第8話 8層の冒険 (後編)

「ソフィ、何か分かったの?」


 僕は、エレメントの点灯に成功したソフィアに訊ねる。


「うん。錬金術の錬成の過程には、腐敗、浄化、変質、完成の4つの段階があるの。極限まで分解した元の素から変化し、あらゆるものに変化でき、あらゆる病や怪我を治せる薬、これらを賢者の石、またはエリクサーと呼ぶの。現代の錬金術師で、これらを完成させた者はいない」


 エリクサー?


 僕は、エリクシルを見ながらソフィアの説明を聞く。エリクシルの表情に変化はない。もともと知っていたのかもしれない。


「賢者の石やエリクサーを精製する際、その精製物の色の変化から完成度を知ることができるの。初期は黒、二段階が白、三段階が黄色、最終段階が赤。完成した賢者の石やエリクサーは赤色をしている」


 確かに、エリクサーの色は赤かった。真紅というべき赤色をしている。


「黒、白、黄色って、この部屋の色の変化と同じにゃ」


 部屋を見渡しながら呟いたニャムの言葉にソフィアは冷や汗を拭い、


「そう。つまり、まだ試練は続いているの」


 と、覚悟を込めた声で言った。



 ◇



 試練はまだ終わっていない?


 僕達のなかに動揺が広がると同時に、黄色一色が広がっていた部屋の奥の壁が左右に開き始める。壁の向こう側にずっと広いエリアが見えた。


「あっちに何かいるにゃっ」


 ニャムが爪を構えて叫ぶ。


『精霊と錬金術の力を示した冒険者よ。それらを組み合わせた力を示せ』


 また、声が頭の中に直接響く。ボスエリアのような広い部屋には、錬金術で作られたと思われる巨大な魔導人形が立っていた。以前、第3層で戦った魔導人形とは比べ物にならないほど、体格も纏うエーテルも桁違いに大きい。


 精霊力のほとんどないこのフロアで、元の素から精製したエレメンタルのみでこいつと対峙する。これまでに培った魔物との戦い、精霊や錬金術、すべてを合わせて巨大な魔導人形を打ち倒す。


 それが第8層の試練だったのだ。



 ◇



 巨大魔導人形(ビッグマジックドール) ランク:A+


 全長10メートル程の巨大な人形に、魔導師の帽子、ローブを纏わせ、魔力を宿した杖を装備し、侵入者を排除させる魂を吹き込んで作られた錬金生成された自動人形だ。ダンジョンのフロアボスである魔導人形(マジックドール) の強化型であるが、その強さは比べ物にならない。巨大化した体躯により、ゴーレムを超える耐久力を備え、さらに火、水、土、風の精霊魔法と古代語魔法を無尽蔵に操る。攻撃は、巨大火炎球や巨大竜巻を放つ。防御は、氷塊や岩石をあらゆる場所に展開する。こちらの攻撃を妨害され有効打を与えにくい。魔導人形本体より、その攻撃の起点を封じることを優先する必要がある。



 ◇



「ソフィ、あれって確か……」


「うん。前に戦った魔導人形……の10倍くらいはあるね。弱点も同じだといいんだけど」


 ソフィアとともに戦った魔導人形には弱点があった。弱点は、杖に残る魔力分の魔法を撃ち尽くすと魔法を放てなくなることだった。だけど、巨大魔導人形は、その弱点を克服している。


「じいちゃんの記録では弱点を克服したとあるよ。耐久も強いし精霊魔法も無尽蔵に放てるそうだ」 


 僕は、じいちゃんの記録をもとに説明する。


「無尽蔵に魔法を放てるの? そんなのエリちゃんと同じ力がないとできないはずだよ。ずるいよ。試練で精霊の力を使えないはずなのに……」


 確かにそうだ。あの魔導人形は、一体どこから無尽蔵のエーテルを得ているのか?


 どうやって精霊の力を生み出しているのだろうか。この謎を解くことが攻略の糸口になるかもしれない。


「シンニュウシャヲ、ハイジョスル」


 巨大魔導人形から声が発せられる。


 喋った?


