第11話 掲示板の声 ― 会見直後の混乱

深夜。

静まり返った部屋の中で、スマホの画面だけが青白く光っている。学生のタクヤは布団にくるまりながら掲示板を開いた。




1 名前:名無しの実況民

会見見たやついる?やべーことになってね?


2 名前:名無しの会社員


> > 1

見た。探索者ってマジで存在するんだな。政府が公式に認めやがった。




3 名前:名無しの浪人生

スマホで勝手にアプリ起動するってやつ、俺にも来ねーかなwww


4 名前:名無しの主婦


> > 3

やめとけw怪物と戦わされるんだぞwww






5 名前:名無しのニート

戦わされるって、要は徴兵制の探索者版じゃね?


6 名前:名無しの学生


> > 5

あの副長官の目見た?「守らせます」ってより「使い潰します」感やばかった




タクヤはスクロールを止め、画面を見つめた。目の前の文字列が現実のニュース映像と重なる。神谷副長官――あの無表情の男の視線が、ただ守るだけではなく、使い潰す覚悟を秘めているように見えた。心臓が少しだけ高鳴る。

「これ、現実なのか……ゲームじゃないんだぞ……」




15 名前:名無しの社会人

正直、探索者には感謝しかないわ。だって怪物止められるのあいつらだけだろ?


16 名前:名無しの会社員


> > 15

でも待遇どうなるんだろな。死んだら遺族年金とか出るんか?





17 名前:名無しの医療従事者

探索者=最前線。絶対死者続出するやん。トリアージどうすんのか想像しただけで地獄。


18 名前:名無しの学生

会見で「法整備」とか言ってたけど、探索者は兵士扱いされるんだろうな……


19 名前:名無しのフリーター

いやいやwむしろ選ばれたら一発逆転人生じゃね?スキルで無双してヒーローとか、憧れるわwww


20 名前:名無しのスレ民


> > 19

フラグビンビンで草





タクヤは思わず背筋を伸ばした。憧れと恐怖が入り混じる感情が、画面越しに押し寄せる。火の玉をぶん投げて信号機を溶かす映像、街路を駆け回る探索者の姿……これが現実世界で起こっているという恐怖。ゲームじゃない。確実に現実だ。





33 名前:名無しの情報通

Twitterで「探索者なった」ってスクショ上げてるやつ出てきたな。本物かは知らんけど。


34 名前:名無しの疑い深い人


> > 33

どうせネタ画像やろwwwww




35 名前:名無しの実況民

いや動画も出てる。火の玉ぶん投げて信号機溶かしてるやつwwwwww


36 名前:名無しの学生

マジかよ。魔法とか現実にあるんか……


37 名前:名無しのサラリーマン

つかそんなやばい力持ってるやつらを政府が「管理」するってやばくね?自由奪われるじゃん




掲示板のコメントは膨れ上がり、タクヤの指先は止まることを知らなかった。副長官の目を思い出す。使い潰す覚悟……。あの冷徹な視線が脳裏から離れない。もし自分が選ばれたら? 想像するだけで鳥肌が立った。




60 名前:名無しの陰謀論者

政府、絶対もっと前から知ってたろ。会見の資料とか全部準備されてたじゃんw


61 名前:名無しの研究者風

黒い穴の正体は「異世界との接続」だな(断言)。俺の卒論テーマに似てる。


62 名前:名無しの陰謀論者


> > 61

異世界wwwwwwww





63 名前:名無しの学生

でも動画見たら否定できんわ。ゲームで見たまんまの狼型モンスター出てきたしwww




夜の静寂に混じる、画面から流れる文字の嵐。非現実感と現実感の交錯。血の匂い、崩れる街路、火の玉が飛び交う映像……頭の中で映像がリピートされる。恐怖と興奮、憧れと不安、すべてがごちゃ混ぜになった心理状態。




88 名前:名無しの学生

正直、ワクワク半分怖さ半分。俺も探索者なりたいけど死ぬのは嫌だ。


89 名前:名無しのOL

現場で見てたけど、あれマジで人が食われてたんだよ。血の匂いとか消えない……。「ゲームみたい」なんて軽口言えない。


90 名前:名無しのニート


> > 89

うわ……現場民か。怖すぎやろ……





タクヤは画面を握りしめた。英雄になれるかもしれない、でも死ぬ可能性も高い。恐怖と憧れが交錯する。誰も選ばれたくないのに、もし自分にアプリが来たら……心臓が跳ねる。





121 名前:名無しのスレ民

【悲報】俺、探索者アプリ来ずwwwww


122 名前:名無しのフリーター


> 121

お前みたいなやつが適性あるわけねーだろwwwww




123 名前:名無しのスレ民

(´;ω;`)


124 名前:名無しの煽り屋

探索者=リア充専用ジョブwwww





掲示板は止まらない。焦燥、羨望、嫉妬、笑い。タクヤはスマホを握ったままため息をついた。自分は選ばれない。選ばれる人間は特別で、そして――使い潰されるかもしれない。





200 名前:名無しのまとめ民

【まとめ】

・政府、探索者制度を公式発表

・スマホ自動アプリで登録されるらしい

・怪物=従来生物とは異質(テロ否定)

・探索者は政府管理下で戦う義務

・ネットでは「英雄になれる」「使い捨てだろ」と真っ二つ


201 名前:名無しのスレ民

次スレ→ 【探索者】政府管理とか怖すぎ part5

https://***





タクヤは画面を閉じ、天井を見上げた。街は静まり返り、夜風が部屋のカーテンを揺らす。しかし、心の中はざわついたままだった。

英雄と犠牲、自由と管理、日常と非日常。すべてが交錯する中、タクヤは無力感と興奮を同時に味わった。夜は深く、そして長い。明日もニュースと掲示板の嵐は続く――。



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