第2話

「無愛想な子」「感情がない子」「変な子」

小さい頃からずっと言われてきた言葉だった。まさに俺の代名詞なんだろう。俺には“好き”“嫌い”“得意”“不得意”がない。

寂しいとか嬉しいなどの感情もよくわからない。喜怒哀楽ですら知らなかった。母からは「気味が悪い」と言われ同級生からには「瞳月は変な奴」と思われ友人もいなかった。

なぜみんなは幸せそうに笑うのか。

なぜみんなは辛そうに泣くのか。

なぜみんなは怖い顔をして怒るのか。

なぜみんなは誰かに恋をするのだろうか。

俺にもみんなみたいに笑ったり、泣いたり、怒ったり、誰かを好きになってみたりしたかった。普通の人みたいに生きてみたかった。

だからテレビのお笑い番組を観て必死に笑おうとしたし、新しい映画が公開されるたびに観に行って感情を知ろうと努力した。恋愛小説をたくさん読んで恋を勉強したり、心理学の本もたくさん買って感情を知る方法を調べた。いっそ俺は心の病気なんじゃないかと疑い精神科にも行ったことがある。だけど何しても俺は感情を知らないままだった。

本やDVDで溢れていく俺の部屋を見た母は「気持ち悪い、頭もいい、運動神経もいい、顔も美形で容姿端麗、優秀で完璧な人間がどうして泣くことや笑うことすらできないんだろうね。」と冷たい言葉を吐かれた。母に吐かれた言葉を聞いて俺はもう感情を知ることができないと悟った。その日の夜に俺は双子の兄に協力してもらって本やDVDを捨てることにした。


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