第19話 アニマ視点

 戦闘が終わったあとも、炎の余韻はまだ胸の奥で燻っていた。


 わたくしの魔法が、敵だけを焼き――

 誰も、仲間は傷つかなかった。


 信じられない光景でしたわ。

 今までの人生で、一度もなかったことですもの。




 わたくしは、本来ならば“勝ち組”のはずでしたの。


 上級貴族の生まれ、魔力の才覚も十分。

 火球魔法も、最初から巨大で、派手で、講師すら目を見張るほど強かった。


 「アニマさん、また火球が大きすぎますわよ。味方の位置、見えていますの?」

 「ええ、あの程度の熱なら焼け残るでしょう? 生きていればそれで充分ですわ」


 本当は――小さく撃てなかった。

 でも、それを認めるのはプライドが許さなかった。


 そんなとき、魔力の弱い"平民枠"としてイーリさんが転入してきた。


 「まだ魔法が使えませんの? 才能がない者が残っても、誰も得をしませんわ」

 「……努力でなんとかなるなら、世の貴族は苦労しませんのよ?」


 ――あれは、自分自身へ向けた言葉でもありましたの。




 ある日の、“家の威信のための模擬戦”

 わたくしは父と、騎士団と共に前線に立ちました。


 敵は小規模。自慢の火球を見せる絶好の機会――そう思った瞬間。


  ドォンッ!!!


 紅蓮の炎が爆ぜ、敵も味方も、全員まとめて吹っ飛んだ。


 焦げた地面、倒れた家の兵。

 父の、信じられないものを見るような目。


 「……アニマ。お前は、我が家の“恥”だ」


 それだけ言い残し、勘当されましたわ。


 あの瞬間――世界が真っ黒に塗りつぶされましたの。

 未来も光も、全部、炎に焼かれて消えた気がしましたわ。



 そんなわたくしを、たける様は躊躇なく戦場へ送り出した。


 「――ゾルドに向かって撃て」


 ――狂気の命令。

 でも、従ったその結果。


 味方だけは、無傷だった。


 ゾルドさんが炎の中で剣を構えている光景を見て、

 胸の奥に、何かが灯った。


 ――“この魔法で、誰かを守れる”――


 初めて、そう思えたのです。



 「……たける、様」


 この世界の誰も、わたくしの魔法を肯定しなかった。

 “間違った魔法”だと切り捨てられた。


 でも。


 この人だけは、“使える”と言ってくださった。


 「……今後とも、末永くよろしくお願いいたしますわ。

 ――わたくしの、指揮官(マスター)様」


 リリア「うわ、完全に信者やな」

 イーリ「……でも、悪くないと思う」

 ゾルド「……守る価値はある」

 レイアン「加入、歓迎します。アニマさん」


 ――燃える理由を、ようやく手に入れましたの。

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