 次の瞬間、魔導人形の右手の周囲が一瞬紅く輝いて、その右手の周りに巨大な火球が生み出された。



 ◇



「本当に精霊力のないところに火を生み出した」


「ソフィさん、それより逃げましょう」


「にゃああっ、でかすぎるにゃ!」


「みんな、退避だっ」


 巨大な火球を浮かべた魔導人形を前に僕達は、慌てて前の部屋まで逃げ込んだ。直後、目に見えない結界のような壁に遮られて火球が消し飛んだ。ボスフロアから退避したことにより、巨大魔導人形の精霊魔法攻撃が無効化されたみたいだ。


「助かった……のかな」


 僕は、冷や汗を浮かべながら呟いた。


「あの赤い光、もしかすると……」


 エリクシルに連れられて脱出したソフィアが口許に手を当てて考えている。


「四元素略式図の試練は、精霊力の働いていない場所で四大精霊のエレメントを生成することがクリア条件だったよね。クリアには、元の素と精霊の加護を組み合わせることが必要だった」


 ソフィアが部屋の中の祭壇を見つめ、考えながら続ける。


「次の試練のメッセージは、『精霊と錬金術の力を示した冒険者よ。それらを組み合わせた力を示せ』だったよね。古代錬金術は、科学と魔術の融合を示している。そうだとしたら、魔導人形が精霊魔法を放つ前に輝いた赤い光は……」


【賢者の石やエリクサーを精製する際、その精製物の色の変化から完成度を知ることができるの。初期は黒、二段階が白、三段階が黄色、最終段階が赤。完成した賢者の石やエリクサーは赤色をしている】


 ソフィアは、ある可能性を思いついた。


 

 ◇



「万物にあらゆる変化を及ぼせるもの。無限のエネルギーを生み出せるもの。賢者の石かもしれない」


 ソフィアが真剣な表情で伝説の石の可能性を話す。


「賢者の石を魔導人形が持っているのか?」


 僕は、驚いてソフィアに訊き返す。


 賢者の石は、錬金術師達が研究を重ねても辿り着けないでいる究極の目標の1つだ。手にすれば、一国どころか世界をひっくり返す力を得ると言われている。それを古代錬金術製のフロアボスが持っているのか。


「うん。前に戦った魔導人形は杖に蓄積したエーテルの残量分までしか魔法を放てないことが弱点だった。ルークさんのノートの通り、あの魔導人形が無尽蔵のエーテルを持って、精霊力のないフロアにエレメントを生み出せるのだとしたら、答えは賢者の石しかないよ。あの紅い光がそうなんだと思う」


 ソフィアが思い出しながら話す。巨大魔導人形は火球を出現させる前に、紅い光を浮かび上がらせていた。無尽蔵のエーテルと、あらゆる変化を可能にするエレメンタルを操る巨大魔導人形か。


 僕達は、どう対抗すればいいだろうか。



 ◇



「にゃっ、無限のエーテルなら、にゃあ達にもエリちゃんがいるにゃっ」


 ニャムが皆を奮い立たせるように叫ぶ。


 魔導人形が賢者の石を使い、無限のエーテルとエレメント生成を行えるとしても、こちらには無限の回復力を持つエリクシルがいる。


「はい。体力とエーテルでしたら、何度でも回復できますよ」


 エリクシルもニャムの威勢に応える。


「そうだね。あとはエレメンタル、精霊の力か」


 ソフィアが何かに気づく。


 僕達は、ボスフロア手前の部屋、四元素の略式図を模した四精霊のエレメントが灯る部屋にいた。


「この部屋で生成したエレメントを使えば……」


 ソフィアが四精霊のエレメントが灯る祭壇を見る。


「うん。『組み合わせた力』というのは、エレメンタル生成と精霊の加護かもしれないね。ここで生成したエレメントには精霊力が宿っている」


 僕も考えていたことを伝える。


「錬金術で生成したエレメントは精霊力が小さい。だけど精霊の加護、エリちゃんのエーテル力を組み合わせれば、大きな精霊魔法を放てるかもしれない。それが、錬金術と魔法の融合……」


