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 ◇◇◇


「社交パーティー、ですか」


 午後の見回りを終えた後、隊長の執務室に呼ばれた千歳は相模が差し出した手紙を見て、あからさまに顔をしかめた。


「ああ、貿易で財を築いた商家の大富豪が開くパーティなんだと。そこの息子が特務部隊に興味津々らしく、うちに招待状が来たってわけだ」


 そんな部下を見て、相模は頬杖を突きながらニヤニヤと面白そうに笑っている。


「そんな嫌そうな顔するなよ。大事な資金調達の場だぞ?」

「……また中身のない話を延々と聞かされると思うと、気が重いです」

「同感だが、お偉いさんのご機嫌取りも俺たちの仕事のひとつだからな」


 相模はそう言いながら組んでいた手を解き、前のめりになって千歳を見る。


「で、そこにも書いているが、パーティには『パートナーと出席』と書いてある。ということで、必ず連れてくるように」


「お前の新妻」という言葉を強調してくる相模の考えることが、手に取るように分かり、千歳の眉間のシワが一層深くなる。憂うつなパーティが、さらに気が重くなるのは目に見えていた。

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