4夜 うしろに誰かいる(小学生で妖怪風)

 塾の帰りがニガテだ。

 「近いし、もう一人で大丈夫!」なんて言わなきゃよかった。


 走れば5分の住宅街。

 見慣れた小学校だって見えている。

 昼間はなんともないのに、暗いだけで、どうしてこんなによそよそしく感じるんだろう?


 街灯に照らされた道を前だけ見て歩く。

 足が、自然と小走りになっていく。


 タッタッタッ


 ブルッとカバンが揺れた気がした。

 スマホに連絡入った?

 確認しようと立ち止まる。

 

 タッタ

 た


 ん?

 今、自分以外にも足音があったような?

 気のせいか。


 スマホに来てたのはただの広告メールだった。

 すぐに閉じて、また走り出す。

 

 タッタッタッ


 また、ブルッとカバンが揺れた気がした。


 タッタ

 た


 意識して聴いていたからハッキリ聴こえた。

 立ち止まったあとに、足音があった。

 まるで、あわてて立ち止まったみたいな足音。


 うしろに誰かいる。


 細い道じゃないんだから、追い抜いて行ってくれたらいいのに。


 そう思いたいのに怖くてムカついて、やけくそで振り返った。


「!」


 背が高くて横幅もある着物を着た人がいた。

 お相撲さんかな?

 有名な力士なのか確かめたかったけど、顔の位置がちょうど街灯の逆光で見えない。

 もしかして、驚かせたら悪いなと思って追い抜けなかったのかも。


「あ、お先にどうぞ」


 なんとかそう言って、はしによって、道をゆずった。


 大きな人はうなずくと、ゆったりと進んでいった。

 あの不思議な髪型を近くで見たいと思って後ろ姿を見送ったけど、やっぱりハッキリとは見えなかった。


 残念だけど仕方ない。

 スマホを見れば広告SNS。

 もう家まで確認しないで帰ろう。


 さっきの大きな人に追いつく勢いで走ったけど、どこにも見当たらなかった。


「ただいまー。さっきお相撲さんがいたよ」

「え? 巡業場所からは離れてるし、部屋もないのに? 見間違えたんじゃない?」


「えぇー。でも大きな体で着物を着てたよ。ご近所さんの子どもとかじゃないの?」

「……なにか話した?」


「なにも。あ、うしろから追い抜くのためらってたみたいだから、『お先にどうぞ』って言った」

「通り過ぎてくれた?」


「? もちろん」

「良かった。やっぱり今度からは迎えに行くね」


「え、あ、うん」


 

   ※※※おしまい※※※



意味がわかると怖い話風にしようと思い、『見上げ入道』の現代版として書いたつもりが、「お先にどうぞ」がきくのは別の妖怪だったorz。


正しくは、『見上げ入道/見越し入道』には「見上げ入道、見越したり」か、入道を見下ろす、でした><。


「お先にどうぞ」はどの妖怪だったか。。。

『べとべとさん』でした!


でもコレ、妖怪より人間だったほうが普通に怖いかも^^;

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