 ソフィアがそう言うと、皆、頷いて応えた。



 ◇



「エレメンタルを纏って、フロアボスを倒そう」


 僕は、自分の右手に火のエレメンタルを纏わせる。皆も、それぞれ加護を受けたエレメンタルを宿す。僕が火、エリクシルが水、ソフィアが土、ニャムが風だ。


 エレメンタルを纏った僕達は、再び8層のボスフロア、巨大魔導人形のいる部屋へ突入した。巨大魔導人形は、僕達を待ち構えていたように、巨大火球を右手の上に浮かべている。無限のエーテルを持つ魔導人形だ。再び逃げても火球を消すことはないだろう。


「どう突破する?」


 ソフィアが僕に訊く。


「ボスの攻撃を防ぎつつカウンターアタックを決めたい。だけど、あの巨大な火球を防げるかどうか」


 交差法のカウンター攻撃を決めたいが、リスクも大きい。


「そか。相手の強力な攻撃は大きな隙(すき)だよね。でも、あれを土の壁で対抗できるかな」


 ソフィアが腕に纏うエレメンタルは、土精霊ニンフだ。


 防御系の精霊魔法を強化できるはずだけど、巨大火球との相性はどうだろうか。


「えと、わたくしにもやらせてください!」


 ソフィアに進言したのはエリクシルだった。



 ◇



「エリちゃんが!?」


 ソフィアが少し驚いたような表情で反応する。


「はい。わたくしも防御魔法を覚えました」


 体力やエーテルを無限に回復できるエリクシルだけど、防御魔法をいつ習得したのだろうか。


「そ、そうなんだ。ちょっとびっくりしたよ」


 ソフィアが驚いた表情でエリクシルを見る。


「水の精霊さんの力です。ソフィアさんの土の精霊さんと合わせれば火球を防げるかもしれません」


 エリクシルが右手の上に水の球を浮かべてみせた。そうか。エリクシルも水精霊の加護を受けている。


【そうですね。水精霊ニンフさんと癒しの力について学びました】


【付喪神のわたくしも、水精霊であれば力を借りて、精霊魔法の真似事もできるようになったみたいです】


 第7層で、四大精霊の試練をクリアしたエリクシルが話していたことを思い出す。


「水の精霊魔法には、癒しの力の他に、水による防御魔法で炎によるダメージを抑える効果があるものがあります。ニンフさんは、水の防火幕(ウォータースクリーン)と呼んで欲しいそうです。ソフィアさんの土の精霊魔法と組み合わせれば、炎の力を抑えて火球を止められるかもしれません」


 エリクシルが水精霊ニンフから学んだ精霊魔法の活用について説明する。


「うん。エリちゃんすごいよ。あたしがピグミー様に教えてもらった土の防御壁(アースウォール)は、壁をつくれるから物理的衝撃に強いけど炎の熱をどれだけ抑えられるか分からなかったんだ。でも、水の幕で熱を抑えれば止められるよ」


 ソフィアも土精霊ピグミーから習得した精霊魔法について説明し、エリクシルの提案に嬉しそうに答えた。


「というわけで、ルー。あの火球は、あたし達が防ぐよ! 守りはあたし達に任せて!」


 ソフィアとエリクシルは、僕達を守るように前に出ると、迫りくる巨大火球の前に立った。


「ここで負けたら、錬金術師としての誇りも、皆を治すエリちゃんの無限の力も、意味がないもんね!」


 ◇



「いくよっ、土の精霊ピグミー様。あたしに力を貸してっ。堅牢なる大地の力よ、我らを守護する壁となれ! 土の防護壁(アースウォール)!」


「水の精霊ニンフさん。わたくし達を守ってください。慈愛に満ちる水の力よ、侵略する炎から我らを救済せよ! 水の幕(ウォータースクリーン)!」


 ソフィアとエリクシルが、錬金術で生成したエレメンタルによる精霊魔法を掛け合わせる。僕たちの前に巨大な土の壁が隆起し、さらにその向こうに炎を相殺する水の幕が展開した。


