスの電源を切ろうと、
『ジジzいごに……、
予想外の言葉にヨウは無線機を見下ろした。
ベッド脇に綺麗に畳んで置かれていた服を取り上げる。恐らくリサが用意してくれていたのだろう。
(
頭から服を被りながらヨウは音声の続きを待った。
『まず一名。リサ・ラグナウッド四等兵』
意外な人物の指名にヨウの鼓動が僅かに高鳴る。
リサは四等兵で本部へ召集されるには階級が足りない。
けれどそれは嬉しい誤算だった。
『ライア・エスタリカ首衛
(ライア首衛官の指名か……)
ヨウは妙に納得した。
リサがいつも使う「ライア
ヨウはベッドの縁、無線機の隣に腰を下ろし櫛を掴んだ。
細く白い髪を櫛でとかす。
國連の隊服が視界に入った。
音声がまたノイズを発し、知らない名が列挙される。
連なる名前は顔が浮かばないながらも、支部で一度くらいは聞いたことのある名ばかりだった。
およそ5分間に渡る名前の列挙をヨウは上の空で聞き流す。
名のある人物が指名される――これはそういう
(リサの指名はやっぱり意外だな……)
ライアの柔和な笑顔を思い浮かべ、ライアからリサへ矢印を引いてみる。
飛躍した想像ににヨウは手を振りそのイメージを払拭した。
遠くからリサがヨウを呼ぶ声がする。
「ヨウ!はやくして。エリオも馬車も到着してる」
ヨウは慌てて髪を整え上着と鞄を手にする。スイッチを切ろうと手にした録音機が再びノイズを出した。
『ジジz……最後に一名』
ノイズと共に長い音声が終わりを告げる。
『エリオ・アルディナ八等兵』
その名前に、手から滑り降りた録音機が柔らかい音を立てて床に転がった。
――RYCOLAS――
二節【
【この時代,國家を跨いで設立された「國連」と呼ばれる組織があった.
國家の統制と治安維持を目的とした組織である.
その主たる活動は國を脅かす犯罪者の抑圧にあり,その力の源は4つの大国の交易路の中心に位置していた点にある.
かつて
――区分その1 「ランク」――
いわゆる拘引に伴う難易度を表す.
1~5まで存在する.
ランク1が國連隊員全員が拘引可能な犯罪者であるのに対し,ランク5は,拘引の目途が立っていない犯罪者を表す.正体不明であったり、反乱軍の幹部などがこれに当たる。
――区分その2 「級」――
犯罪者の残虐性や被害規模によって分類される区分である.
ランクとは異なり,「級」は犯罪そのものの被害(想定)規模を指し示す.
現在
最後に,この2つの区分はどちらも数字が大きくなるほど危険度が高い.
その理由は上限を設けないためだと言われている.
史上において,記録とは塗り替えられていくものだからだ.
―― オルドの亡霊 《ハク・オルディア》 ――
ランク5.級??
罪状:反乱因子.
表向きはオルド街虐殺事件の主犯格と伝わるが,そのじつ詳細は不明である.
―――――――――――――――――― 】
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