 エリクシルのエーテルで、エレメンタルの力を増幅し、巨大火球にも対応できそうだ。


「ルー、攻撃は任せたよっ」


 精霊魔法を放ちながら、ソフィアが僕達に意思を伝える。


 巨大魔導人形は、巨大火球の維持と制御のため杖を構え、祈るような姿勢を取り続けている。カウンター攻撃を仕掛けるなら、ソフィアとエリクシルの防御魔法と同時がいい。


 古代錬金術の試練が錬金術と精霊魔法の掛け合わせを求めているのなら、僕達の攻撃も同じ応用が有効なはずだ。



 ◇



「ニャム、2人の防御魔法が火球を受け止めた瞬間にあいつを攻撃しよう。僕達もエレメンタルと精霊の加護を使う」


「にゃっ、ニャムは風を感じるにゃっ」 


 ニャムは、装備する両手爪に風精霊シルフの加護を得たエレメンタルを纏う。乗り越えた試練の意味、これまでの冒険で得たもの。僕は、四大精霊の試練で火精霊サラマンダーの加護を、ニャムは、風精霊シルフの加護を受けている。錬金術の部屋でそれぞれのエレメンタルを入手した。


 これら組み合わせて攻撃に活かす。


【攻撃は、巨大火炎球を巨大竜巻を放つ。いずれも喰らえばひとたまりもないだろう。防御は、氷塊や岩石をあらゆる場所に展開する。こちらの攻撃を妨害され有効打を与えにくい。魔導人形本体より、その攻撃、行動の起点を封じることを優先する必要がある】


 氷や石の妨害をかわしつつ、魔導人形の起点を封じる。その答えを考える。


「ニャム、連携しよう。あいつに近づくと氷や石を用いた防御行動で妨害されるらしいんだ。妨害は、僕が斬り裂いて道をつくるから、ニャムは風を感じて素早く接近し、あいつに攻撃を叩き込むんだ」


「にゃっ、狙うのは頭で良いにゃ?」


「いや、僕の予想が正しければ狙うべきは頭じゃなく……」


「分かったにゃ」


 僕とニャムは、作戦を確認した。巨大火球と土と水の防御が衝突するまであと僅かしかない。


「一回で決めよう!」


 僕は、自分にも言い聞かせる気持ちで声を上げた。



 ◇



「エリちゃん、来るよ」


「はいっ」


 巨大魔導人形が放った巨大火球と、ソフィアとエリクシルの合成精霊魔法である水と土の防御壁が衝突する。エリクシルの水精霊魔法ウォータースクリーンが火球の熱を抑え、巨大球の衝撃をソフィアの土精霊魔法アースウォールが防ぎ、巨大火球を受け止める。


 ジュワアアアアアアア……ッ!


 巨大な火球が土の壁にめり込み、水と火がぶつかり合う凄まじい蒸気が視界を奪う。その熱と音の狭間で、ソフィアとエリクシルの小さな背中が、決して崩れることなく立っているのが見えた。二人の顔は、苦痛に歪んでいたが、その瞳には強い意志の光が宿っていた。


「今だっ!」


 僕とニャムは、それぞれ風斬の刃と両手爪を構え、壁の向こう側、巨大魔導人形本体へ向かって走る。


『セッキンタイショウ ヲ ハイジョ スル』


 魔導人形が不思議な声を上げ、直後、上から氷や岩が大量に降り注ぐ。


 えっ?


「ご主人っ、これが防御行動にゃ?」


「たぶんそうだ。僕が道を作るから、そこを狙ってくれ」


「りょーかいにゃっ」


 僕は、風斬りの刃にありったけのマナを注ぎ、さらに火のエレメンタルを重ねて纏わせる。巨大魔導人形の防御行動……というか妨害攻撃は、氷と岩、つまり水属性と土属性の精霊魔法だ。


 これに対抗するのは、火属性と風属性攻撃だ。サラマンダーの火の力、付喪神カザキリの風の力、これを組み合わせる。


〈其方(そなた)は、我に火傷を負えと言っておるのじゃな〉


 カザキリの少し不満そうな声が、僕の頭の中に響く。でも、その声の奥には、僕を信じてくれている気持ちが伝わってきた。


 え? 火傷するの?


〈刀は多少熱くなる。が、気にするほどではない。其方には常にサラマンダーが傍にいて、炎の力で助けてくれるのじゃ〉


 よかった。


〈よくはない。熱さを我慢するのじゃから、毎回断りと謝意を伝えるのが礼儀じゃ〉


 ありがとうございます。


〈うむ。許可する。思い切り放つがよい〉


 うん!


 僕は、風切りの刃に風と炎を同時に纏う。



 ◇



「行くよっ。火精霊サラマンダー、力を貸してくれ。侵略する炎の力よ、全てを焼き尽くす渦となれ! 魔法剣(ウィザーズ・ソード)、全魔力開放。火炎渦の真空刃(インフェルノ・ウィンドブレード)!」


 迫りくる氷解や岩石に対し、炎の渦と真空の刃を同時に撃ち放った。炎が氷塊を溶かし、真空刃が岩石を斬り裂く。炎と風が作り出した道の先に、巨大魔導人形が掲げる杖があった。


「風精霊シルフにゃん、にゃあを包んでにゃっ。斬り裂く風の力よ、疾風の如き神速を我に! にゃあああああっ。風獅子の両手爪(ウインドリオン・ツインクロー)!」


 僕が放った炎と風の真空刃を追うように、風を纏う神速の突進でニャムが巨大魔導人形が手にする杖に迫り、


 ガオン!


 巨大魔導人形の杖を斬り裂いた。


【魔導人形本体より、その攻撃、行動の起点を封じる】


 魔導人形が巨大火球を放った瞬間、賢者の石と思われる紅い光が輝いたのを覚えていた。杖の先に見えた小さな紅い石、あれが賢者の石で、巨大魔導人形が無限の原動力を持つ秘密だとしたら、魔導杖の破壊により動きを止められる。


「にゃっ」


 着地に成功したニャムと魔導人形を見上げる。僕もニャムも自分が放てる精霊と武器と技を、全てのマナを消費して攻撃した。もう余力はない。杖を失った巨大魔導人形は、崩れ落ちるように地面へ落下した。同時に折れた杖の先にあった紅い小さな石が砕け散る。


「倒せた……みたいだね」


 僕達は、第8層のフロアボスに勝利した。



 ◇



『精霊と錬金術を組み合わせた力を示した冒険者よ。錬金術の試練、合格とする』


 僕達は、第8層の試練、錬金術の試練をクリアした。


 古代錬金術は、精霊と錬金術を組み合わせたものだった。錬金術は科学で魔法と相容れないとする現代錬金術とは考え方が異なる。


「砕けちゃったし、紅い石は、賢者の石じゃなかったのかもしれないね。賢者の石は決して砕けないと言われているから。不完全なものだったのかな」


 ソフィアが、ボスフロアに転がる巨大魔導人形を見つめる。


「古代錬金術でも賢者の石の生成は難しいのかな。それともこの先に答えがあるのかもしれないね」


 僕も、砕け散った杖を見つめて答えた。


 杖と紅い石は、砂のように粉々となり、風化してしまった。ソフィアの言う通りならあれは賢者の石ではない。


「にゃあ。これで8層もクリアにゃ」


 ボスフロアに帰還用ゲートと、ダンジョン最下層へつながる階段が出現した。


「ああ。次がダンジョン最下層、最終試練だ。ここで引き返すこともできるけど……」


 僕は、皆の意思を確認する。


 エリクシルも、ソフィアも、ニャムも、(身体を冷やすために人間化していた)カザキリも、次の階段前に立った。


「行こう、最後の階層へ」


 僕の言葉に、エリクシルも、ソフィアも、ニャムも、カザキリも、力強く頷いた。僕たちは、ついにダンジョンの最下層、最終試練へと向かう。この先に、父さんが探している真実と、じいちゃんが僕に託した英雄の夢がある。僕たちは、精霊と錬金術の力を組み合わせた、最強のパーティだ。



 第8話 END

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